表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/16

1.転生してみよう

 混沌は「可能性」に満ちていた。

 混沌はその「可能性」から、多数の世界と、力を持つ存在たちを生み出した。

 当初、力を持つ存在たちのことを指し示す言葉は存在しなかった。

 呼ぶものがいなかったからだ。



 やがて、ある世界の、ある大地に「人間」が生まれた。

 彼ら人間は、力を持つ存在を認識すると、自分たちを導く者として呼び名をつけた。


 ──「神」と。




_______________



「人間になりたい?」

「うむ」


 そんな「神」こと俺「オメガテウス」が発生して、早何十億年。


 俺は別世界(別区域担当)の神、ヘレネを訪ねていた。

 本来は一定の姿を持たない俺たちだが、それはそれで不便なので「アバター」と呼ばれる、人間を模した仮の姿を今は具現化している。


 俺は黒髪黒目の、どこにでもいそうだけど、よく見れば目に憂いがあり「この人、私がいないとダメになっちゃいそう!」感が強い、タキシードを着た青年の姿。

 ヘレネの姿は、純白のドレスに身を包んだ金髪碧眼の美女だ。


 まあお互い、飽きたらチョイチョイ「アバター」変えるけど、ここ千年くらいはお互いこの姿だ。

 あ、でも前回とドレスのデザインが違うな、胸元がざっくりあいている、眼福眼福。


「ほら、俺たちが人間作ってから、結構経ったじゃん?」


「そうねー」


 ヘレネに言いながら思い出す。

 人間がいない頃は退屈だった。


 コツコツね、世界を創ってたの、そりゃあもうコツコツと。

 おんなじように生まれた奴らとさ、「お前の担当、ここからここね」って区切りながらね、みんなコツコツ創ってた。


 世界創世って、めちゃくちゃ地味な作業なわけよ。

 やることだけは多いし、基本的には自己満足だしね。


 で、たまに「神」同士でお互いの世界を見せあったりして「お前の世界、めっちゃ良い感じだな(ま、俺の世界の方が良い感じだけどな!)」とかやってたんだけど。


 んで、その世界の一つで「人間」っていう、それまでの生き物に比べたら、頭が良い生き物を作った奴がいた。

 人間は見てて結構面白い、というのが神々で話題となり、その結果、神たちの間で「人間創出ブーム」が起きたのだ。


「でさ俺の世界、最近予言とかできるだけ控えてるのよ」


「あー私も、最近やってないね。その辺は大体『偽神』任せだわ」


 俺の言葉に、ヘレネはうんうんと頷く。


 『偽神』ってのは、その世界の表向き信仰されている神だ。


 俺たちは影のフィクサーって感じで、最初の頃と違って表に出ないことも多い。


 人間たちは、最初の頃は文化もないほぼサルだったんだけども、サルはサルなりにいろいろ学んでね。


 俺もいろいろ見込みありそうな奴に「啓示」や「預言」与えたりして、成長の方向性をそれとなく誘導してたのだ。

 で、文化なんかが発展していったわけだけど。


 でも、そんなことしたから俺の存在も人間にバレちゃって。

 やつら、俺のこと「神」って呼び出したのよ。


 これはどの世界でも大体同じ流れで、俺達はお互いの事を「神」って呼び始めた。


 ただ、神たちは直接人間とやり取りするのが面倒になったら『偽神』を設定して放置している。


 この『偽神』自体が、俺たち本当の神を知らないこともザラだ。

 自分を本物と思っているのだ。


 で、俺が創った世界の人間に対しては、親心みたいな気持ちもあったんだけど、あんまり過干渉は良くないな、と。


 甘えちゃうからね。


 それで、世界に変化を与える手段として行ってた「啓示」や「予言」は控えて、ちょっと軌道修正したわけ。


「最近はもっぱら、転生者呼んでるよ」


「あー、私それ結構やるわ、一気に文化レベル上げたい時とかいいよね」


 それで思いついたのが「別の世界」で死んだ奴を、記憶とか残して呼ぶって方法。


 ただ、こっちの都合だけで呼ぶのもなんなんで、ちょっと俺の力分け与えたりして特別扱いしてさ、まぁうちの世界を満喫してもらいつつ、いい影響与えてくれたらラッキー! みたいな感じで。


 で、そういったいわゆる「転生者」を観察するのが、最近のマイブームだったわけだけど。


 目論見通り、彼らは俺の世界にいい意味でも、悪い意味でも、色々な影響を与えてくれた。


 本来、俺の世界に存在しなかった知識や技術の導入、先進的な思想の流布とかしてくれてね。

 俺、自分の世界を「魔法文明と機械文明のハイブリッド」にしたかったから、ちょうど良かった。


 で、俺の世界に来た「転生者」たちには、共通点がある。


 ⋯⋯楽しそう、なのよ。


 なんか、すっごい楽しそうなのよ、転生者たち。


 いや、呼んだ直後は、「死んだのか⋯⋯」って暗くなってたり、「元の世界に戻してください!」とか言うんだけどさ。


 いざ、ちょっと力を分け与えて、転生させたあとは、すっごい楽しそうなの。


 最初はそれなりに戸惑うんだけど、世界に慣れたあとは、もうすっごい転生人生満喫しちゃってさ。


 「我が世の春、謳歌してます!」


 そんなスローガン掲げそうなくらい、はしゃいでるんだよね。


 それ見て思ったわけ。


 俺も、あいつらみたいに知らない世界で、転生人生やってみよ、って。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
その他の作品連載中です!
是非こちらもご一読を!

騙されてSクラス冒険者になった田舎者、めちゃくちゃ適性があった ~農閑期の英雄~

その他の連載作品もよろしくお願いします!

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ