44「スノーデン王国再びです」②
「――んで、どの貴族から血祭りにあげればいいんだ?」
やる気満々なウルに、スレイマンが「えぇ?」と引き気味だ。
だが、サムや友也はいつものことだと平然としており、カリアンに至っては「元気ですね」と微笑む始末だ。
「お待ちください、ウルリーケ殿」
「……あん?」
ウルが吊り目を向けると、スレイマンが少し怯えた感じを見せた。
「いえ、あの」
「ウルー! スレイマン様は、王子様ですから! 王子様ですからね!」
「…………セドリック殿下とエミル殿下と同類か」
「そのふたりと一緒にしちゃ駄目だから!」
「……いえ、サムも大概だと思いますが」
「だって! セドリック殿下はさておき、エミル殿下はメルシーちゃんに気持ち悪い言動ばかり取っているし!」
「気持ちはわかりますけど。今は、忘れましょうね」
ウルを注意したはずのサムが話を脱線しかけたので、友也が軌道修正をする。
「スレイマン殿」
「――はい」
「個人的に、この国の貴族に詳しくないのです。先日の襲撃で、幾人かの貴族は亡くなっているはずですが」
「申し訳ありません。軟禁されていた身なので、どの家の者が亡くなったのかわかりかねます」
「……そうでした。失礼しました」
サムたちは、目視で動きを確認することにした。
サムが魔法で簡単な障壁を張ると、吹雪く雪を遮断する。
静かに地面を蹴って宙に浮くと、ウルと友也も続く。
「……当たり前に空を飛ぶのか」
唖然としているスレイマンに「失礼します」とカリアンが断りを入れて、抱き抱えてサムを追いかけて浮上する。
「……なんと……これが飛ぶという感覚なのか。なんと素晴らしい」
空を飛んだことのないスレイマンは、たとえ抱き抱えられていたとしても、自らの身体が浮遊することに感動を覚えているようだ。
「……申し訳ありません。このようなときに、はしゃぐようなことを」
「いいえ、お気になさらず。私も、自らの魔力で空を飛んだ時、感動を覚えたものです」
「……カリアン殿。……我が国では、魔法使いの育成に力を入れており、魔法使い主義なところも恥ずかしながらあります。しかし、サミュエル殿をはじめ、ウルリーケ殿、魔王様、カリアン殿のような使い手は……いいえ、我が国の宮廷魔法使いたちが束になっても足元にも及ばないでしょう」
「魔法は得て不得手があります。気にすることはありません。それに、魔法使いとは、あくまでも魔法が使えるだけの人間であり、我々に大きな違いはないのです。魔族や魔王は少々例外とさせていただいきますが」
苦笑してみせるカリアンに、スレイマンも力無く笑った。
彼の心情としては、サムまでいかずともスカイ王国レベルの魔法使いが国にいなかったのに、魔法使いのプライドだけは高かったことを恥ずかしく思っているのかもしれない。心なしか気落ちして見える。
「おじいちゃん、スレイマン様、あっちで小競り合いしているみたいですね」
サムがふたりの会話に割って入った。
指差す方向に、カリアンとスレイマンが顔を向ける。
「……あの屋敷は……バーザロフ公爵家」
「よりによって公爵家か」
サムの視界には、目を血走らせた兵士――といっても、簡素な革鎧を身につけただけの者たちが、屋敷の中で暴れている姿が見えた。
略奪する者、食料を食い荒らす者、公爵家の兵と戦う者と様々だ。
襲っている者がどこの誰かは知らないが、統率など取れていなかった。
「……バーザロフ公爵って、スレイマン様から見てどうですか?」
「……この国ではまともな部類であると考えている。父の友人であるので、そう信じたいと思っているだけかもしれぬが。ただ、ネイモンとアリョーシャのことを嫌っていたので……」
「わかりました。とりあえず、助けましょう。ウル、友也」
「ようやく戦いだ! どうせ雑魚ばかりなんだけど、ストレス解消に暴れさせてもらうぞ!」
「お屋敷壊しちゃ駄目だよ!」
サムの忠告が届いていたのかいないのか、ウルは返事もせず飛んでいってしまう。
「おじいちゃんはスレイマン様と一緒に後から来てね」
「わかりました。サム、ついでに友也くんも、気をつけてください」
「はい!」
「……ついで扱いは酷いですが、任せてください」
サムは友也と共にウルを追いかけてバーザロフ公爵家へ飛んだ。
次回、大暴れします!
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異世界帰りの主人公由良夏樹が勇者の力を持ってして現代日本で神や魔族を相手に暴れまくるお話です。ぜひお盆休みの読書にお読みいただけますと幸いです。
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