間話「ハンバーガーが食べたいです」②
お芋ケーキを食べ終えた友也が、口周りをナプキンで拭いてコーヒーを飲んだ。
「ごちそうさまでした。最近、忙しいので、こうやってゆっくりしとした時間はすばらしいですね」
ふう、と嘆息混じりの吐息を吐く友也に、サムも苦笑する。
サムはスカイ王国王都に来てから、友也はサムと出会ってから話題に事欠かないことばかりが起きている。
戦ったり、女体化したり、変態どもの相手をしたりと大忙しだ。
今まで最大の敵であった女神日比谷綾音が、スカイ王国民としてはまともな部類であることが驚きだ。
「なに話しているの?」
「あ、食の伝道師の薫子さんだ」
「ちょっと、それやめて! なんか噂に尾鰭がついてすごいことなっちゃって困ってるんだから!」
サムが揶揄うように言うと、薫子が頬を赤く染める。
スカイ王国の料理人と食通の貴族たちから、薫子は「聖女」であると同時に「食の伝道師」と呼ばれている。
きっかけは、ヘルシーな食事を広げたことだ。
この世界にも体型で悩む者は多い。
貴族には特にそうだ。
大体が、食生活と運動不足であることが多い。
貴族は、割と極端だ。
思い切り動く人間か、まったく動かない人間かで分かれているのだ。
例えば、サムの妻リーゼロッテ・シャイトは、身体を動かすことが大好きだ。剣士としても相当の実力であり、最初の頃はサムも単純な体術だけでは勝てなかったというちょっと悔しい思い出もある。
ただ、リーゼのように剣の才能があり、運動も好きだという貴族の子女は少ない。
そんな貴族の子女たちが、体型を気にするようになるのは自然なことだった。
もともと薫子は、この世界の少々偏った食事に不満を持っており、改善したいと考えていた。
その一環として、食堂の厨房に立ち、自らの店でもさまざまな料理を振る舞うようになった。
日本人にとって当たり前な、白米、味噌汁、そこに肉や魚のおかず、野菜を足してリーズナブルに提供すると、人気となった。
特に、焼き魚の組み合わせは年配の方々に好評だ。
その話題が巡り巡って、薫子の店は大繁盛した。
この出来事がきっかけとなり、スカイ王国で食べられていなかった食事が流行り始めた。すると、人気店の料理人、王宮からも教えを乞われるようになった。
――そして、ついだ二つ名が「食の伝道師」だった。
「最近、街を歩くと子供に「あ、食の伝道師だ!」って言われるのよ」
「……いいじゃないですか。僕なんて「ラッキースケベ大魔王だ!」って追い回されるんですよ」
「……なんかごめんね」
「いえ、僕もすみません」
「ちょっと、薫子ママがお話ししているのに微妙な空気にしないでくんない!」
「ごめんなさい!」
友也が泣きそうな顔をして謝罪をする。
なぜ彼は、自虐ネタを挟もうとするのか首を傾げてしまう。
「そ、それで、ハンバーガーって聞こえたけど?」
「そうそう。たまにはハンバーガー食べたいねって」
「うーん。ハンバーガーか」
「あれ? やっぱり難しい感じ?」
困ったような顔をする薫子に、友也が同意するように頷く。
「わかります。肉をこねようとしたら違うものを捏ねていたり、パンに挟もうとしたらラッキースケベって太ももに挟まってしまったりするんですよね」
「……そりゃお前だけだよ!」
もう1話だけ続きます。
霧島薫子:食の伝道師。
遠藤友也:ラッキースケベの伝道師。
クライド陛下:ビンビンの伝道師。




