表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

偽りの歴史と記憶の宝珠

無性に完結する作品を書き上げたかったので、4時間で書き上げたので、表記揺れ等が多いかも?


~プロローグ~


少し古びた魔光ランプが、石組の回廊を照らしている。そこを、小さな旗を持った女性を先頭に、人々がぞろぞろと歩いている。女性は、ある扉のない部屋の前で立ち止まった。部屋の前には、立ち入り禁止と書かれた柵とロープが張られて、その少し奥に、図柄と何か説明文とおぼしき文字が書かれた案内板のポールが立っていた。


後ろからぞろぞろ付いてきた人は、部屋の入り口を囲うような位置で止まる。女性は、部屋の入り口に片手をかざして、部屋の中に注目させる。


 「この先には魔王の娘が隠れ潜んでいた玉座があります。今から約800年ほど前、最後の魔王ビルライト7世の愛娘アリシアが、連合軍の大討伐で散った場所もここと伝えられています。そこの壁に見える黒い汚れのような陰は、彼女が討伐隊に切られた際に、付いた呪いの血しぶきだと言われています。200年ほど前までは、アリシアの幽霊が出ていたそうですよ。あっ後ろの人が見えないようですね。入り口が狭いので、交代で見て下さい。前の方は後ろの方と交代してください。」


女性は、部屋の奥に右手を向けて語りつつ、その手の先にある玉座と呼ばれた場所を、のぞき込む人々を手慣れた調子で上手に誘導していく。女性は案内人のようだ。話を聞いているのは凡そ20人ぐらいで、彼女が示す手の先を真剣に見ていた。中にはふむふむと頷くものも、幽霊と聞いてブルッと震える者と様々だ。案内人は、客全体の姿をぐるりと見渡した後、さらに話を続ける。


「魔王の娘、アリシアは当時10才という幼さでした。ミルバ連合軍の再三の武装解除勧告にも従わず、長距離毒魔法を用いて4万の兵に毒を与え三日三晩悶え苦しみ殺したといった逸話もあるほど恐ろしい魔族の娘でした。また、自国の民を前線で奴隷のように扱い、その民がいるにも関わらず彼女は毒魔法を容赦なく打ち込んだと言い伝えられております。アリシアの画は入場時にお渡しているパンフレット4頁目(ページ)をご覧ください。」


客の多くは、手に持ったパンフレットに描かれた画【口角を不気味に押し上げ、三角につり上がった目、そして角を生やしたアリシアの画】を見ながら、渋面をしていた。


「尚、この戦いで、生き残った第三北方司令スティッシュ・パルメロは、アリシアのことを次にように伝えています。『その娘っ子の容姿は美しく、まるで幼子の持つ人形のように華奢で童顔なその姿に誰もが油断していた。奴は幼くも魔王の娘そのものであった』と。」


女性は、一呼吸置いてから、続きを語る。


「入り口付近で崩れていた外壁にお気づきになられた方もいらっしゃるでしょう。あれは、アリシアの極大魔道の余波によって破壊されたとも言われます。それほどに恐ろしい力と残虐性を持った彼女と、その親衛隊はここでパルメロの手によってその生涯を終えたのです。ここは彼女が最後に隠れていた王侯の玉座と呼ばれており、下級兵の宿舎に見立てた砦の隠し部屋だったようです。隣の部屋と扉をつけてこの正面の入り口は繋いでいたようで、奥の扉を日頃の出入りに使い、こちらの正面扉は元々高度な魔術で隠蔽されていたとされます。その証拠に、ここに当時魔道と呼ばれていた魔法結界の陣痕が残っています。」


と、案内人の女性は部屋の入り口付近にある染みのような跡を手で指し示す。


「この扉が開放されたのは、兵を盾に逃げだそうとした際に、彼女が魔法を解いたからだと伝えられています。」


彼女は説明を終えると、質問はありますか?と尋ねると、1人の黒縁メガネを掛けた初老の男性が手を上げた。


「聖女と差し違えて双方が亡くなったというのは?」


案内人の女性は、うんと頷き、少し微笑んでこう言った。


「それは、よくある質問ですが、信憑性ある当時の史実書、遠征記録などには、そういった事実がないのです。だから、聖女の話は脚色されていると考えられています。もちろん、昨今の汚職事件や有耶無耶に終わる政治のように、事実とは異なることが起きたとも考えられます。これから研究が進み、そういった資料が見つかってくれると、聖女の町、トリニカ市民としては嬉しいので皆さまの中でそういう史実を見つけた方がいらっしゃれば是非、トリニカ市歴史文化課メッサリヨ調査室までご一報を。」


と彼女がペロリと冗談交じりに舌を出して言うと、人々はクスクスと笑みを零した。


「他に質問はありますか?」


誰からも質問が出ない事を確認したところで、


「それでは次はメッサリヨの廃墟が見られる砦の頂上にまいりましょう。」


と先へと進んでいった。

 案内人の女性の指示に従って、人々は石造りの回廊をぞろぞろと歩き出した。人々の意識は今し方まで案内人の女性が向けていた寒々しくも煤けた玉座と紹介された部屋から、暖かな外光のある回廊の先へと向かっていった。それと共に玉座間はシンと静まりかえる。


-嘆き-


 こんな狂った歴史案内が始まって40年ほどが過ぎた。ここにある椅子が言葉を喋る事が出来れば、嘘であると発狂していたかもしれない。


 アリシアは、案内人が言ったような、不義理で醜悪な魔族でも魔王の血筋でも無かった。歴とした人であり幼く可憐な少女だった。彼女は、神童と呼ばれるほどの知略を持ち、魔道力を持っていたが、民に優しく、仕事熱心で、決して争いなどしなかった。そもそも、彼女の魔道は、救い守るためのものだったのだから……。

 隠し部屋の玉座と言い放ったこの狭い部屋も、玉座ではなく、彼女の小さな私室に過ぎず、民と同じ生活を望んだ末、下級騎士部屋を改装した部屋だった。隣の騎士部屋と繋がっていたのは、彼女の希望では無く、周りが求めた結果、彼女が生まれた時から共にいた侍従の部屋を隣に置いたからだ。


この部屋は、当時、花が飾られ明るい部屋であった。姫でありながら、貴族とではなく、市井で仲良くなった友を招いたことも何度もあった。この彼女独自で編み出した保存魔法の掛けられた椅子も、また、彼女のお気に入りであった。彼女は、王都出立の時に老齢な職人の友人からこれを貰い受けた。この質素な中にも少しばかり宝石を使い豪奢さ兼ねた椅子を大事に使っていた。


この砦にはいくつかの隠し部屋があったが、1つの場所を除き全ての隠し扉は開かれていた。破られた扉の一つはもちろんこの開け開かれた正面の扉などではない。


魔王の娘と呼ばれたアリシアの話は多くの嘘で固められていたが、誰もその事実を知らなかったのである。


きっと最後の隠し扉が見つかれば、彼女と彼女の父の名誉は長い歴史を経て回復することだろう。椅子の下に眠っているそれを誰かが見つけ出してくれさえすればきっと……


 この椅子の下にあったのは彼女の宝箱(おもちゃばこ)だ。中には、彼女が大事にしていた母から貰った形見のクシと、この砦で親友だった平民の少女2人から貰った、姫には相応しいとは言えぬ貧相な押し花の飾りや、保存魔法が大事に掛けられた草花のネックレス、ある少年から貰ったつるつると滑らかで綺麗な石ころ、僅かな銭の入った古めかしい巾着財布などが収まっていた。それは到底、魔王の娘、姫が喜ぶとは思えぬものばかりだったが、一つだけそれとは異なるものがあった。


 宝箱の底には、異彩を放つガラス玉のような半透明で青、緑、黄色と時より淡く光る球体があった。


 それは失われた秘宝、記憶の宝珠である。持ち手の記憶と心を記録するこの宝珠は、王家の秘宝であり、彼女がこの砦へと旅立つ前夜に、父から彼女へと受け継がれたものであった。

 この主を失った宝珠が見つかった時、世の中はきっとミルバという国や連合と、魔王の国と呼ばれた国のどちらが、魔王の国であったかを知るだろう。


砦の主を愛した砦の遺品達は、その日がくるのを今も待ち続けていた。

ほうじゅちゃん(以下ほ):「本日から始まりました。新作、魔王の娘と宝珠の記憶。」

ありしあ(以下あ):「……」

ほ:「どうしたの、元気ないね。アリちゃん。」

あ:「いや、私まだ出てきてないし、この作者殆ど途中で投げ出してるし……」

ほ:「あっ、気づいちゃいました?」

あ:「うん。」

ほ:「今回は、だいじょうぶVだよ。」

あ:「何でよ。」

ほ:「だって完結して投稿予約済みだぞー。エッヘンと作者さんどや顔してたから。」

あ:「そうなの?」

ほ:「そうだよ。ほら↓」


投稿予定は次のようになります。


本日04/14 18時次話(2話目)投稿

04/20 17時に3話目

04/21 17時に4話目(短目)

04/27 17時で完結の5話構成。


あ:「本当だ。やったー。私本編にでれる~。主役だよしゅ・や・く。」

ほ:「よかったね。」

あ:「ところでこの作品どんな作品なの?チートな少女の役って聞いたけど。」

ほ:「アリシアちゃんが、生まれてから魔女の娘として殺されるまでの作品。」

あ:「……」

ほ:「次回、王都の記憶は18時投稿。お楽しみに!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ