7.乗っかってみよう
広い部屋の中には俺を除いて三人の男、一人の女がいるが、まだまだスペースにはかなりの余裕がある。
どこかの城、その広間という雰囲気だ。
いや、玉座がないから、何か重要な儀式を行う場所かな?
「あなた、何者ですか!」
女が俺を誰何してくる。
それにすぐに答えずに、しばらく観察した。
高貴な雰囲気と、それに相応しい乳白色のドレスを着ている。
頭につけたティアラがチャームポイント。
右手には、先端に赤い宝石があしらわれた、柄が金色の杖を携えている。
俺の突然の登場に対して、眉をひそめる程度で済ませていることから、冷静で、意思が強い女性なのだろう、と想像できる。
おそらく、どっかの国の姫だろう。
ふふふ、さらわれたらお姫様だっこで救出してやるとしよう。
そして城に戻る前に宿屋に泊まろう。
その姫っぽい人物の隣にいるのは、剣と鎧を身に着けた、「ドラエク」で騎士やってます! って感じの男。
美醜の基準なんて世界、地域の価値観でコロコロ変わるが、まぁ平均的な価値観だと男前と判断していいだろう。
突然現れた俺のことを警戒しているのだろう、剣の柄に手を添え、いつでも抜けるようにしながら俺のことを観察している。
もう一人の男は、五十代くらい?
人間の年なんてあまり気にしたことないので、おそらくだが⋯⋯まぁおっさんだ。
太って、頭は剃っているのか髪の毛がない。
だぶだぶの服を着ている。
今にも叫びだしそうな表情で、口をパクパクさせながらこちらを見ている。
気になったのは、もう一人の男、明らかに「ドラエク感」がない。
だって、以前知り合いの神に見せてもらった、別世界で主流の服であるTシャツとデニムだもの。
俺と、女、二人の男を交互に見回すようにしながら、ガタガタ震えている。
以上の情報から、俺は現在の状況を推察する。
うん、これ、あれだ。
勇者と召喚者たち、ごたいめーん! ってやつだ。
勇者召喚の儀式によって呼ばれた、異世界の青年と、召喚者たち。
その両者が初めて出会う、お取込み中の、大事な大事な場面に──俺がお邪魔しちゃったってやつだ。
さっき辿ってきた「道」は、この青年を呼び出すために、ここと異世界を繋げたものだったのだろう。
だから俺もここに出てしまった、と。
よし、これでさっきの疑問もスッキリ解決、では挨拶でもしようかな? と俺が思っていると、姫らしき人物が続けて叫んだ。
「さてはあなた、召喚されたばかりの勇者様を害そうとする、魔王軍の刺客ですね!」
なにやら、盛大なご勘違いをされてらっしゃるようだ。
だから俺は言ってやった。
「ふふふ、良くぞ見抜いたな⋯⋯」
乗っかるしかないっしょ、こんなの。