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スクールライフCREATORs  作者: 石原レノ
蒼葉と翠葉の依頼
7/24

同じ苦しみを知っているから

「月見さん今日も保健室じゃないかな?」

あれから二日が経った。蒼葉の言葉を信じると今日は学校に来れるという事らしいが。

この分だと保健室にも居ないだろう。

一昨日あんな事が起きたのだ、精神的にも限界を迎えていると思う。

「、、、」

案の定保健室には誰も居なかった。

ため息をこぼし、授業のため教室に戻ろうとした所で声がかかる。

「ねぇ、、」

誰も居ないはずの保健室から不意に声がかかり、蒼葉かと思い振り向くと、そこには蒼葉とは別の見知らぬ少女がいた。

白髪黄眼の少女は、僕の方をじっと見つめている。

「えっと、、、僕?」

「そう、、、君」

ゆっくりと歩み寄ってきた少女は僕の目の前て止まる。無表情さが彼女の性格を表しているようだった。

「君は、、、転校生?」

「そう、、だけど」

「君は、、、高等部2年?」

「、、、うん」

「そっか、、、私と同じだね、、、じゃ」

「え?」

僕の間抜けな反応を意に返さず、少女は無表情のまま僕の横を通り、歩いて行った。今の会話が何なのか僕には分からないままだったが、とりあえずあの少女が同じ学年とだけは分かった、、、逆に分かった事はそれだけだった。


「はぁ、、」

放課後、紫音と神巫女の依頼の件で頭を悩ませていた。あれから蒼葉とは会っていない。会えないからだ。あんな事を言って泣かせてしまった。抑えきれない後悔で今にも依頼から逃げそうである。

「何であんな事言っちゃったかなぁ―」

「失礼します」

声掛けと同時に開かれた扉。そこから姿を現したのは翠葉だった。綺麗なセミロングは少し雫を帯びていた。

「翠葉ちゃん、、どうかしたの?」

翠葉は僕の答えを聞くことなく不機嫌そうな顔をして近づいてきた。

「先輩、お姉ちゃんと何かありましたか?」

「うっ、、」

いきなりピンポイントをつかれ、言葉を失ってしまう。その言動を見て察したのか、翠葉はため息をこぼしていた。

「はぁ、、、やっぱりあったんですね。それで何があったんですか?」

「それは、、、」

言えない。この状況で蒼葉と何かあったか全て話すと、翠葉にも気まずい思いをさせてしまう。僕は意識的に口をつぐんだ。

「言えない、、ですか」

再度翠葉は察したようだ。そしてまたため息をこぼす。つくづく僕は都合の良い男だと思う。

「お姉ちゃんと話してくれませんか?」

「え?」

唐突の提案に思わず疑問を浮かべてしまう。それに、今の僕に蒼葉と話す資格があるのだろうか、また傷つけてしまうかもしれない。そんな事が頭を過ぎる。

「お姉ちゃん最近元気ないんですよ。それも先輩にあったあとぐらいから、、、だから先輩なら何か知っていると思ったんですけど、、、案の定でしたね」

翠葉の言葉に僕は何も返さずにいた。いや、返せなかった。幸いと言っていいのか、僕と蒼葉が言い合ったことは知らないようだ。

「、、、、」

相変わらず何も返さない僕に翠葉はより近くに寄ってきてこう言った。

「お姉ちゃん。もう学校行かないかも知れませんよ?」

「え?」

翠葉の言った衝撃的な言葉に、僕は次の言葉が出てこない。つまり、僕との言い争いがきっかけで蒼葉は学校に来なくなる、、、翠葉の言葉にはそんな意味があったような気がした。

激しい罪悪感と共に、僕の体はいつの間にか走り出していた、、、、蒼葉の元へと―

「はぁ、、、先輩も割と強情なんだなぁ。まぁ私も気持ちは分かるけど、、、、久しぶりに部活行こ、、今日は先輩がお姉ちゃんに会いに行くみたいだし」

僕が走り去った後の支援部部室。翠葉はまた一つ無理をした。不敵な笑みを浮かべながら、、、。】


会って何を言えばいい?

どんな感じで接すればいい?

どんな顔をすればいい?

病院へと走り抜ける道中、そんな事が繰り返し頭を過ぎった。あの時分かっていながらも言った言葉、、、あの日からずっと後悔をしていた。気持ちは僕が分かるはずなのに、何故あんなことを言ってしまったのか今でも分からない。そんなもどかしい気持ちはあの日と同じものだ。

蒼葉に謝ろう。謝って許してくれるかは分からない。でも僕は謝る義務があるのだ。そう心に言い聞かせた。

「はぁ、、、はぁ、、はぁ、、、」

病院の前に着く頃には冬場とは思えない程体が暑かった。住宅街の中に建つ病院から学校までは信号が一つもないのである。

何も考えないまま蒼葉の居る病院へと歩み進む。

病室に着く頃には暑かった心身は丁度いいものに。鼓動だけが早く脈打っていた。

どんな顔をすればいい?

こんな事が再度頭を過ぎる。

恐る恐る取っ手に手を伸ばした

「、、、さん」

「っ!?」

俺の手によって少し開かれた扉。その隙間からは蒼葉がうずくまって泣いている姿が見えた。

「お母さん、、、」

激しい罪悪感と共に取っ手から手が離れた。

僕のせいだ。

もう蒼葉には何も言えない。近づくことさえ阻まれているような気がしたからだ。

「くそっ、、、」

勇気が出ない。今声をかけて大丈夫なのか。そう考えるとあと1歩の勇気が出ない。

このまま何も出来ずに終わってしまう。このまま勇気が出ずに、僕の足は振り返ってしまう。そんなことを考えていた最中―

「入ってきなよ。瞬君、、、」

先程まで泣いていた蒼葉の口からそんな言葉が放たれた。このまま帰るわけにもいかない僕は気まずいままその場に流された。

「、、、、」

「、、、、」

予想していた通りの重い空気。二人とも無言のまま過ごした数分間。

「あのさ」

「あのっ」

やっとの思いで放った言葉も、重なることによりかき消される。そして気まずい空気へと逆戻り。

「その、、、何で僕って分かったの?」

今する質問はそれではないと言いながら気づいていた。が、それを蒼葉は表情を変えずに返す。

「バレバレだよ。じっと見てたし」

「そ、そっか、、、」

「今日はどうしたの?」

「それはその、、、」

ここで言葉が詰まってしまう。つくづくダメな自分だ。

そんな僕を見て、蒼葉は笑みを浮かべ先に口を開いた。

「私、小さい頃からお母さんっ子だったんだ。朝から晩までずーっとべったりで、お母さんもそんな私に呆れることもなくて、、。だからお母さんが亡くなった時、本当は寂しかったんだ、、、自分でもどうしようもないくらい。だから強くなろうって決めたんだ、、。瞬君には嘘を言っちゃった、、。ごめんね」

強くなろう、、。僕はこの言葉に聞き覚えがある。僕もむかし体験した時にそう決断した事があるからだ。

「僕さ、、、お姉ちゃんが居たんだ、、」

唐突に言った僕の言葉を、蒼葉は黙って聞いていた。

「僕がまだ中学二年の頃。2つ上、高校一年生のお姉ちゃんが居たんだ。年が近かったせいか僕はお姉ちゃんが苦手だった。距離をとって食事も別々。お姉ちゃんは幾度も僕と仲良くしようと接してきたけれど、僕はそれを拒否し続けた、、、、夏だったかな。お姉ちゃん交通事故で亡くなったんだ、、、その時の僕は強がってた。『寂しくなんかない』『人はいつか居なくなるもの』そんな事をずーっと考えてた。でも違ったんだ、、、」

僕の目尻には涙が溢れていた。悲しく思い出したくない記憶。自分に素直になれなくて、『嫌いと勘違いし続けてきた後悔』を語ることはとても辛かった。

蒼葉はそんな僕の話を黙って聞いている。

「僕はお姉ちゃんが大好きだって、、仕方ないなんてこれっぽっちも思ってなかったんだって、、そう思ったら涙が出てきたよ、、そしてその時僕は決めたんだ―」

目尻に浮かべた涙を拭い。満面の笑みで蒼葉に向き直りこう言った。

「強く生きよう。お姉ちゃんの分までって」

僕の一言に蒼葉は「そっか、、」と笑みを浮かべていた。辛いものの先には幸福がある。それを実感した瞬間だった。互いに似た環境に置かれた存在で、互いに同じ思いをしてきた。蒼葉の表情はいつもの優しく、可憐な女の子に戻っていた。

「瞬君ごめん。私何も分からなくて、、本当にどうしたらいいか分からなかったの、、だから心にもない事を言って自分の心を誤魔化そうとしてた、、本当にごめんなさい」

「僕の方こそごめん。もっと良い方法があったのに、つい感情的になって月見さんを傷つけちゃって、、、本当にごめん」

「瞬君は優しいんだね、、、だから、、、」

「今なんて、、っ!」

終盤の声があまり聞こえないため、聞き直そうと問いかけたところで僕の言葉は止まった。

蒼葉が僕に抱きついてきたのである。女の子の匂いが鼻腔をくすぐる。

「つ、月見さん!?な、何してんの?」

「ごめんね。でもあとちょっと待って、、あと、、少しだけだから、、、」

そう言って弱々しくも力を込めてくる。僕は挙動不審になり、硬直してしまった。

「え、あ、うん、、、分かった」

「あと、、、」

軽く精神統一をしようとしたところで再度蒼葉から声がかかる。

「な、ナニカナ?」

片言になりながら青派の方を見下ろすと、蒼葉が顔を赤く染めながら上目遣いでこちらを見つめていた。これはもう致死量である。

「私の名前は蒼葉、、、だよ?」

あ、死ぬわこれ、、、。

思わぬ一言に意識が飛びそうになる。

えっと、、つまりこれは名前を呼べということかな、、?苗字じゃなくて、、下の方か、。

「はっ!?」

つ、つまりだ、、僕は下の名前で呼んでほしいと頼まれているわけで、、、。それに気がついたところで驚愕の声が顕になる。

「瞬君は、、、いや?」

「いーやいやいや嫌なもんか!そんな事これっぽっちも滅相も、嫌なんて1ミクロも思っておりませんよぉはい!」

この時の蒼葉はずるかった。

可愛い女の子に抱きつかれて、尚且(なおかつ)上目遣いで頼み事をされて断る事なんて出来ないじゃないか、、、。

「、、あ、、蒼葉?」

咳払いをして、恐る恐る僕は死なない程度に口数を少なくして、蒼葉の名前を呼んだ。

蒼葉はそれを聞くと、可憐な笑みを浮かべながら満足気な顔をしていた。

「うん。私は蒼葉。瞬君宜しくね」

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