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61「ゾーイさんが引きこもりました」③






「それは別にいい。横に置いておけ」

「……えー。俺的にはよくないんだけど、ま、いいか」


 サムは自分の覚えていないことを考えても仕方がないと無理やり思考を切り替えて、ゾーイに朝食を食べてもらって元気にすることを優先した。


「ほら、ご飯作ってきたから食べて食べて。あ、食堂行く?」

「いや、ここでいい。というか、お前が作ってくれたのか?」

「うん」

「……ありがとう。入ってくれ」

「はーい。お邪魔します」


 ゾーイの部屋に上げてもらう。

 彼女の真面目な性格が反映するように、部屋の中は綺麗だ。

 物は少ないが整理整頓をされていて、魔法少女の衣装もちゃんと飾られている。


「あ、あれはだな……魔法少女になるのは不服だが、キャサリンが自らの手で作ってくれたのだ……無下にはできん」

「ゾーイのそう言うところは好きだよ」

「すっ……あ、うん。ありがとう」


 書物が積まれたテーブルにゾーイが着き、サムがトレイを彼女の前に置いた。

 書物をベッドの上に置かせてもらい、アイテムボックスから淹れたての温かさを維持しているミルクティーをポットごと取り出す。


「どうぞ、お嬢様」

「うむ」


 執事のように振る舞ってみると、ゾーイも乗ってくれた。


「では、いただこう。ありがとう、サム」

「いえいえ」

「はむ。……ああ、これだ。外側がカリカリなのに中はもちもち。私が今まで食べていたワッフルはなんだったのか……ハチミツもいいな。メープルシロップも好きだが、やはりハチミツの王道さが良い」


 少し冷めてしまったが美味しそうにワッフルを頬張るゾーイにサムが顔を綻ばす。


「あ、あまりジロジロ見るな。食べづらい」

「おっと、それは失礼」


 にこにこしながら見つめていたのがバレてしまったようで、ゾーイが頬を染めたので、少しだけ視線を逸らした。


「……それにしても、昨日はお互いに散々だったな」

「本当だね」

「レプシー様がサムに倒されたことがきっかけでスカイ王国と関わるようになったのだが、まさかあの頃にはこんなことになるとは思わなかった。キャサリンは最初から変わらないが、スカイ王国はだいぶ愉快な国になってしまったな」

「……きっとレプシーの存在がスカイ王国の変態性を封じ込める結界だったんだよ」

「ありえる。もしかしたら、レプシー様はその身を犠牲にしてスカイ王国を封じていたのかもしれない。そんなレプシー様を解放してしまったサムは……取り返しのつかないことをしてしまったな」


 サムは冗談で言ったのだが、ゾーイは本気で言っているようだった。

 レプシーは、妻子を奪われた復讐で暴走し、その後、大陸東側の人間を殺戮していた。そんなレプシーを倒すために地球から召喚されたのがスカイ王国初代国王となる日本人だ。

 だが、レプシーの力は強く、倒すことができなかった。命懸けで封印をし、その上にスカイ王国を建国した。

 スカイ王国はレプシーの封印であり、いずれ亡くなるはずだったレプシーの墓であったのだ。

 レプシーの存在は魔王や一部の魔族を除き、スカイ王家の秘密として代々受け継がれていた。クライドを始め、手に負えるはずのない魔王の存在に神経をすり減らしたのは言うまでもない。

 そんなレプシーが倒され、もう魔王に怯えることがないとわかったのだから、少々はっちゃけてしまうのは無理もないことだ。


「そんなレプシーも今じゃすっかり落ち着いちゃったしね」

「……レプシー様がお幸せならそれでいい。できることなら、スカイ王国に染まりませんように、と神……などには祈れないので、海と大地に祈っておこう」

「じゃあ、俺も」


 レプシーまでスカイ王国に染まったら、もうツッコミが追いつかない。

 貴重な常識枠が染まりませんように、とサムとゾーイが祈った。


「やれやれ、私の長い生の中で今が一番慌ただしく、大変になってしまった。そのきっかけになったサムには責任をとってもらわないとな」

「そうだね。じゃあ、結婚しようか」

「――ほえ?」







 ――この日、ゾーイ・ストックウェルが正式にサムの婚約者となった。








 大人の事情で、この後は……ご想像ください。

 でもね、まだ清い関係だよ!


 最新コミック2巻が発売となりました! ぜひお読みいただけますと幸いです!

 コミックウォーカー様、ニコニコ漫画様にて、コミカライズ最新話が公開されておりますのでぜひご覧になってください!

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