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2020/2077

99「降伏のようです」③





「そちらの妹君の名前は?」

「私は、ジェイミーです」

「ザイザルにジェイミーか。わかった」


 少し距離を空けて、兄妹の前に椅子を置きグラインが座る。


「おっ、お待ちください!」

「なんだ、レイニー侯爵。お前とは後だ」

「い、いいえ、違います」

「何も言っていないのに違うと言われても困る」

「私は、この兄妹に騙されたのです!」

「――貴様!」

「……レイニー侯爵!?」


 震えていた気弱なレイニー侯爵が一変して、兄妹に罪をなすりつけようとした。

 これには、グラインに話を任せていたサムたちも呆れる。

 だが、悪さをするような貴族ならよくあることだ。

 ここで罪を認めて素直に罰を受け入れるようなら、混乱に応じて王になろうと企んだりしない。


「レイニー侯爵、お前の話は後だ。俺は、今、そう言ったぞ?」

「ひっ」


 グラインが睨みつけると、レイニー侯爵が小さい悲鳴をあげて沈黙した。


「ザイザル、ジェイミー。お前たちにも言い分はあるだろうし、過去もあるだろうが、俺はそのようなことを聞く気はない。今回の企みだけ、簡潔に言え」

「……言えば、どうなる?」

「言う気がないなら、死ね。俺はそれで構わない」

「――っ、そうやって貴様は」

「わかった。それがお前の答えか」


 グラインが剣を抜いた。


「やめて! 私たちは、ただ、あなたを殺そうとしただけなの!」

「……何を言っている? あの男が死んだから、王になろうとしたのではないか?」

「違うわ。私たちは、あなたを殺したいの。ただ、恨みを晴らしたかっただけよ」

「恨みを買った記憶はないが?」


 そもそもグラインは、腹違いの兄妹の顔も名前も知らないのだ。


「あなたは知らないかもしれないけれど、もともと王子として王宮に呼ばれるのはお兄様だったはず! それを!」

「なるほど、理解した。逆恨みか」

「――っ、そんな言い方をしないで!」


 グラインとしてはいい迷惑だろう。

 グラインを王子として王宮に招いたのも、ザイザルを招かなかったのも、亡き魔法王の判断だ。

 それを逆恨みされても困る。


「では、次はレイニー侯爵に聞こう。お前の目的は?」

「それは」

「俺も鬼じゃない。素直に全て吐けば、家族の安全くらいは約束してやろう」

「……わ、私のことは」

「すべてお前次第だ」


 震えながらレイニーは語った。

 後がないことは十分に理解しているのだろう。


「わ、私は、ザイザル様を新たな王にして、後継人として……」

「もういいわかった」

「お待ちください! 私はグライン様に害を与えるつもりはありません! 王都が壊滅と聞いていたので、グライン様が生きているとは思わなかったのです! ひとりの国を思う貴族として、魔法王様の後継者を、新たな王のもとに国を建て直そうと!」

「嘘をつくな! お前は、僕たちにグラインが生きていると教えてくれたじゃないか! その上で、復讐の時間だと言った!」

「だから私たちは覚悟を決めたのに!」

「だまれ! 黙れ黙れ黙れ! 所詮、お前たちなど駒だ! 使えそうだったから、お前たちの母親が死んだ時に面倒を見てやったのに、それをよくも! グライン様、お願いします! 私は過ちを犯しました! 犯してしまいました! ですが、忠誠を誓います! この身を捧げます! 家族もこの兄妹も差し出しますし、殺しても構いませんので! どうか私だけで――も?」

「不快だ」


 グラインの剣が、レイニー侯爵の胸を貫いていた。


「な、ぜ」

「お前のような貴族は俺たちの国には必要ない。お前を生かしたら、民に申し訳がない」






 貴族たちのお話は次回で決着の予定で、このふたりの処遇についてはその後日に。


 シリアス先輩「私、知ってるぅ! このふたりがサムの嫁になるんでしょう!?」

 サムくん「ならないよ!? それ以上に、なんでふたりともなの!?」

 シリアス先輩「え?」

 サムくん「え?」

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