23「ゴレ子さんの変化です」③
「ありがとう。では、行こう」
ゴレ子が手を背後に伸ばすと、ぐにゃり、と空間が歪む。
白樺のような木々が曲り、トンネルとなった。
「この空間の中なら寒さを感じないだろう。ここにいる木々と大地の精霊が守ってくれている」
「――すごいな、これ。私じゃ絶対にできないぞ」
ゴレ子の魔法を超える「力」にウルが瞳を輝かす。
「そう難しいことではない。魔王遠藤友也の転移のほうが、希少だ」
「……変態性合わせて珍しいもんな」
「ウル君、僕はラッキースケベってしまう魔王ですが、変態ではないのですよ」
「楽しみだな! いくぞ!」
「聞いて!」
叫ぶ友也を無視して、ウルは白木のトンネルの中に足を踏み入れた。
サムたちも続く。
「――なんと美しい」
白樺の木々と雪の中のトンネルを潜りながら、見上げる光景にクライドをはじめ、王たちが感嘆の声を漏らす。
木々の隙間から差す光が雪に当たり乱反射する光景は神々しくもあった。
「すでに私の身体は山となっている」
トンネル内を見渡すサムたちとは違い、この光景にあまり興味がないのかゴレ子が説明を始めた。
「えっと、そもそもなぜその姿になったんですか?」
「人と関わりたいという気持ちもあるが、今まで積み重ねた力を土としてこの地に与える必要があった。この間にも、土地に土は広がっている。北からの風を防ぐ実りのある山と、作物が育ち人が過ごしやすい大地となるだろう」
「トンネルを抜けたあとが楽しみですね」
今まで、オークニー王国の山として長い時間を過ごしたゴレ子は、いうほど巨体ではなかったようだ。
しかし、少しずつ土が、木々が、生命がゴレ子と同化し、力を与えたという。
力は、周囲の大地に力を与え、循環する。
人々がゴレ子の力を与えられた土地に住まい、繁栄していったのだ。
「私は、胸を躍らせている。見ているだけだった私が、人と共に歩めるのだから。同時に不安もある。君たちのように、私を受け入れてくれるだろうか?」
「きっと受け入れてくれるさ」
サムがそう言うと、彼女は「そうあってほしい」と願うように頷いた。
――そして、木々のトンネルを抜けた。
サムたちの視界に広がったのは、大地だった。
雪が積もる柔らかな土が広がっている。
視線を上に向けると、大きな山が土地の壁となるように存在していた。
うっすら潮の香りもする。
「グレゴリー様、ここは」
尋ねると、グレゴリーは驚きに身体を震わせていた。
「……ここは、スノーデン王国の最北端。冷たい潮風と吹雪がモンスターさえも寄せ付けない白の大地だ」
「え、でも」
雪は積もっているし、寒いが、吹雪いているわけではない。
「ゴレ子様がお力は、こうもスノーデン王国の過酷な地を変えてくださるのか」
グレゴリーの瞳から涙を流す。
「グレゴリー・スノーデンよ。あの山は、私の身体であった。本来ならば、あそこで寝ていてもよかったが、広い大地に実りを与えるとなると、身体を一度脱ぎ、土を与えたかった。当初の約束と変わってしまうが、私を受け入れてくれるだろうか?」
無表情ながら不安気に問うゴレ子に、グレゴリーは恭しく膝をつき首を垂れた。
「――喜んで! 我らスノーデン王国はゴレ子様と共に!」
「――ありがとう」
サムにはゴレ子が嬉しそうに微笑んだ気がした。




