39「三姉妹のお話です」①
ウルリーケ・ウォーカー・ファレルは、遅い朝食を取ると大きくあくびをしていた。
「……お姉様、お行儀が悪いですよ」
「お姉様らしいですが、サム様と婚約なさったのですから、少しはお淑やかになさってくださいね」
「悪かったよ。力を使いすぎたせいで眠くて眠くて……昔のサムじゃないが、体力がないのが今の私の弱点だな」
和談室で、暖炉にあたりながら編み物をする妹リーゼロッテとアリシアに嗜められ、ウルは少し罰の悪そうな顔をして言い訳をした。
「確かに、王都にきたばかりのサムは身体ができていなかったこともあり体力面や持久力に不安がありましたね」
肉弾戦の稽古をつけていたリーゼが懐かしむように、編み物をしていた手を止める。
「サムは、出会った頃から高火力タイプの戦闘者だったからな。長い時間戦うのではなく、短い時間で勝負をすることは、私も得意だから当時はそれでいいと思っていたんだが」
サムとウルは、苦戦して戦いが長引くことはそうそうなかった。
数える程度の長期戦も、竜王炎樹との戦いくらいだ。
その戦いだって、一時間も戦っていない。
国と国の戦争ではない限り、何時間も、何日も戦うことは稀だ。
リーゼのような剣士だって、一時間も剣を振るうことはない。
強い相手こそ、戦いの時間は短い。
しかし、神のような超常の存在と戦うことを想定すると、長時間ではなくとも、いつもの数倍魔力と体力と精神力を消費していくだろう。
ならば、自力があるにこしたことはない。
「私もきちんと鍛え直さないといけないな」
「……お姉様が十三歳の頃よりも数段、いいえ、宮廷魔法使いとして大暴れしているときよりも数段強くなっていると思うのですが?」
リーゼの知るウルは、剣士でしかないリーゼにとって未知の強さを持つ魔法使いだった。
だが、今のウルは、かつての姉以上の強さを持っていることは理解できていた。
「そうは言っても、晩御飯食べると夜はすぐ眠くなるし、一度眠ったら朝まで爆睡だし……体力がないんだよ! 体力が増えれば、もっと戦いだって強くなるはずなのに」
「……アンチエイジングを副作用ですね」
「だからアンチエイジングなんてしてねーから! まだそれ言うの!?」
「二十五歳のお姉様が十三歳である事実を……私は未だ受け入れられません」
「わたくしもです! お姉様がゾンビのように復活したことでも驚きですのに、わたくしよりも若くなっているなんて!」
「リーゼだけじゃなくて、アリシアもかよ! お姉ちゃん的には、私の生まれ変わりより、気弱だったアリシアがドラゴンライダーになっていた方がびっくりだけどね!」
冬になって、子竜三姉妹は風呂場を占拠してあまり出てくることはない。
だが、秋まではアリシアを背に乗せてスカイ王国の空を駆け巡っていた。
気弱で、自分の意見を言うことが苦手だった妹の変化に、ウルが驚いたのは言うまでもない。
「ウルお姉様、アリシアに関しては私をはじめ、お父様もお母様もびっくりしているのですけど」
「……よかった! 私だけじゃなかったか!」
「もうっ、ドラゴンライダーなんて言い方はやめてください! わたくしはメルシーちゃんたちとお散歩しているだけですのに!」
アリシアが頬を膨らます。
サムと結婚し、命をお腹に宿しているが、こういう可愛らしいところは変わっていないようでウルとしてほっとする。
「しかし、お姉様が成長期とはいえ……夜更かしできないのは問題ですね」
「起きていようと思えば起きていられるからそこまで問題じゃないんだけどな。魔力を使うと急にスイッチ切れたように眠っちまうけど。まあ、外でいきなり寝ることはしないから大丈夫だろう」
「そうではありません!」
「――ええ?」
リーゼは若干険しい表情をして、ウルをまっすぐ見た。
「夜、ぐーすか寝ているようではサムとの初夜はどうするのですか!」
「またその話はじまっちゃった! 私、そういうの苦手なんだって!」




