99「降伏のようです」③
「そちらの妹君の名前は?」
「私は、ジェイミーです」
「ザイザルにジェイミーか。わかった」
少し距離を空けて、兄妹の前に椅子を置きグラインが座る。
「おっ、お待ちください!」
「なんだ、レイニー侯爵。お前とは後だ」
「い、いいえ、違います」
「何も言っていないのに違うと言われても困る」
「私は、この兄妹に騙されたのです!」
「――貴様!」
「……レイニー侯爵!?」
震えていた気弱なレイニー侯爵が一変して、兄妹に罪をなすりつけようとした。
これには、グラインに話を任せていたサムたちも呆れる。
だが、悪さをするような貴族ならよくあることだ。
ここで罪を認めて素直に罰を受け入れるようなら、混乱に応じて王になろうと企んだりしない。
「レイニー侯爵、お前の話は後だ。俺は、今、そう言ったぞ?」
「ひっ」
グラインが睨みつけると、レイニー侯爵が小さい悲鳴をあげて沈黙した。
「ザイザル、ジェイミー。お前たちにも言い分はあるだろうし、過去もあるだろうが、俺はそのようなことを聞く気はない。今回の企みだけ、簡潔に言え」
「……言えば、どうなる?」
「言う気がないなら、死ね。俺はそれで構わない」
「――っ、そうやって貴様は」
「わかった。それがお前の答えか」
グラインが剣を抜いた。
「やめて! 私たちは、ただ、あなたを殺そうとしただけなの!」
「……何を言っている? あの男が死んだから、王になろうとしたのではないか?」
「違うわ。私たちは、あなたを殺したいの。ただ、恨みを晴らしたかっただけよ」
「恨みを買った記憶はないが?」
そもそもグラインは、腹違いの兄妹の顔も名前も知らないのだ。
「あなたは知らないかもしれないけれど、もともと王子として王宮に呼ばれるのはお兄様だったはず! それを!」
「なるほど、理解した。逆恨みか」
「――っ、そんな言い方をしないで!」
グラインとしてはいい迷惑だろう。
グラインを王子として王宮に招いたのも、ザイザルを招かなかったのも、亡き魔法王の判断だ。
それを逆恨みされても困る。
「では、次はレイニー侯爵に聞こう。お前の目的は?」
「それは」
「俺も鬼じゃない。素直に全て吐けば、家族の安全くらいは約束してやろう」
「……わ、私のことは」
「すべてお前次第だ」
震えながらレイニーは語った。
後がないことは十分に理解しているのだろう。
「わ、私は、ザイザル様を新たな王にして、後継人として……」
「もういいわかった」
「お待ちください! 私はグライン様に害を与えるつもりはありません! 王都が壊滅と聞いていたので、グライン様が生きているとは思わなかったのです! ひとりの国を思う貴族として、魔法王様の後継者を、新たな王のもとに国を建て直そうと!」
「嘘をつくな! お前は、僕たちにグラインが生きていると教えてくれたじゃないか! その上で、復讐の時間だと言った!」
「だから私たちは覚悟を決めたのに!」
「だまれ! 黙れ黙れ黙れ! 所詮、お前たちなど駒だ! 使えそうだったから、お前たちの母親が死んだ時に面倒を見てやったのに、それをよくも! グライン様、お願いします! 私は過ちを犯しました! 犯してしまいました! ですが、忠誠を誓います! この身を捧げます! 家族もこの兄妹も差し出しますし、殺しても構いませんので! どうか私だけで――も?」
「不快だ」
グラインの剣が、レイニー侯爵の胸を貫いていた。
「な、ぜ」
「お前のような貴族は俺たちの国には必要ない。お前を生かしたら、民に申し訳がない」
貴族たちのお話は次回で決着の予定で、このふたりの処遇についてはその後日に。
シリアス先輩「私、知ってるぅ! このふたりがサムの嫁になるんでしょう!?」
サムくん「ならないよ!? それ以上に、なんでふたりともなの!?」
シリアス先輩「え?」
サムくん「え?」




