表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

179/1993

4「女子会です」②



「サムは甘えん坊です」

「まあ!」

「意外」

「うん、意外だね」


 リーゼの経験からサムが甘えん坊だと言うと、女性たちが驚いた顔をする。


「幼少期、お世辞にもよい家庭環境にいなかったせいかしら、人肌を無意識に求めてくるわ。それに、その、彼は若いから、一緒に寝ると自然に、ね」


 リーゼが顔を赤くする。

 彼女とサムの情事を想像したのか、ステラたちの頬も赤く染まった。


「――そ、その! ここだけのお話、実際経験してみてどうなのですか?」


 興味津々といった具合で手を挙げて質問したのはステラだった。


「ステラ様、さすがにそれは聞きすぎじゃないかなって僕は思うんですが。いえ、興味がないわけじゃないけどさ」

「サム様のためにそのあたりは色々書物で勉強しましたし、お母様や乳母にも聞きましたが、やはりこういうのはサム様のご寵愛を一番に受けているリーゼにお聞きした方がいいのかと思いまして」


 水樹がステラを窘めはしたものの、彼女の顔にも聞いてみたいと書いてある。

 花蓮も、リーゼを見て、呟く。


「確かに、興味はある」

「そりゃ、確かに初めては痛いと聞くし、覚悟をしておきたいから話が聞けるなら聞いておきたいけどさ」

「――あら?」


 ――初めて。

 その単語に、リーゼが首を傾げた。


「どうしたの、リーゼ?」


 水樹が問いかけると、リーゼは少し戸惑ったような困ったような顔をして応えた。


「私、その、サムとは初めてではなかったのだけど」

「あ、ごめんね」

「ううん、いいのよ。もう過去のことと割り切って話すことができるから。でも、少しおかしいのよね。サムと初めてを迎えた日、とても痛くて泣いてしまって、シーツにも血がとてもついていたわ」


 思い返せばサムも驚いた顔をしていたような気がする。

 だが、リーゼが一番驚いた。

 経験をしているはずのリーゼが、まるで生娘のようだったのだから。


「わたしの聞いた話と違う。毎回痛いとか不公平」

「わたくしの知識とも少し違いますわね。そういうものなのですか?」

「えっと、リーゼ、こんなこと聞くのは躊躇われちゃうけど、初めてのときはどうだったの?」

「それが、なにも感じなかったのよね」


 元夫が亡くなり、過去を過去として考えられるようになったリーゼだが、やはりあまり思い出したいことではない。

 それでも、一度浮かんだ疑問をすっきりさせるため、二年前を思い出す。


「それって、どういうことかな?」

「痛みもなにもなかったのよ。ちょっと生々しくなるけど、サムとする場合は、彼がしっかり中にいるってわかるのだけど、ユリアンの場合はなにもわからなかったのよね」

「それって短しょ――」

「花蓮様! こちらのチョコレートは王都でも人気の品なのですよ! よかったらどうぞお食べになって!」

「むぐっ、もぐもぐ、おいしい」


 リーゼの言葉からなにかを察した花蓮の言葉を、同じくなにかを察したステラが遮ってしまう。

 水樹が苦笑していることから、花蓮が言わんとしたことがわかったのだろう。しかし、リーゼはそんな三人の反応に首を傾げる。


「それに、サムとは一度すると本当に長いのだけど、ユリアンは数秒だったのよ。どうして人によってこんな違うのかわからなくて。サムとの初めての夜は戸惑いだらけだったわ」

「それ、早ろ――」

「うわあああああああっ、花蓮! 思い浮かんだものをそのまま言うのは感心しないかな! いや、僕たちみんな同意見だし、多分間違っていないと思うけど、ちょっと考えてから言おうね!」


 またしてもなにかを言いかけた花蓮を、今度は水樹が止めた。

 ステラにいたっては、顔を真っ赤にして俯いてしまっている。

 しかし、やはりリーゼはなにがなんだかわからず困惑気味だった。


「ま、まあ、ユリアンのことをちゃんと過去にできていてなによりだよ。うん。そりゃふたり目の奥さんをもらっても子供ができないわけだね。種なしじゃないかって噂されていたけど、それ以前の問題だったみたいだね」

「サムが潰したとき、あまり手応えがないと言っていたのも今なら納得できる」

「まぁ……ですが、その方の言動を察するに、ご本人は自覚がなかったのでしょうね」


 三人娘がそんなことを言って納得していた。

 どうやら一度目の結婚でリーゼに子供ができなかったのも、次の妻との間に子供ができなかったのも、ユリアン側に問題があったようだ。

 しかも、本人は気づいていなかったと思われる。

 いくら息子を溺愛する母親も、息子の股間事情までは把握していなかったようだ。


「ちょっとお待ちください。つまり、それだとリーゼの本当の意味でのはじめてはサム様ということでは?」

「うん、そういうことでいいんじゃないかな」

「えっと、さっきからなにを言っているの? 私にもわかるように教えてほしいのだけど」

「そうだったね。ごめんごめん。実はね――」


 代表して水樹がリーゼに察したユリアンの事情を語った。

 ユリアンの男としての問題と、初めてはちゃんとサムに捧げていたという事実を聞いたリーゼは、


「――ぷっ。ふふふふっ!」


 吹き出して、お腹を抱えて笑い出した。


「小さい男だとは思っていたけど、あれも小さかったのね!」

「小さいっていうか、極小だと思う」

「あはははははっ、やめて、笑わせないでっ!」


 リーゼが大笑いし、ステラも口元を押さえ、水樹も花蓮も笑いはじめた。

 彼女たちの笑い声が屋敷中に響き渡る。

 呼吸困難になりかけるほど笑い続けた四人は、一度落ち着くためにメイドに紅茶を入れ直してもらう。


「ところで――サムはどのくらいの大きさなの?」


 花蓮の質問に、リーゼが咽せる。

 なんて質問をするんだ、と抗議しようとすると、そこには目を輝かせたステラと水樹がリーゼの言葉を待っていた。

 まったく、と苦笑しながらも、


「実はね」


 リーゼもノリノリで話始めてしまう。

 きっとサムがこの場にいたら悶絶してしまっただろう。

 四人のお茶会は盛り上がり、夕暮れまで続くのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
生々しい話だけど膜の癒着の仕方次第ではどうあっても裂けるだろうにそれすら貫けないのは…  潰したのがあまりわからなかった所は皮だけで玉が本当にないのかなと思ってましたがこれは予想外 面白くてここまで…
[一言] ポークビッツ
[一言] ユリアンさんそれだけ小さくてすぐ終わるなら いつ奥さんに襲いかかっても拒否されなさそう 子供が出来ないなら浮気しても大丈夫だし ちなみに不妊の原因は男女半々に近いと聞いた事あります
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ