58「祖母の気持ちもなんとなくです」
「……ありがとう。優しくされたのは久しぶりだ。妻は娘に関しては、私と考えが違くてね。いずれ嫁に行くのですから、そんな過保護になってもしかたがないでしょう、なんて冷たいことを言うんだ」
「それはなんといいますか、はい」
きっとその言葉だけが全てではないのだろうが、少しだけ冷たく聞こえてしまう。
(俺もいつか生まれてくる子が嫁に行く日があるんだろうけど……泣くな)
まだ生まれていない子供の花嫁姿を想像して、涙が溢れそうになった。
グレン侯爵に付き合ってワインを飲みすぎたようだ。
「ワインはうまいが、そろそろこの魔法少女から一般人に戻りたいんだけどな。早く、本題に入ろうぜ」
「……グレン侯爵、よかったら後日、男だけで飲み会をするのでぜひ参加してください」
「ありがとう、サム。君のような素晴らしい男性が親族にいることを感謝するよ」
かぱかぱと水のようにワインを飲み続けていたウルが、グレン侯爵の話に飽きてしまい、本題であるサムと侯爵家の女性の誰かを娶るという話に戻すように促した。
「ごほん。先ほども言ったが、ヘイゼル様がサムの奥方や婚約者に実家のグレン侯爵家の人間がいないことを気にしていてね」
「……そういうのってやっぱり気になるんですかね」
「ヘイゼル様にとって可愛い孫娘であるステラ様がサムと結婚し、懐妊していることは手放しで喜んでおられる。ただ、それはそれ、これはこれ、のようだ」
サムの祖母、ヘイゼル・アイル・スカイはサムの父に当たるロイグ・アイル・スカイを亡くしてから喪に服して公の場に出ないようになっていたが、孫であるサムの存在がきっかけとなり、少しずつ表に出るようになっていた。
最近では、パーティーなどには最小限しか参加しないが、貴族の子女を集めてお茶会をするなどしていて楽しそうだ。
サムも祖母とは頻繁ではないが定期的に会っている。
だが、まさか祖母が自分の妻や婚約者にグレン侯爵家の人間がいないことを気にしていたとは思わなかった。
「個人的にはヘイゼル様のご要望を叶えて差し上げたいが、グレン侯爵家に君にふさわしい変態少女はいないのだよ!」
「……目上の方ですけどぶっ飛ばしますよ!?」
「良くも悪くも普通の子しかいない。その子たちも婚約者がいるし……生き遅れの浪費癖が激しい三十八歳がいるが、どうかな?」
「浪費癖とか嫌です!」
「なによりも、サムの奥方たちと一緒にいて平気な子がいないのだよ。魔王様方と平気で接するとか、普通の子なら胃に穴が開くか、利用しようと企むなどするかしてしまうのが普通だ」
「……まあ、それは、そういう子もいるんでしょうけど」
「私も君と縁を繋ぎたいと考えている。分家にも変態少女を探しているのでしばらく待っていただきたい」
「だから、ぶっ飛ばすよ!?」
「変態少女がいなければ……君の子供と私の子供を婚約させると言うのはどうだろうか?」
「だからさっきからなんで変態少女限定なんだよ!?」
酔っ払っているのか、それとも本気でサムにふさわしいの相手が変態だと確信しているのか、判断できず、後日リーゼたちを交えて話をする約束となった。
■
「あー、また面倒臭い予感がするけど、おばあさまの願いも叶えてあげたい。俺は孫として、孫としてぇええええええええ」
「もう面倒臭いから蛮族よろしく、スカイ王国の女は全部俺のもんだでぐへへへへ。とか言えばいいのに」
「……変態ばっかりくるじゃんそれ」
「……だな」
なんて微妙なやりとりをしながら、酔いを冷ますと部屋に残ったグレン侯爵に挨拶をして会場に戻ろうとすると、ぬうぅっとキャサリンが現れサムたちが捕まった。
「探したわよん」
「な、なんですかキャサリンさん!」
「もう勘弁してくれ」
「あらあら、でーも! お色直しの時間よん」
「なん」
「だと」
まだまだ魔法少女でいなければいけないようだ。
サムとグレン公爵家については後日きっちり。
最新コミック2巻が発売となりました! ぜひお読みいただけますと幸いです!
コミックウォーカー様、ニコニコ漫画様にて、コミカライズ最新話が公開されておりますのでぜひご覧になってください!




