40「三姉妹のお話です」②
前世も今世も初心であるウルは、耳を塞いだ。
しかし、リーゼとアリシアは許さない。
ふたりで協力をして、ウルの腕を掴むと、話を続けた。
「真面目な話をすると、婚約したのですから関係を一歩進めてもいいのではないかと思います」
「……婚約したんだから結婚するまで清い関係でいいんじゃないかと思うんだけど。というか、貴族なんだし婚姻前の関係は」
「お姉様……今まで貴族らしいことはせず、破壊神のごとく暴れ回っていたのに、都合のいい時だけ貴族とは……」
「うぐっ」
「まあまあ、リーゼお姉様。ウルお姉様のおっしゃることもわからないわけではないのです」
責めるだけでは話が進まないと理解しているのか、アリシアがウルをフォローした。
「アリシアったら、お姉様に甘いのだから」
「ふふふ、得意なことと苦手なことがありますから、仕方がありませんわ」
「でも……」
リーゼは眉間に皺を寄せている。
しばらく無言となったリーゼだったが、大きくため息をつき椅子に戻った。
「直接的に言うのはどうかと思っていたのですが、こうなってははっきり言わせていただきます」
「お、おう?」
しっかり向き合う形をとったリーゼに、ウルも姿勢を正す。
「大きなお世話とお思いでしょうが、心配なのです」
「心配って、なにが?」
「……お姉様はサムと結ばれぬまま別れてしまいました。今は健康を取り戻したと聞いていますが、それでも人である以上……万が一ということがあります。妹として、サムを愛する妻として、ふたりには早く結ばれてほしいのです」
「……リーゼ、お前……」
ウルは涙ぐんだ。
まさか、妹たちがそこまで自分とサムのことを考えてくれているとは思いもしなかったのだ。
リーゼの言うように、サムとウルは結ばれずに別れた。
想いは結ばれていたが、気持ちを伝えたったのは最期の別れの瞬間だ。
サムもウルにも「もっと早く想いを伝えておけばよかった」という後悔が残ったのは言うまでもない。
今のウルは健康体だが、人間である以上、いつ不幸が訪れるかわからない。
女神日比谷綾音の復活や、戦神ディーオドールの存在を知っているからこそ、リーゼとアリシアは不安を覚えてしまうのだ。
ウルは「神殺しだ!」と嬉々として戦場へ向かうのだろうが、戦いの果てに死んでしまう可能性だってある。サムだって同じだ。
今までの敵とは比較できない、神という存在を相手にする以上、未来は不確かだ。
――だからこそ、二度目の後悔をしてほしくないと思い、せついているのだ。
「僕も愛しい妹たちのひとりであるウルならば、僕よりも先にサムと初夜を迎えることのであれば、協力することもやぶさかではないよ!」
ばんっ、と音を立てて和談室に入ってきたのは、バスローブ姿のギュンター・イグナーツだった。
「……お前、まだ屋敷にいるのかよ。いい加減、家に帰れって。というか、このクソ寒いのになんでバスローブ姿なんだよ! 風邪ひけ!」
「ふっ。つれないことを言わないでほしいね、ウル。リーゼとアリシアは諸手を挙げて歓迎してくれているというのに」
「してないわ」
「していません!」
「…………それはさておき!」
「おい! 都合悪くなったからって強引に話をかえるんじゃねえ!」
ギュンターは腰を横に振りながら部屋の中に入ってくると、空いていた椅子に座る。
「はっはっは! メルシー、ルーシー、アーリーの様子もみたくてね。ついでにお風呂もいただいてしまったよ。エミル殿下に会う約束があったので、これでもかというほどドヤ顔をしてあげようと思ってね!」
「……なんつー性格の悪いやつだ」
「僕も少々変わり者であることは自覚しているが、可愛いメルシーの相手にエミル殿下はない!」
「スカイ王国始まって以来の変態にダメって言われるエミル殿下がやばすぎるだろ」
エミル・アイル・スカイのメルシーへの執着を知らぬウルは、ちょっとだけ引いた。
実は、エミル殿下はお風呂セットもって何度か突撃しております。
その都度、ボーウッドさんをはじめとする面々に阻止されています。
その後、相変わらず娘からの扱いが悪い竜王候補玉兎さんと一緒に屋台で焼け酒をしているとかしていないとか。
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異世界帰りの主人公由良夏樹が勇者の力を持ってして現代日本で神や魔族を相手に暴れまくるお話です。ぜひお盆休みの読書にお読みいただけますと幸いです。
――そして、『コミカライズ』進行中ですのでお楽しみに!!!
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