94「貴族を倒します」①
シューレン魔法国王都に一番近く、一番大きな領地を持つコーレン公爵は自らが部隊を率いて王都に向かっていた。
魔法王ルルカス・シューレンの叔父であり、魔法の実力の差でルルカスに王位を奪われた過去を持ち、恨んでいる人物でもある。
年齢は五十ほどだが、魔法は衰えていない。むしろ、今の自分であれば魔法王に相応しいと自負していた。
「くくくっ、まさかルルカスが殺されるとはな。家族も全員死んでしまったと言うではないか。これは神が私に王になれと言われているに違いない!」
馬車に乗って王都に向かうコーレン公爵は笑いが止まらない。
商人からの情報で、王都の貴族の大半と王族が焼け死んだと言う。
自分から王位を簒奪したルルカス・シューレンの関係者に天罰が当たったのだと信じて疑っていなかった。
実を言うと、コーレン公爵はいつでも王都を攻めることができるように兵を鍛えていた。隙さえあれば戦いを仕掛けようとずっと考えていたのだ。
そして、その時がようやくきた。
心が踊る。
これから自分が魔法王だ。
「閣下、あまりよろしくない情報が入ってきました」
「聞こう」
側近にして幼馴染みでもあるバインツが情報を持ってきた兵に金を渡し、コーレン公爵に伝える。
「まず、レイニー侯爵が我々同様に王都に向かっています」
「……やはりな。確か、奴はルルカスの息子と娘を預かっていたはずだ」
「興味を持たれなかった子供、ですがね」
「それでもルルカスの子供であれば、立派な王子と王女だ。なるほどな。レイニー侯爵はどちらかを王に据えて、背後から操るつもりか。姑息な男らしいやり方だ」
「まったくです」
バインツは有能な男だ。
コーレン公爵は、長年仕え功績を持つ彼に騎士の称号を与えている。
小さな領地だってもてるはずが、変わらずに今までずっと仕えてくれているのだ。
ゆえに心からの信頼をしている。
「私が王になれば、お前にも相応の地位を約束しよう」
「ありがたき幸せ。ですが、私は公爵様にお仕えできるだけで幸せなのです」
「変わらぬ男だ。――それで、よろしくない情報はそれだけか?」
「もうひとつだけ。グライン・シューレン王子がご健在です」
「ほう! もしや、グラインがルルカスを討った?」
コーレン公爵は、グラインが父親であるルルカス・シューレンを恨んでいることを知っている。
いずれ父王殺しをするだろうと、あえて待っていたというのもあった。
グラインは優れた魔法使いであるが、自分ほどではない。
また、貴族として長い日々を生きてきたコーレン公爵には、自身の派閥の貴族もいくつかいる。
グラインならば、どうにかできる。そう確信していた。
「真偽は不明ですが、グライン王子がスカイ王国の人間を国に入れて、その者がルルカス・シューレンを殺害したようです」
「面白い。魔法だけは秀でていたあの男を殺すことができるとは……ぜひ部下にしたい。ルルカスとの関係は?」
「不明です」
「ふむ。ならば、直接王都で確かめるとするか」
そろそろ王都に着く時間だ。
王になる時間だ。
「嗚呼、楽しみだ」
コーレン公爵が、ようやく王になる日が来た喜びを噛み締めたと同時に、彼の肉体は縦に両断された。
「……は、え?」
シリアス先輩「誰の仕業だあぁあああああああああああああああ! シリアスの予感がしたのにぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!」




