104「オフェーリアの悩みです」①
女子トークを終えて、オフェーリア・ジュラはウォーカー伯爵家で用意してもらった自室で悩んでいた。
サムが忙しいので、婚約から結婚に進むことはしばらくない可能性があるが、それでも心の準備は完了している。
最初こそ、領地運営したいとう野望と、母親のあわよくば自分もという企みによって婚約者になったものの、今ではすっかりサムのことを愛している。
正直にいえば、結婚前の関係もアリではないかと思っている。
はしたないと思われるかもしれないが、サムと結婚するのは決定事項だ。
仮にもしサムとの婚約が破談したとしたら、誰とも結婚などするつもりはない。
無理やり、別の誰かを勧めてくるのであれば、修道院に行くか自害する。そのくらいの覚悟がある。
ならば、関係を持ってもよいと思うのだ。
サムも年頃の男子だ。
オフェーリアはわからないが、学校に通う妹から聞いた話では、十代の少年など頭の中は女の子としか考えていないらしい。
極端な気がするが、その結果、いろいろやらかしてしまった妹なので変な説得力はあった。
ただ、サムはよくいる十代の少年と一緒にするには抵抗がある。
彼が転生者であることはすでに知っているし、宮廷魔法使いであり、数々の苦労と戦いを経験している。
学園で魔法を学ぶ少年たちとは、実力も経験も違うのだ。
そんなサムを時々、切羽詰まっているように見えることがあり心配になる。
リーゼに言わせると、気持ちはわかるが、だからこそ夫婦の時間で癒しているのだという。
聞けば、サムは甘え癖があるようだ。
変態的な話ではなく、女性に甘えたいようだ。本人は無自覚のようだが、リーゼをはじめ年上の女性たちと結婚したところを見れば納得だ。
では、オフェーリアでは物足りないかと言ったら、また違うらしい。
変態の代表ギュンター・イグナーツに言わせると、年下の妻に甘えるのもそれはそれでよし、とのことだ。
変態の言葉は理解できない。だが、良いのなら、いいだろう。
少し心配ではあったが、戦いによる疲弊で幼くなってしまった綾音と問題がなかったのであれば、自分でも大丈夫だろうと安心している。
「――問題はわたくしの体型と、耐久性と、体力の問題ですわね」
正直、綾音より身体は小柄だ。
耐久性はわからないが、体力はあまりない。
そうなると不安はある。
もちろん、サムが最初から無茶をするとは思わないが、遠慮はしてほしくないという女心もあるのだ。
「……だからといってどなたかと一緒にというのも少し抵抗が。いずれ、複数人でするのでしょうが、だからといって、ちょっと」
ひとりではサムに勝てない。
だからこそ、女性たちは一致団結している。
ある意味、一夫多妻にこれほど向いている男もいないだろう。
貴族の男性全てを悪くいうつもりはないが、妻を複数人娶りながら放置する輩もいる。次から次へ、新しい妻を迎える好きものもいるのだが、その場合、女性は幸せにならないだろう。
「ふふふ、話は聞かせてもらったわ」
「…………この声は」
ばんっ、と無遠慮に部屋の扉を蹴破る勢いで開けたのは、オフェーリアの母であるイーディシュ・ジュラだった。
「……思えば、これだけはしたない代表の母がいれば、わたくしが婚前にサム様と何をしようとどうってことありませんわね!」




