54「陛下のお出迎えです」②
それからサムはスノーデン王国であったことをクライドに語った。
静かに聞いていたクライドは、サムが話を終えると、深く息を吐き頷いた。
「なるほど。グレゴリー殿も苦労するはずであるな」
「グレゴリー陛下以外でも、苦労するでしょう」
「そうであるな。たとえば魔王ダグラス・エイド殿のように彼を慕い集まった国であっても、世代が変われば分裂し、歪み合うものだ」
魔王の中で「王」であるのはダグラス・エイドだけだ。
そんな彼の国には、彼を慕い、崇拝し、憧れ、越えようとする者たちが集まりひとつの国家になっている。
クライドの言う世代交代も、魔族であり魔王であることから長命であるため心配は少ない。
いずれ死を迎えることもあるだろうが、寿命ではずっと先のことだ。
仮に、誰かと戦って死ぬとしても、その「誰か」が数える程度しかおらず、ダグラスとは友好関係なので心配もない。
戦神のような存在がいきなり現れて暴れたら話は別だが、現状それはないだろう。
だがもし、世代交代の可能性があっても、ダグラスの娘であるジェーン・エイドがいる。
準魔王でありながら、その力は未知数。
魔王に至っていない身でありながら、魔王に匹敵するか、それ以上の力を持っていると思われている。
ただ、当の本人が魔王にも王にもまるで興味がないので、後継になることはないと考えられる。ダグラスも無理強いすることはしないだろう。
「我が国も、初代の戦友から慕う者たちで始まった国だったのいうのに、最近までは王家と貴族の関係はお世辞にも良いものとは言えなかった。無論、その責任は私にもあるが」
「……陛下」
どちらかと言えば、クライドは国王である以上に魔王レプシー・ダニエルズの墓守であることを重きを置いていた。
歴代の王もそうだったらしい。
その結果、貴族たちが力を不必要につけてしまったのは皮肉なことだ。
今はもういない貴族派貴族たちが、魔王レプシーの存在を知っていたら逃げ出していただろう。
聞く限り「魔王は私がなんとかしてみせる!」と言うような貴族は貴族派貴族にはいなかった。
「すまないのである。ついぼやいてしまった」
「いえ」
「グレゴリー殿は今後悩むであるだろうな」
「今までも頭を抱えてきたでしょうけど、問題は多いですしね」
「……我々もできる限り協力するつもりである」
「力になれることがあれば言ってください」
「……すまぬ。いつもサムばかりに迷惑をかけてしまうのであるな。少しは報いたいのだが……そうだ! 風呂に行くのである! 背中を流させてほしい!」
いいことを思いついたとばかりに表情を明るくするクライドに、
「――え? なんで?」
サムは展開についていけず、心底不思議そうに尋ねた。




