幸せの在処
僕ことシラードは、デュアレナ王国の王都から少し離れた村に住んでいる。
赤ちゃんの時に川に流されて捨てられたらしいけどね、僕は1人で暮らしている訳では無いんだ。
僕を拾ってくれた、チナがいるから。
チナはとてもかっこいいんだ。
賢くて、武術も最強で、見た目もかっこいい。
男だけど、サラサラでちょっと金がかかった茶髪。
顔も整っていて、体も引き締まっているけど着痩せしているんだ。
しかも、すごく優しくて、村のみんなに好かれている。
もちろん女達は、若くて独身の彼を放っているわけがない。
だから村でも有名なんだ。
僕にとってチナは、お父さん……って言ったら若いから、お兄ちゃんみたいな感じかな。
僕はチナに拾われてから、本当に幸せな暮らしを送っている。
チナに勉強や武術も教えて貰いながら、野菜を育ててそれをチナに売ってきてもらう。
チナは野菜を売るために王都の市場へ行くことが多いんだ。
そのあいだ家で一人だけど、家事も僕がしているし、野菜たちの面倒も見なきゃだしね。
寂しいけど、チナが持って帰ってくるお金でいいお肉とか魚とか買えるのが楽しみだから我慢出来るもんね!
「ただいま……お、いい匂いがするな」
「おかえりなさい、チナ!」
ここ一週間、チナは野菜を売りに王都へ行っていたんだ。
やっと帰ってきた!
「シラード、また料理の腕をあげたんじゃないか?」
「へへっ、そうだといいなあ。もうできるから、運ぶの手伝ってよ」
「はいはい」
俺疲れているんだけどな〜、と苦笑しながらも手伝ってくれるんだよね。チナ優しいもん。
「いただきます!」
僕の料理を前に、目をキラキラさせているチナは、子供みたいだ。
「しかしまあ、また男前になったんじゃない?」
「そんなことないと思うけどなあ。強いて言うなら、シラードが作る料理の栄養加減が完璧だからじゃないか?早く老けられればいいんだけど……」
「ええ〜、老けてないチナのがいいな。ただでさえ若いのに何言ってんのさ」
「お前は俺の母親か」
こんなたわいもないことを毎日話しながら過ごす日々が幸せすぎる。
こんなに僕は、恵まれていていいのかな。
ときどきふと思ってしまう。
それくらい、チナと一緒にいることが好きなんだ。