91「愚か者がいるそうです」①
シューレン魔法国に戻ったサムたちと、憑いてきたギュンターを出迎えたのはお怒りのクライド・アイル・スカイだった。
「――悪しきビンビンである!」
「……はい」
反射的に返事をしてしまったが、もう少し説明が欲しい。
「あの、もう少し詳細をください」
恐る恐る手を挙げたサムに、グライン・シューレンが説明をしてくれる。
また、この場は、魔法国の王宮ではなく、グラインが生まれ育った家である。
王族扱いされていなかった幼少期であったようだが、血筋的には王族である。周辺の家よりは、大きくしっかりした造りになっている。
「王都でやりたい放題だった貴族たちはエヴァンジェリン・アラヒー様によって浄化していただいたが、地方の貴族たちは違う」
「やっぱり反発があったんですね」
「反発というよりも……反乱だろうな」
グラインが疲れた顔をする。
「実を言うと、シューレン魔法国の王都の酷さは知っているだろうが、これでもマシな方だ。魔法王を名乗る豚が自分こそが一番と振る舞っているので、王都にいる貴族やそれに準ずる者たちは上を伺いながら悪さをしていた。しかし、地方だと、やりたい放題だ」
「うわー」
スカイ王国でさえ、辺境貴族はやりたい放題だった。
シャイト伯爵領も、以前の領主はわかりやすい愚か者だった。
「個人的な話ですけど、なぜ貴族って民を虐げるんですか? 貴族だけがかかるそう言う病気があるとかですか?」
本当に純粋な疑問をサムが口にすると、グラインだけではなく、クライドさえも苦々しい顔をする。
もしかしたら、皮肉か何かに聞こえたのかもしれない。
「いや、そのだな、サミュエル殿……すべての貴族が愚か者ではない、はずだ。自信はないがな。少なくとも、王都に残った貴族……数人だが、善良な者もいる」
「貴族の善悪は置いておきましょう」
友也が割って入り、話の軌道修正をする。
「地方の貴族たちが動き出すことは予想していました。問題は、どうしたいのか、ですね。グライン殿は反発ではなく、反乱とおっしゃいましたが、心当たりが?」
「地方貴族どもは、ある意味王のように振る舞っている。あまりにも小さな国の王だがな。そんな愚か者が、恐れていた魔法王がいなくなったと知れば――自らが王になろうと思うのは自然なことだ」
「……よくある話ですね」
「違いない。地方貴族の中には王家の血を引く人間もいる。現状では、王位継承権の一位は私であり、私は王になる覚悟を決めた。……地方貴族が私を認めるはずもなく、殺してしまおうとしているのだろうな」
グラインは覚悟を決めたのに、水を差す愚か者が集まってくる。
頭が痛いことではあるが、いずれは対処しなければならないことでもある。
「ふむ。では、僕が特別に結界を張ってあげよう」
話を静かに聞きながらサムの尻を撫でていたギュンターが、指を鳴らした。
「これでシューレン魔法国王都に、誰も入ることはできない。出ることもできない。可能なのは、転移能力のみさ」
信じられないことをあまりにもあっさり告げたギュンターに、グラインは絶句する。
しかし、サムたちはギュンターの結界術師としての実力を知っているので、とりあえずいきなり王都が攻められることはないとわかった。
シリアス先輩「シリアスの時間だ! それはそれとして、ずっと尻を撫でていた奴が有能とかシリアスすぎるんですけどぉ!」




