44「女神ヴァルレインとコンタクトです」①
「――は?」
サムはヴァルレインの言葉を理解できなかった。
「最初こそ、戦神の手伝いをするのも一興かと思ったが、今は違う。私はこの世界がほしい」
「ちょっ、ふざけんな! この世界の唯一絶対の女神はこの綾音様って決まってるんですけどぉ!」
「三下女神は黙っていろ」
「――かちーん」
「綾音さん、ちょっと静かに」
「……しょんぼり」
女神を勝手に代表して綾音が怒りを露わにするも、ヴァルレインは相手にしなかった。
サムも話が進まなくなりそうだったので、綾音を静かにさせる。
「私は、かつて人として生まれ、世界のために戦った。地上を統一し、王であり神となった。しかし、欲深き妹とその仲間たちに裏切られ殺されてしまった」
「それは、ご愁傷様です」
「うむ」
サムとしては、ヴァルレインの話がどこまで本当かわからない。
事実だとしても、別に同情はしない。
「見返りが欲しくて戦ったわけではないが、あまりにも無体な裏切りに私は憤った。現在も、妹たちは神罰を受けている。それは、いい。私は、私を愛してくれる世界がほしい。この世界は美しい。ゆえに、欲しい」
「…………めっちゃ見返り欲しているじゃん」
「無償の愛など存在しないと学んだからな。それで、どうだろう? 私をこの世界に招かないか?」
「寝言は寝てから言え」
「そうつれないことを言うな。我々を知覚し、戦おうとしているのであれば、世界の意思と接点があるはずだ。ならば、私をこの世界の神として迎えたいと言えばいい。世界の意思が私を受け入れれば、楔を破壊せずとも私は招かれる。戦う必要がなくなる」
「あんたを招いて世界がどうなるかわかったもんじゃないから、嫌だね」
「私はただ信仰されればいい。時々、話をしたい。食事を一緒に囲みたい。そのくらいだ。一番に愛せとは言わぬ。ただ、家族として、遠縁の家族くらいでいいから、愛されたい。それだけだ」
神としては、求めるものが小さすぎる。
本心かどうかはさておくとして、受け入れるリスクはあまりにも大きい。
敵が減ることは歓迎だが、女神ヴァルレインがこの世界で何をするのか真意はわからないのだ。
「受け入れてくれるのであれば、戦神と私が戦おう。この世界を守ろう!」
「……おいおい、そんなことありかよ」
「無論だ。自分の世界を守ることは当たり前のことだ」
魅力的な誘惑だ。
しかし、受け入れることはできない。
「残念だけど、この世界にはすでに神がいる」
綾音が胸を張り、ドヤ顔をする。
「わかっている。愛の女神エヴァンジェリン・アラヒー」
「私かよ!?」
「私じゃないの!?」
まさか神から神として認識されているとは思わず、エヴァンジェリンが叫んだ。
そしてスルーされた綾音も叫んだ。
「不遜にも、私を差し置き愛の女神を名乗るなど……許せぬ」
「待て待て待て! 私は竜だ! 魔王だ!」
「抜かせ! それほど神気を持ち、信仰されながら、神ではないと抜かすか!」
「変態どものせいで私が知らない間に変化が起きているとでもいうのかぁああああああああああああああああああああああ!」
(そういえば、エヴァンジェリンに神格が……って、世界さんが前に言っていたなぁ)




