51「奴隷を見つけました」
サムと青牙、青樹は一緒に貴族の屋敷に乗り込んで食料、衣類、ついでに酒を強奪した。
エヴァンジェリンの悪党のみを狙った炎は、屋敷の人間の大半を焼き尽くしていたのは間違いない。
改めて、凄まじいと思う。
「――待て、サムよ。この屋敷に人がいる」
現在、いるのは公爵家の屋敷だ。
爵位が上の屋敷には、食料を溜め込んでいると考えたのだ。
「場所はわかる?」
「無論だ」
「じゃあ、行こう」
食堂から食料をもらうと、青牙に誘導されて地下へ足を向けた。
「地下室があるとか嫌な予感しかしないな」
「同感ね。ていうか、嫌な匂いがする。血と、膿の匂いよ」
青樹が不快だと言わんばかりに鼻を袖で隠す。
「――声が聞こえる。呻くような、声だ」
耳をすませていたサムが地下と地上を繋げる鉄製の扉を斬り飛ばした。
そして、顔を歪めた。
「これはひどいな」
地下は、牢屋だった。
罪人を閉じ込める場所ではない。
奴隷を閉じ込めるためのものだ。
そして、地下の奥には、血の匂いがする部屋があった。
そこで何が行われていたのかは、想像に容易い。
「…………たすけて」
牢の中から少女の声が聞こえた。
「――っ、青牙さん、青樹さん、あっちを頼む。おれはこっちを」
「まかせろ」
「わかったわ」
別れて奴隷たちの救出に走った。
牢はトイレがわりの桶があるだけのひどいものだった。
寒い季節が続くシューレン魔法国で、いくら地下で風が入らないとは言え、寒いものは寒い。
毛布すら与えられない、日々はどれほど地獄だっただろうか。
「……あ、あ、たすけ」
「わかっている。すぐに助けるから」
サムを見た少女は、ボロ布さえも与えられていない。
痩せ細り、髪もボサボサだ。
寒さにカタカタと震え、背中を丸めて身を縮めている。
牢には扉があるわけではなく、石造りの壁と、鉄格子だ。
斬るまでもない。
鉄格子を力任せに折り曲げると、震える少女に近づく。
「大丈夫、じゃないよね? 待ってて、まずは服と毛布を」
アイテムボックスから厚手の長袖ワンピースを取り出し、少女に着せようとするが、少女は首をフルフルと振った。
「服、汚れちゃう」
「気にしなくていいよ」
半ば無理やり服を着せると、毛布に包んだ。
「ここから出よう」
「……みんなが」
「他のみんなも助けているよ」
「ありがと、う」
「いいんだ。早くこんなところから出よう」
少女を抱き上げて、牢を出る。
少女は涙が出そうなほど軽かった。
血の匂いがする部屋を一瞥する。
人の気配はない。
「あの部屋……あの部屋に連れて行かれたら、死んじゃう」
「そっか」
サムは血の匂いが充満する部屋に向けて、炎を放った。
供養というわけではない。
サムの八つ当たりだ。
今、この苛立ちをぶつける相手が既にこの世にいないことが残念でならなかった。
「おい、サム! いきなり魔法を撃つな!」
「そうよ! おバカ! ていうか、こっちにも服と毛布をよこしなさいよ!」
「ごめんごめん」
謝罪したサムは地下から出ると、子供たちのために服と毛布を取り出した。
救出された子供は五人。
多いのか少ないのかわからない。
なぜ子供にひどいことができるんだ。
どうして、守るべき子供の尊厳を踏み躙ることができるんだ。
サムには、まったくわからなかった。




