4話 与えられた権力
4話更新です。
双牙がこの学校に来て早一週間が過ぎた。双牙も学園生活にも慣れてきた。生徒に嫌味な問題を出しそれを生徒が解こうともがく姿を見ることを楽しみとしていた男性教師を、持ち前の頭脳で完璧に論破し同級生たちの信頼を得たり、それを聞いて脅えていた新任教師を温かく励まし先生方の信頼を得たり、たまに暴走する姉を見事鎮圧し上級生たちから信頼を得たりして着々と自分の地位を固めていった。
「本当に双牙ってスペック高いよね。」
「そうね。論争で先生には勝つし。他人にはやさしいし。スポーツ万能だし。しかもルックス、性格、家柄全てパーフェクト。天から才能をいくつ貰えば気が済むのよあんたは。」
相槌を打ったみぞれは双牙のいいところを上げてく。騒ぎになったあの日以来、双牙はみぞれと意気投合し名前で呼び合うようになっていた。
「あははははは・・・・・。」
昼休み、いつもの四人で昼食を取っていた。
「その割には告白とかされてないよね。なんでだろ?」
当然されていてもおかしくはない状況でそういった話を一切聞かないことを疑問に思う海斗。それにはみぞれが答えた。
「ファンクラブが規制してるからよ。」
「ファンクラブ?」
何のことかわからない様子の海斗に真衣が補足説明をする。
「蓮花さんを会長として最近できた双牙君のファンクラブです。現在学校の女子全体の6割が加盟しています。」
「なんだってそんな物作ったの?蓮花先輩は。」
「数日前、俺の人気が高まってると聞いた姉さんは怒り狂って暴れ出したんだ。何とか取り押さえたんだが一向に怒りが収まらんのでどうしようかと悩んでたら、幸さんが言ったんだ。ファンクラブでもつくって統括したらどうだって。それでこんなものができたんだ。」
心底嫌そうに双牙はできた経緯を説明した。
「でも何でそこまで蓮花先輩は怒ったんだろ?弟の幸せを考えれば別にいいと思うんだけどな。」
「姉さんはああ見えて極度のブラコンだ。人前ではやらんが普段はよく俺の膝の上に座っている。姉さんいわくすわり心地がいいらしい。」
おもいっきりため息をつく双牙。それに深く同情する3人だった。
「部活の方はどうなんだ?双牙ほどの身体能力があれば部活の連中がほっとかないだろ。」
「そういえば聞かないわね。けっこう一緒にいるけど勧誘されてるとこ見たことないし。」
「どうなんですか?」
「それにも姉さんや幸さんが関わってるようなんだ。二人で何企んでんだか。」
急に廊下が騒がしくなり始めるそれがだんだん近づいてきているようだ。
「なに?騒がしいわね。」
気づいたみぞれが廊下の方を見る。すると、そこにはさっきから話の中に出てきていた二人が立っていた。
「双牙。噂をすれば影よ。」
「はぁ?」
訳が分からず廊下の方を見るとそこには蓮花と幸人が立っていた。
「やっほ、双くん♪」
「やあ、双牙君。」
「姉さん、幸さん。こんなとこで何してんの?何か用?」
「うん。ちょっとね。海斗君、真衣さんこんにちは。」
「幸さん、蓮花先輩こんにちは。」
「蓮花さん、幸人先輩こんにちは。」
「こんにちは。海斗くん、真衣ちゃん。」
軽く挨拶を交わす四人。
「あれ?そっちの子は初めて見る顔だね。」
話には聞いていたが憧れの先輩たちが目の前にいきなり現れ固まっていたみぞれだったが、幸人に声をかけられあわてて立ち上がった。
「私は双牙君たちと同じクラスの神崎みぞれといいます!先輩たちのことは話でよく聞いていました。よろしくお願いします。」
深々と頭を下げるみぞれに微笑みながら手を差し出す幸人。
「そんなに硬くならないで。僕は川崎幸人。よろしくね、みぞれさん。」
「よ、よろしくお願いします!!」
差し出された手をみぞれはしっかりと握った。その表情はとても幸せそうで、周囲の女子から殺気立った視線を浴びまくっているがまったく気にならないようだった。
「それで、一体何んなんだ、その用事って?」
少し脱線ぎみの会話をここで元に戻す双牙。
「あのね、この間双くんが部活に勧誘されない理由話したじゃない。」
「ああ、姉さんと幸さんが押さえ込んでくれてるって話だろ。あれがどうかしたの?」
「いや〜、あれから反発の声が酷くてね。早くも限界が来そうなんだよね。」
僕らも頑張ってるんだけどね、といいながら苦笑いを浮かべる幸人。
「それにね、要望は部活に入ってくれってゆうものだけじゃないのよ。」
「どうゆうことですか?」
てっきり部活の勧誘だけだと思っていた真衣が尋ねる。
「例えば各種運動部からの助っ人要請とか、演劇部や放送部、映画研究会なんかからの出演依頼とか、各武術部からの指導してほしいって要請とか、あとは美術部やファッション部のモデルなんかもあったわね。ほかにもいろいろきてるわよ。」
大きなため息をつきながらガックリと肩を落とす双牙。同情しつつもかける言葉が見つからず苦笑いを浮かべる。
「そこで僕達は新しい生徒会直轄の委員会を作り双牙君をそこに入れることで君を保護しようと考えてんだ。」
「そんでその委員会ってのは?」
「その名も人事委員会よ!!」
どうよとばかりに胸を張って宣言する蓮花。それに見入るクラスの男子。その男子に軽蔑するクラスの女子。双牙はあっさりスルー。スルーされていじける蓮花。慰める真衣と海斗。
「一体何をする委員なんですか?」
興味津々にみぞれが尋ねる。答えたのは幸人だった。
「まずは、各部に双牙君に何を手伝ってほしいか月の初めに生徒会に要望書を提出してもらう。それを生徒会内で審議してそれを通ったものを双牙君に渡す。あとは双牙君が自分の予定に合わせてできるものを選択してもらい、後はそれを各部に知らせて双牙君にはそのプランどうりにその部に参加してもらうというわけさ。」
その横では双牙も加わって3人で蓮花をなだめている。しかし一向に収まらず今にも泣きそうだ。
「でもそれじゃあ双牙に負担がかかりすぎるのでは?」
蓮花の目に涙がたまり始めもう駄目かと思ったその時、双牙が蓮花の耳元で何かをささやいた。
「そこなんだよね。どうしようか?お、蓮花。機嫌直ったかい?」
そこには満面の笑みを浮かべる蓮花と疲れ果てた双牙が立っていた。
「もちろんよ♪双牙、今日放課後臨時の部長会議を開いてこのこと報告するから会議室にいらっしゃい。3人も興味があれば見にいらっしゃい。」
「姉さん、幸さん。ちょっと。」
双牙は二人に手招きをすると何かを耳打ちし始めた。
「どう、できる?」
「できるにはできるけど。本気かい?」
「ああ。もともと近いうちにこうするつもりだったんだ。そのために仕事もほとんどさせてないんだし、世話になってるからね。あいつにも学園生活をさせてやりたいのさ。」
「そうゆうことなら任せなさい。話はこちらから通しておくわ。手続きもしとく?」
「任せるよ。あいつには俺から伝えておく。」
「了解。じゃ双くん、約束忘れないでね♪」
「む。わかってるよ・・・・・。」
じゃあね〜と手を振りながら蓮花たちは帰っていった。
「双牙君。約束って?」
「真衣さん。そのことには触れんでくれ・・・・。」
「じゃあさ、あいつって誰?」
「それは放課後になってからのお楽しみだ。」
そう言って双牙はどこかへ電話をかけ始めるのだった。
―――――――――――――――――――――――――ー――――――
放課後4人は約束どうり会議室へとやってきていた。各部の代表者たちも全て集まり双牙の人事委員への就任とその趣旨が説明された。多少の不満はあったものの全員が納得したようだった。
「そしてこの人事委員会にはもうひとつ大きな役割があります。」
双牙も聞かされてなかったことをいきなり蓮花が言い出したので、あわてて双牙が立ち上がり口を挟む。
「どうゆうことだ生徒会長。俺は聞かされてないが?」
「わかってる。今から説明するからとりあえず座って。」
双牙が席に着くのを確認し蓮花は話し始めた。
「今回の要望書の一割を実はある依頼が占めていたの。それはある不良グループの排除よ。」
「詳しく説明を頼む。」
「いくら注意しててもどこかで道を外れる人たちがいるわ。それはこの学校とて例外ではない。はじめは授業をサボる程度だったの。でもここ数年力を着けだして、ついに他の生徒や部活に対して嫌がらせをし始めたの。はじめは注意だけで済ましてたんだけど最近エスカレートし始めている。このままではいつ事件に発展するかわからないし、何より他の生徒達に危害が及ぶ可能性がある。」
ここで一度話を切る蓮花。その目つきは鋭いものへと変わっていく。
「そして昨日、ついに一人の男子生徒が彼らによって暴行を受けたわ。幸い近くにいた柔道部の部員たちによって救出され大事には至らなかったけれど。これ以上好きにさせるわけにはいかない。私はこのまま退学処分で済ませるつもりはない。でも生徒会長という立場上あまり過激なことはできないのよ。」
蓮花は双牙の目を見つめる。その表情はいまだかつて誰も見たことないほどに真剣な表情だった。
「しかし、双牙。あなたにならそれができる。川上家の肩書きと力、この高校の警備顧問としての地位と権限。これらを持つあなたにしかできないことです。この人事委員には一時的な人員補強と不穏分子の切捨ての二つの人事を執り行うという意味でこう名づけました。どうです?引き受けてくれますか?」
双牙は無言のまま蓮花の座る席の前に右拳と右膝を床につき、立てた左膝に左手を置き頭を下げる。
「それで多くの人が救われるのなら、それができるのが俺だけであるのならば、この力存分に振るおう。それで皆が救われるなら俺は断罪の刃となろう。」
「私、川上蓮花は、生徒会長川上蓮花、副会長川崎幸人、校長平山総司、理事長、川崎重国の連名により川上双牙に警備特例第一条の任意執行権を与え、これの責任を連名者及び執行者で負うことをここに宣言します。権限を深く理解し当校の治安を守り抜きその発展に力を尽くしなさい。」
「私、川上双牙は今このときより人事委員を拝命し、権限を得ると共にその責任を負うことを誓います。」
双牙はすっと立ち上がると、蓮花に微笑みかけた。
「姉さん、あの話はまた今度だ。先にそいつらをかたずける。」
「よろしくね。それと、『断罪』の使用を許可します。」
一瞬双牙が目を見開く。しかしすぐさまニヤッと笑う。
「ただじゃすまなくなるよ。」
「忘れたの?私は身勝手な理由で人に危害を加える奴らが一番嫌いなのよ。思う存分叩きのめしなさい!」
「了解!!」
そのまま会議室を出て行く双牙。その体からは凄まじい覇気があふれ出していた。
「会長。警備特例って何なんですか?」
部長の一人が蓮花に尋ねる。皆同じことが聞きたいようで蓮花の答えを待っている。
「警備特例第一条とは川上グループ警備部門が依頼者の任意で結ばれる契約の一つよ。警備担当範囲内においてその誓約に定められた以上の問題を起こしたものに対して断罪権限を警備現場担当最高責任者に与えるというものです。そしてあの子はこの九十九高校警備主任。つまり双牙にその権限が与えられるとゆうことになるわけです。」
「じゃあ断罪ってゆうのは?」
「断罪とは、我が家に伝わる刀の一つよ。刃引き、つまり刀の形状をして入るけど実際に刃はないから切ることはできないわ。峰打ち専用の刀ね。特徴といえば特殊な黒い金属を使っていて少し通常より重いことかしら。」
一息おいて部長たちを見回しながら言った。
「双牙は今日中にかたをつける気です。各部今日部活動の中止を。今すぐ各部員にこのことを伝え速やかに下校させてください。」
「はい!」X全部長
各部長は急いで部員たちのもとへと向かった。
「蓮花先輩。」
「あなたたちもすぐ下校しなさい。私たちは先生方と生徒たちを誘導しなければならないから。」
海斗たちにそう告げると幸人と足早に会議室を後にした。
―――――――――――――――――――――――――――――
校舎の隅。そこにはこの学校を建設するときに立てたプレハブが用具置き場にになっていた。
「都合のいいものが残っているものですね。まるで溜まり場にしてくださいといってるようなものです。」
「そう言うな。おかげで一網打尽にできる。全員中にいることは確認できているんだろ。」
「はい。人員の配置もすでに終了。生徒の避難もほぼ完了しております。」
「ん?ほぼってどういうことだ?」
「海斗様方が見届けると生徒会室に残っていらっしゃるそうです。」
「物好きだなあいつらも。それよりすまなかった。急にいろいろと頼んじまって。」
「それが仕事です。それに双牙様はできないことをおっしゃいませんから。無茶を言っても無理は言わない。信頼されている証拠と認識しております。」
「そう言ってもらえると助かるよ。」
二人がいるのは話の中に出てきたプレハブの前だ。すでにプレハブの周りは川上家直属の特殊部隊が包囲している。
「それでいかがしますか?部隊に鎮圧を命じますか?」
「いや、俺がやる。それが俺にできることだから。んじゃ行ってくる。逃げたやつらの確保よろしく。」
双牙は刀に手をかけながらゆっくりとプレハブへ向かっていった。
「もうそろそろやばくないか?あれ見つかっちまったら無事じゃすまねえって。」
「びびんなよ!どうってこと無いって。」
「そうそう。金持ちなんざ人任せで自分じゃ何もできゃしないんだよ。」
笑い声を上げる男達。今まで注意のみで済まされ完全に侮っていた。彼らはまだ知らない。その侮りが自分たちに恐怖と絶望をもたらすことに。
ドオォォォーン!!
「な、なんだ!?」
「いいい一体何が起こった!?」
「はじめまして。断罪に参りました。」
「て、てめえ!!なにしやがる!!」
慌てふためく不良たち。そんな中一人が双牙に気がつく。
「ん?おいおい、誰かと思えば噂のお坊ちゃんじゃねえの。」
「なんだよ。脅かすなっての。」
「何の用かな?お供の人たちに見捨てられましたか〜〜?」
完全に双牙を見下しなめてかかっている。笑い続ける不良たちの前から双牙の姿が消えた。
「がぁっ!!」
自分たちの後ろから突然うめき声が聞こえる。振り向くと倒れる仲間と黒い刀を握り殺気を放つ双牙がいた。
「もう一度だけ言ってやる。俺はお前たちを断罪に来た。今すぐ降伏しろ。今なら見逃してやらんでもない。」
「ざ、ざけんじゃねえ!!」
「世間知らずのボンボンが!」
一斉に双牙に飛び掛る不良たち。
「警告はしたぞ・・・・・・。」
不良たちは全部で13人。双牙は迷うことなく迎え撃つ。動きはバラバラで個人個人が好き勝手に攻撃している。まずはじめに手前にいた3人を刀で薙ぎ払う。急所を的確に捉えた一撃、しかもき気絶をさせていない。
「うわぁぁぁぁぁあ!!」
「うぅぅぅぅ・・・・。」
「いてぇ。いてぇよ・・・。」
悲鳴や呻き声をあげ地面にうずくまる仲間を見て怯む不良たち。その隙を突いてさらに一人鳩尾に一撃をいれる。それで我に返った不良二人が前後から同時に挟撃するが、正面にいる一人の腕をつかみ一本背負いの要領で後ろにいたもう一人に投げつける。さらにそのままの流れで地面に両手を突き、それを軸に蹴りをいれ二人を吹き飛ばす。
「な、何なんだよこいつは・・・・・。」
そん間わずか1分。たったそれだけの時間に7人。つまり半分以上の仲間をやられ残った不良たちは恐怖にすくみあがっている。逃げようにも唯一の入り口は双牙の後ろにある。
「始めに警告したぞ。降伏しろと。」
「う、うるせえ!!てめえみたいに裕福な人間に俺らのことがわかるか!!」
「クズが。わかりゃしねえよ。途中であきらめて努力するのをやめて、それを他人に当たって憂さ晴らししてるような愚か者のことなんてな!!」
双牙に怒鳴られ怯む不良たち。
「お前たちがどうなろうと俺は知らん。でもな周りに迷惑と恐怖を与えたことは許さん。その断罪は受けてもらう。地獄の苦しみの中で後悔するがいい。」
双牙は再び刀を構えると不良たちに切り込んだ。
―――――――――――――――――――――――――――――
「静かになりましたね。」
「部隊長、どうやら終わったようです。中の人間を運び出してください。あとは手はずどうりにお願いします。」
「了解。」
ミリィの視線の先には刀を納めながらこちらに歩いてくる双牙の姿があった。
「お疲れ様です。」
「ん。姉さんに報告に行く。ここを頼めるか?」
「お任せを。」
そのまま校舎へと歩いていく双牙。その背中はどこか寂しくつらそうだった。
−本当は人一倍戦うことが嫌いなのに。あなたはいつも人のためにその重荷を背負うのですね。少しでもその重荷を私に背負わせてください。そのために私はここにいるのだから。−
心の中で語りかけながらその背中を見送るミリィだった。
戦闘描写って難しいですね。うまくかける方々を心より尊敬する今日この頃です。




