エピローグ「ロイグの理由」②
ロイグの突然の凶行に、目を見開かせて勇人は倒れた。
「な、ぜ」
神の使徒だからといってしなないわけではない。
不死の敵など「おもしろくない」のだ。
「あーあ、せっかく新調した服なのに」
「なぜ、だ!」
「黙れ、雑魚が」
倒れる勇人の穴の空いた胸を踏みつけた。
痛みに絶叫をあげる少年を見下ろし、ロイグは淡々と告げる。
「言っていなかったけど、サミュエル・シャイトは僕の息子だ。わかるかい? ステラ・アイル・スカイは僕の姪であり、義理の娘だ。もっとも叔父らしいことも、父親らしいこともなにもしていない無責任な男だけどね。それでも、この人選はありえない」
ロイグは唖然としてる勇人を蹴り飛ばす。
何度も蹴って、ナジャリアの民の生き残りたちの亡骸をまとめた小さな家屋の中に入れる。
亡骸の上に倒れた勇人が何か抵抗をしようとしている。もしかしたら、逃げ出そうとしているのかもしれない。
「きっと君は、こんなところで、とか、僕はこれから、とかいろいろ考えているのかもしれないけど、ごめんね、興味ないんだ」
ロイグの腕に炎が宿る。
勇人の目がこれでもかと見開いた。
「ま、まさ、か」
「うん。そのまさか。君には死んでもらうよ。しかし、頑丈だね。胸を貫かれても死なないなんてすごいよ。でも、そのせいで苦しむことになっちゃうんだよね」
「や、め」
「あはははは、やめるわけがないじゃないか。君だって、好き勝手してきた身だろう? やめてと言われてやめたことがあったかい?」
「ふざけるな!」
血を吐き出し、勇人は叫んだ。
力を振り絞り立ちあがろうとしたが、ロイグの足によって起こした身体は再び沈む。
「だからさ、そういうのはいいんだって。僕は君を殺すと決めていたんだ。これは決定事項だから、覆らない」
「僕は! 神に選ばれたんだぞ!」
「そうだね、すごいね、えらいね。じゃあ、さようなら」
「ま」
ロイグは炎を放った。
優しい色をした炎だった。
ナジャリアの民を包み込んだ炎は静かに彼らを焼いていく。
「ぎゃぁあああああああああああああああああああああああああ!」
動けず、身体中をゆっくり焼かれた勇人が叫ぶが、ロイグは眉ひとつ動かさずに背を向ける。
「神に弄ばれたナジャリアの民よ。安らかに眠ってほしい」
建物から出てから、振り返り一礼する。
ナジャリアの民はスカイ王国にとって最大の敵であったが、事情をすべて理解したロイグにとってもう憐れむ存在だ。
それでも、隠れ住んでいた彼らを見つけ殺したのは、憂いを断つためだ。
彼らはスカイ王国に復讐しようとしていた。
しかし、あまりにも弱い。
どうせ死ぬだけだ。ならば、苦しまずに殺してあげたほうが彼らのためであり、スカイ王国のためだ。
「もし次の人生があるのなら――――いや、僕にそんなことを言う資格はない」
勇人の絶叫を無視して、炎を集落に放つ。
彼らのいた痕跡をすべて消すのだ。
「――っ、痛いな。あー、はいはい。ロイグですよー」
頭痛を覚えたロイグは、その場にいない誰かと会話するように声を出す。
「いやぁ、あの子はないですって。利用もなにもできないですから、そもそも人選に悪意ありますって。はぁ? 悪意なんてない、善意しかないですって? だから頭がおかしいって言っているんですよ! とにかく、まだ死んでないみたいですけど、もうすぐ死にますから、二度と復活するなんてことがないようにお願いしますね。はいはい、わかっています。それじゃあ」
会話を終えたロイグは肩をすくめると、勇人の絶叫がなくなったのを確認して歩き出す。
集落を抜け、森を抜け、オークニー王国へ向かう。
「やれやれ、上司が神様だと大変だ」




