93「魔王が警戒されました」
スカイ王国宮廷魔法使いサミュエル・シャイトは、同じく宮廷魔法使いであるギュンター・イグナーツとデライト・シナトラ、そして魔王遠藤友也と共にシューレン魔法国王都の外にいた。
「……素晴らしい結界だ。結界術師は何人か知っているが、ここまでとは。クライド陛下が近年では一番の結界術師とお聞きしていたが、なるほど、スカイ王国の守護者はあなただったのか」
「ふっ。守護者とは大袈裟な。僕は僕のしたいように、しているだけさ。結果的に国を守っているのはついでのようなものだよ」
グライン・シューレンはギュンターに羨望の眼差しを向けている。
ギュンターほどの力があれば、と思っているのかもしれない。
シューレン魔法国の兵士たちも、王都に出た瞬間、再び王都に入れないことから結界の凄さを噛み締めているようだった。
「しかし、なぜギュンター殿はサミュエル殿の尻を撫でたり揉んだりしているのだろうか?」
「――仕様だよ」
「そんなことないですからね!? こいつが勝手に撫でたり揉んだりしてくるだけですから!」
「しかし、サミュエル殿は抵抗していないようだが」
「抵抗するだけ無駄なんです! 構うと喜んでしまうので!」
「つまり、受け入れている、と」
「違うけど! なんか違うけど、そうです!」
「ふむ。いや、余計なことを言った。どうやら俺は少し頭の柔軟さが足りない男のようだ。聞けば、スカイ王国では性別の垣根を超えて愛に満ち溢れているというじゃないか。愛などまるでない国で育った俺には、あなた方のことをわかろうとしたのが傲慢だったな」
「そこまでご自身を卑下しなくて……じゃなくて、なにか誤解をしていませんか? 嫌ですよ、後世に変なことが伝わったら!」
「大丈夫だ。俺は何も誤解も勘違いもしていない」
「……瞳が、これ以上ないくらいに優しいのが不安だ。本当に大丈夫かなぁ?」
グラインが誤解しているような気がしてならないのだが、状況が状況だ。
追求するのは後にすることにしよう。
「魔王殿」
「なんでしょうか?」
グラインは学生服の上からコートを羽織る友也に恐る恐る声をかけた。
「ご助力に感謝します。まさか、魔王殿がお力を貸してくれるとは」
「お気になさらずに。僕もこの国には思うことがあります。魔族とはいえ、人並みに感情はありますから。ああ、心配せずとも今後のあなたの国に余計な口出しはしませんのでご安心ください」
「……本当にありがとうございます」
魔王遠藤友也は国を持たないが、魔族の王のひとりである。
そんな友也に大きな借りを作れば、国に対してどのような要求をされるのかグラインは不安だったのだろう。
すでにスカイ王国をはじめ、友也にも借りを作っている。これ以上の借りは、さすがに怖いと思ったのだろう。
まだスカイ王国ならば人間と人間だ。しかし魔王は逆立ちしても手も足も出せない圧倒的な強さがある。
怖さで言えば、魔王の方が怖いだろう。
もっとも、スカイ王国には魔王級と魔王以上がいるし、魔王も生活しているのだが。
「そこまで言っていただいたのに、このようなことを言うのは心苦しくありますが」
「構いませんよ」
「ラッキースケベはほどほどにお願いします」
「――は?」
「ゾーイ殿たちから、魔王殿は我々が呼吸を必要とするようにラッキースケベを必要としているとお聞きしていますが、さすがに戦場となる可能性のある場でそのようなことをされてしまうと士気にも」
「しませんからぁあああああああああああああああああああああ!?」
「そ、そうなのですか?」
「そうですよ! 僕のことをなんだと思っているんですか!」
「ラッキースケベ大魔王であるとみなさんが……それに、あなた自身もラッキースケベおじさんであると」
「言ってたぁあああああああああああああああああああああ!」
陛下「うむ! 良きビンビンな自業自得である!」
シリアス先輩「めっちゃシリアス!」




