47「降伏を勧めます」②
兵士たちがひれ伏す中、カリアンと共にスレイマンが降りてきた。
「……凄まじい魔力でした……私も魔法は使えますが、格の違いを見せつけられました」
地に足をつけたスレイマンは、ウルに畏怖と感動を覚えたように頭を下げた。
「不必要な血をこれ以上流さずに対処してくださったこと感謝します」
「……戦うほど強い奴がいなかっただけだから、気にしなくていいぞ」
「それでも、感謝します」
「ふん」
スレイマンは顔を上げると、すべての兵に、そして屋敷の主人に聞こえるよう大きな声を張り上げた。
「――私は、スノーデン王国第一王子スレイマン・スノーデンだ!」
兵士たちが顔を上げる。
彼らの目には、希望、期待、不安、恐怖が入り混じっている。
「グレゴリー・スノーデン国王陛下も存命だ! 王位を狙い、争う必要などない!」
スレイマンの声に、兵士たちが涙する。
もう戦わなくていいのだ、と泣いていた。
(正直、王がいるとかいないかじゃなくて、この国をどう建て直すかどうかが問題なきがするけど……きっとこの国の貴族もわかっていて見ていないふりをしているんだろうなぁ)
サムは内心、そんなことを思うが口にはしない。
この国がどうなるかは、ある意味スカイ王国にかかっている。
クライド・アイル・スカイをはじめ、国の重鎮たちが見捨てるか、拾うかで大きく変わるだろう。
できることなら救われてほしい。
しかし、救う前にこの国に巣食う悪人たちを駆逐する必要はある。
すべての貴族を排除しろとは言わないが、少なくとも民に寄り添える貴族以外はいなくなったほうがいい。
サムは貴族だが、感覚は庶民だ。
その庶民として、スノーデン王国の悪徳貴族どもは――百害あって一利なし。
(……この国を見ていると、スカイ王国の貴族派貴族たちってまだマシだったなだなぁ。もちろん、不必要な存在だけど、上には上がいるって思い知らされたよ)
スカイ王国の悪徳貴族たちは、イーディス・ジュラ公爵によって制御されていた。
無論、完全な制御下にあったわけではないので泣く民はいたのは事実だ。
サムが得た領地も、ひどい貴族が領主としてやりたい放題だった。
それでも、スノーデン王国に比べたらまだマシだと思えてしまうのは、この国の惨状を見て感覚が麻痺してしまったせいだろう。
スカイ王国の中でも貴族に虐げられた者にとっては、他の国など知らないし、比較対象もない。
辛かった過去は変えられない。
「スレイマン様っ!」
サムが地面に落ちている剣を蹴り飛ばしていると、襲われていた屋敷の中から痩せた初老の男性が勢いよく扉を開けて走ってきた。
「おおっ! ヒョードル・バーザロフ公爵! 無事だったか!」
公爵と呼ばれた男性は、簡素な革鎧を身につけていた。
お世辞にも貴族が身につけるとは思わない鎧だ。
もっとも、重厚なものであれば、その痩せた肉体では支えられないとは思うが。
バーザロフ公爵は、頭頂部が薄くなった白髪を伸ばし、後頭部を結っていた。
怪我はしていないようだが、やはり食べていないのだろう。
足取りが少し不安だ。
「……サム、馬鹿なことをする兵がいないようにちゃんと見ていろよ」
「うん」
ウルに言われてサムは警戒する。
降伏した兵士たちが、標的であるバーザロフ公爵を目の前にして襲いかかる可能性があった。
サムとしては、ウルの圧倒的な魔力に怯え克服した人間が動けるとは思わないが、万が一ということもある。
スレイマンとバーザロフ公爵を守るように、ウルと友也と共に立った。
安心してください。ウルさんはちゃんと暴れます!
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異世界帰りの主人公由良夏樹が勇者の力を持ってして現代日本で神や魔族を相手に暴れまくるお話です。ぜひお盆休みの読書にお読みいただけますと幸いです。
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