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コンビニ居酒屋

作者: 海月 海斗

『今日のツマミは何にする?』

『俺はやっぱり麻婆豆腐かな』

『じゃあ発泡酒でいいか、ビールだと高いし』


『また振られた〜!先輩に対して本気だったのに!』

『もぅ、今年に入って何回目の失恋よ』

『悲しいからやけ酒に付き合ってよ〜!』

『あぁ〜もう、こうなると本当に手がつけられないんだから。じゃあ安いし鏡月とグレープフルーツジュースで割るか。あとは揚げたてのコロッケあるからこれにしよ』


 今日もお店は喧騒渦巻く大盛況である。失恋話にちょい飲み、中には自分の部屋で一人夕食を食べるのが味気ないから寄った人もいる。若い男女だけでなく、お年寄りもいる居酒屋風景。といってもお店の大将らしき人も、注文を聞きに来るウエイターもいない。

 それもそのはずである。ここはコンビニの奥に作られた一室。最近出来たコンビニ居酒屋なのである。夕方の前にはどうやらコンビニ喫茶になったりするとか。

 利用する人は商品棚から商品を納入してこの部屋に来る。宅飲みの場所が小さいとか、一人で食事するより賑やかな場所を好む人、あるいは仕事や学校帰りの学生が利用する居酒屋である。

 何でも近年一人での食事が増えたのを期に作ったとか。

 そんなわけで、今日も今日とで色んな人が入店している。


『はぁ〜何で私って男運ないのかな〜』

『いや、それは単に好きになる相手がいつも誰かと付き合ってる人を選ぶからじゃない?』

『だってぇ〜イケメンってみんな彼女いるんだもん!私は悪くない〜!』

『いやいや、だからって明らかにお付き合いしてる人狙いすぎだから』


 お店の備え付けのグラスを片手に鏡月を惜しげもなく注ぎ、直ぐに飲み干す女性を尻目に、友人はチビチビと口に運ぶ。


『世の中みんなリア充かって〜の!』

『あぁ〜はいはい、またくだまき出した。もぉ〜今日はレポートあるんだから勘弁してよ』

『レポートとあたしの恋愛と、どっちが大切だっつ〜のよぉ!』

『あぁ〜もうこうなったら朝までお付き合いしますよ』

『オツマミたりなぁ〜い!』

『明日食べすぎて後悔してもしらないんだか。じゃあ何かお惣菜でも物色してくるから待っててよね』


 時計の針が10を示す時間と言うこともあり、レジは混むことなく会計を済ませ。おでんお片手にパタパタと戻る。


『…もぉ〜勝手に一人でくだ巻いて、また一人で寝てるんだから!』

『恋愛なんてぇ〜男なんてぇ〜……』

『ほら!起きろ!帰るわよ!』

『火力…水力…女子力……ぐぅ〜』

『寝ぼけてないでいいから起きてよ!』

『このまま寝ちゃうと風邪ひきますので』


 

 慣れた動作でブランケットをかけてゆく店員。


『あ、ありがとうございます』

『いえ、とんだ災難ですね』

『まぁ、もう慣れてますから』


 苦笑しかできないが、こうなったら起きるまで放っておくしかない。熱々のおでんを夜食にレポートを広げた。

 気が付くと客は自分たち二人になっており、居酒屋ブース閉店の時間となっていた。


『いけない、いつの間にかこんな時間に。ほら、いい加減起きて!』

『ん?何であんたがあたしの部屋にいるのよ〜』

『寝ぼけてないで!帰るわよ!』

『喉乾いた〜あとお腹空いた〜』

『本当に甘えん坊になるんだから。オニギリとお茶で勘弁してよ〜』

『あの〜お客様、閉店時間ですが』

『あっ、すみません。今片付けて出ますので』

『オニギリ〜!お茶〜!!』


 そして最後の客は後片付けをし。オニギリとお茶を買って帰っていった。


『今日もいろんなお客さんが来たな〜。さて、僕は休憩時間としますかね』


 タバコの紫煙を肺に含み今日の労を労いながらコーヒーをすすった。コンビニ居酒屋には明日もいろんな客が来るだろう。

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