81「お風呂上がりです」①
「あー、温まった。ゆっくりもできて……はいないけど、まあいいや」
サムとギュンターは、メルシーたちに手を振って浴室から出た。
身体が温まると、次は睡魔が少しやってきてしまう。
「ぎゅんぎゅん的には、サムとお湯ぶっかけ大会は楽しかったよ!」
「そんな大会やってないからね? 誤解されそうなこと言うのやめて、マジで」
それでなくとも、よろしくない噂がフォーン小国やシューレン魔法国にまで轟いているのだ。
誰が流した噂か知らないが、良い迷惑だった。
「…………お、おのれ、僕は絶対にお風呂にはいってみせ、むぎゅっ」
浴室に続く廊下で倒れていたエミルの背中を踏みつけて、サムはすたすた歩いて行く。
「エミル殿下もガッツは認めるのだが、いまいち、品がないのはよろしくないね。もっと紳士はスマートにしなければ。あまりガツガツするのはよろしくないね」
「え? エミル殿下いたの?」
「…………サムが見えないふりをしているのか、本当に認識しなかったのか、ぎゅんぎゅんは問わないさ。でも、僕はいつだって君の味方だからね!」
「よくわからないけど、どうも」
サムには見えないエミル・アイル・スカイが、浴室に入ることはできない。
サムやウルくらいでなければ破れない結界が張られているのだから、まずエミルでは破ることはできない。
邪な感情がなければ、結界を素通りできるのに、阻まれているということは、つまり少なからず邪な感情があるという証拠だった。
今では、ウォーカー伯爵はもちろん、執事やメイドたちでさえエミル殿下はスルーである。
一応、エミルにもお付きの護衛やメイドがいて、あとで謝罪しながら引きずっていくのだが、実に大変そうだ。
「そういば、ウルはどうしている?」
「彼女は今も眠っているよ」
「……俺はウルが冬眠するのを知らなかったんだけど、あのままでいいの?」
「いいのさ。昔の、今もぴちぴちの僕がもっとぴちぴちの幼少期の頃から、彼女は寒いのが苦手でね。今のように冬眠することは、もう聞いただろうけど、話には続きがあってね」
「続き?」
ギュンターがウインクした。
「ウルは冬眠するたびに強くなるのさ」
「――は?」
「ぎゅんぎゅんも不思議でね。モリモリ食べて冬の間ずっと寝ていて、時々お腹が空いたら起きてきてまた眠って……春になると魔力量が上がっているのさ」
「ど、どういう理屈で?」
「ぎゅんぎゅんもわからない! 一度、学園の高名な教授がウルを調べようとしたのだけど……思い切り抵抗されてボコボコにされて泣いて帰っていったよ」
「想像するに容易いよね!」
ウルは自分がすると決めたことを邪魔されることをひどく嫌う。
ウルは、他人の評価など気にしない。
「その教授もせめて冬眠後に接触すればよかったのにね。わざわざ冬眠中に起こそうとしたから……」
「その人はどうしているの?」
「確か、辺境のとある土地で奥方の農業をしているよ。もう研究は懲り懲りだそうだ」
「人生が変わっちゃった!」
「ふっ、ウルはいつでも誰かに影響を与えてしまう罪深いベイビーなのさ」
「その言い方がなんかイラッとする」
サムとギュンターは食堂で水をもらう。
寒さのせいでいつもの水が冷たい。
ゆっくり風呂に入って温まった身体には、水の冷たさが心地よい。
「でもね、今のウルなら起こすのは簡単さ」
「そうなの?」
「ふふふっ、ワインでも注いだグラスを部屋の前に置いておけば起きてくるね! ただ、起きたウルに話が通じるかどうかは不明だけどね!」
「ありえそう! おかわり持ってなかったらぶっ飛ばされる予感しかしない!」
サムとギュンターは顔を見合わせて、笑った。
何気ない会話をするまるで兄弟のようなサムとギュンギュンです。
しかし、ぎゅんぎゅんはずっとサムのお尻を撫でていました。
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