75「帰宅の時間です」②
友也の転移によってサムと綾音はウォーカー伯爵家に戻ってきた。
普段は中庭だが、最近は雪が積もっているので転移専用の部屋が用意されている。
使用人たちは不用意にこの部屋には近づいていけないというルールがある。
もちろん、ラッキースケベられないようにだ。
「――おかえり、サム!」
転移で帰ってきたサムを出迎えたのは、妻のリーゼたち――ではなく、ギュンター・イグナーツだった。
サムをがっちりと抱きしめ、頬擦りしながらはぁはぁ息が荒い変態をどうしてくれようかと思う。
おそらく、抜け駆けされてしまったのだろう。リーゼたちが遅れて部屋の中に入ってきた。
妻たちの顔を見て、ようやく帰ってこられた、と肩から力が抜けた。
その隙にこれ幸いとギュンターが頬擦りを強くする。
「摩擦が熱い!」
「あんっ」
思い切り突き飛ばすと、ギュンターは床に倒れてしなをつくる。
いらっとしたのは言うまでもない。
「……サム、あんたも大変ねぇ」
綾音が心底同情する目をサムに向けた。
「ごほんっ! ――サム、おかえりなさい!」
「サム様! おかえりなさいませ!」
「サム様、おかえりなさい!」
「ただいま、リーゼ! アリシア! ステラ!」
ギュンターの出迎えはなかったことにして、サムはやり直した。
出迎えてくれたのはリーゼとアリシア、ステラの三人の妻たちだ。
他の妻は用事があって出ているため会えないのは残念だが、仕方がない。
「わたくしもいますわ! おかえりなさいませ、サム様!」
「オフェーリア、ただいま!」
婚約者のオフェーリアも出迎えてくれた。
「みんな、心配かけたね。ちゃんと綾音さん連れて帰ってきたから。ほら、綾音さん」
サムが促すと、綾音はリーゼたちに向かい頭を下げた。
「心配かけてごめんなさい!」
「本当に心配しました、綾音っち様。ですが、こうして戻ってきてくださって嬉しいです」
「綾音っち様!?」
リーゼが微笑み、綾音を抱きしめた。
綾音が出ていく際、話をしたリーゼが一番心配していたのだ。
「これからは何かありましたら、わたくしたちを頼ってくださいませ、綾音っち様」
「アリシアまで!?」
「そうですわ。お付き合いこそ短いですが、私たちは家族なのですから、綾音っち様」
「ステラも!?」
「ということですので、綾音っち様はあまりひとりで抱え込まないようにお願いしますわ。皆様の胎教にも悪いので、くれぐれも、お願いします!」
「オフェーリアまで!? で、でも、そうね。身重なのに心配かけちゃって、ごめんなさい!」
改めて謝罪した綾音に、リーゼたちが声を揃えた。
「――おかえりなさい!」
「――うん、ただいま!」




