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1966/1984

52「陛下たちも来ました」①





「お待たせ、ビンビンである!」


 広場に戻ってきたサムたちを出迎えてくれたのは、クライド・アイル・スカイとスカイ王国民、魔王、そしてシューレン魔法国の王子であるグライン代行だった。


「……あ、気が抜けた。張り詰めていた糸が切れちゃった」


 怒りで強張っていた身体から力がしゅるしゅると抜けた。

 青牙と青樹も同じようで、力が抜けてしまっていた。


「――サム、大変だったようだな」

「旦那様」


 ジョナサンが声をかけてくれる。


「フォーン小国には万が一に備えて、ローガン殿とデライトを置いてきた。一番置いておきたい人物がついてきてしまっているが、もう諦めた」

「ははは」


 ジョナサンの視線の先には、炊き出しを始めているクライドの姿があった。

 そこには、カリアン、メイ、朱雀丸に、霧島薫子と赤金茜もいる。


「とぅんじる、という異世界の食事を振る舞ってくれるそうでな。野菜をたっぷり煮込んだ、栄養のある食事のようだ。東方から仕入れたみそという食材が良い匂いがするんだ」

「さすが薫子さんと茜さんだ。やっぱり寒い日の炊き出しには豚汁だよねぇ」

「ところで、その子供は」

「実は――」


 サムはジョナサンに説明をした。

 公爵家の屋敷に食料を奪いに行ったところ、地下室で囚われていた奴隷の子供がいたので保護をしたこと。

 屋敷で働く人たちは誰ひとりとしていなかった。

 悪人ゆえに焼かれたのか、主人が死んだことで逃げ出したのか判断ができないが、いないのなら、と食料は全部奪った、と。


「この国は相変わらずだな……」


 ジョナサンが苦虫を噛み潰した顔をした。

 彼が知るシューレン魔法国も、ひどい国であると聞いているが、時間を経ても変わっていない。

 むしろ、悪くなっていた可能性だってある。


「他の屋敷にも同じような境遇の子供がいると思われるのですが」

「ならば、私が行ってこよう」

「旦那様が?」

「サムは、少し休みなさい。エヴァンジェリン様、綾音殿から聞いたが、ルルカス・シューレンと戦い、マニオン・ラインバッハと戦ったみたいじゃないか。肉体的に問題がなくとも、精神的に疲れてしまっているのではないかと不安だよ。いつも戦わせてすまないと思っている。こういう時こそ、頼って欲しい」


 サムはジョナサンの申し出をありがたく受け入れることにした。


「よろしくお願いします」

「任せておきなさい」


 ジョナサンが笑顔を浮かべ、サムと少女の頭を撫でて貴族の屋敷に向かった。

 そんなジョナサンと入れ替わるように、ロイグ・アイル・スカイが来る。


「お疲れ様、サム」

「お父さん」

「これを飲みなさい。温まるよ。そちらのレディーには、ぬるいお茶だ。まだ食事の用意ができていないので、乾きを癒し、温まって欲しい」

「ありがとうございます。一応、聞いておきますけど、ビン茶じゃないですよね?」

「東方のお茶だよ」

「じゃあ、いただきます」


 サムが一口お茶を飲んで見せると、少女がごくりと喉を鳴らした。

 ぬるいお茶が入ったコップをロイグから受け取り、少女の口元に運ぶ。

 少女は恐る恐る舐めるようにぬるいお茶を飲んだ。

 すると、涙をこぼした。


「慌てなくていい。落ち着いて少しずつ飲むんだ」


 サムの言葉に少女は頷き、素直に少しずつ喉を潤し、身体を温めたのだった。







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挿絵(By みてみん)


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