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スクールライフCREATORs  作者: 石原レノ
蒼葉と翠葉の依頼
5/24

頼りにしてるから

この高校に転校してきてはや1週間が過ぎた。慣れるには短期間すぎる1週間がもう1度始まったような気分だ。自転車で通学する生徒。交通機関を使う生徒。僕みたいな徒歩で通学する生徒と様々である。

「はぁ、、、寒い」

周りは何人か固まって登校する中、当たり前だが僕は1人で登校していた。冬。冬である。なぜ二回言ったかと言うと、単に冬が苦手なだけだから。嫌いじゃない理由は雪が降るからと変な理由だけである。

寒い寒いと言いながら両手を擦りながら登校するこの道のりは正直きつい。そう思いながら登校するのであった。

「あ、あの!」

不意に後方から声がかかる

「ん?」

寝ぼけ全開寒さにイライラしていたので、つい男友達にするような返答の仕方をしながら振り向いてしまった。

「ひっ!」

見ると、黒紫の長い髪の女の子が驚いたように後ろに退いていた。ゆかりを元にして良いのかは分からないが、比べるに学年は高等部ではなさそうだ。

「ご、ごめん!どうかしたかな?」

すぐさま謝罪の一礼をして、話をしようと近づいたのだが、女の子は僕が近づくにつれて顔を青くしていき、ものすごい速さで走り去ってしまった。

「、、、、、悪いことしたかな」

後に残ったのは罪悪感に埋もれそうな僕だけだった。


「はぁ、、、あの子何だったんだろな、、、このままじゃ気になって仕方ないな」

本日の授業がすべて終わり仕事がない支援部は暇を持て余していた。最初の仕事も簡単に片付いてしまい、また暇な日常が帰ってくると考えると憂鬱なものである。

「瞬君。ちょっといいかな?」

「ん?、、、あぁ榊さん」

うつ伏せになり睡魔に襲われそうになったところで神巫女(かみこ)の声がした。案の定頭を上げると神巫女の姿があり、相変わらずその黒髪は綺麗の一言では収まらない。

「ちょっとお願いしたい事があるんだ、、、その、、、この子なんだけど」

よく見ると神巫女の後ろにもう1人いるようだった。その人影は恐る恐る神巫女の後ろから出てきた。黒紫の長い髪、神巫女の肩くらいの身長。間違いない、今朝会った女の子だ。

女の子は恥ずかしいのか今朝の事を根に持ってるのか、なかなか神巫女の袖から手を離さず、そばを離れようとはしない。

「ほら、ちゃんと挨拶しないと。大丈夫瞬君は優しいから」

神巫女に促され、女の子は不安気に口を開いた。

「あ、藍原紫音(あいはらしのん)、、、中等部2年です」

「僕は天上瞬(てんじょうまばた)。今朝はごめんね。僕もぼーっとしてたからつい男友達に対する接し方をしちゃって。本当にごめん」

唐突に話しかけられたとはいえ、怯えさせたのは自分だ。杞憂かも知れないけど紫音は僕を嫌いになったかもしれない。でも僕は謝ることだけはしようと思った。紫音は不安気な顔をを僅かだが神巫女の背後から見せてくれた。

「だ、大丈夫です、、、私も少し驚いちゃったけど先輩はその、、お、男の人だし、、、そんな口調になるのは仕方ないかな、、、って」

途切れ途切れの一言は紫音の人見知りさを僕に知らしめた。僕としては良点である。

「それでお願いの事なんだけど、、、今から良いかな?」

「うん。構わないよ。こっちに座って」

僕と対面になるように席に指定して、話を進める。前回の白雪の1例があったから何ら困ることは無かった。

「それじゃあ内容を聞かせてくれないかな?」

神巫女と紫音はお互いに顔を見合わせて、再度僕の方へ向き直った。その行為を見て、僕は気を詰まらせる。

これは前回みたいに簡単な仕事じゃない。

そう思ったからだ。

「私と藍原さんは同じ文芸部でね。毎日部活で会うんだ。文芸部には何人か中等部2年の子が居るんだけど、その中に月見翠葉(つきみすいは)ちゃんって女の子がいるの」

僕は話を聞きながらメモ帳にペンを走らせる。こんな細かい情報でも僕の仕事には欠かせない事なのだ。

「翠葉ちゃんはいつも明るくて周りから頼られるんだけど、つい最近、、、お母さんが亡くなったみたいで、、、」

神巫女、紫音の表情が曇り出した。人が居なくなる話は僕だって聞きたくないし、聞いたら暗くなってしまう。

「昨日からまた学校に来始めたんだけど、その、、、いつもと変わらないの」

「それは、、どういう事かな?」

いつもと変わらない、、、。ぱっと聞けば別にそれでいいじゃないかと思うかもしれない。でも、神巫女が言う【いつもと変わらない】はどこか別の理由があるように思えた。

「よく分からないのだけど、翠葉ちゃんすごく無理してると思うんだ。自分の身内が亡くなったら誰だって立ち直るのには時間がかかる、、、でも翠葉ちゃんはいつもと変わらない、、、、それに、、」

ここで神巫女の言葉が詰まった。何処か感情的になったようなそんな気がした。

「翠葉ちゃん、、誰もいない所で泣いてたんだ、、、」

その言葉を聞いた途端僕のペンの動きが止まった。僕にはわかる。僕が体験したことがある事だから。どんなに辛いことがあっても、それを他の人にまで影響させたくない。形は違えど、僕も同じような体験をした。だから1つ思えた。

彼女を救ってあげたい。

「私、、だめだよね。後輩が辛いって思ってるのに、、、何も、、出来ないなんて、、」

神巫女の瞳からは涙がこぼれ落ちている。先輩として、仲間として、翠葉という女の子に何もしてやれない歯がゆい気持ちがとうとう表に出てしまったのだろう。見ると紫音も涙をこぼしていた。

「わ、私は、、翠葉ちゃんとは同じクラスで、、翠葉ちゃんいつも皆に頼られてた、、、私もそんな翠葉ちゃんが大好きで、でも、、、私、何もしてあげられなかった」

「、、、そっか」

僕は開いていたメモ帳を閉じて、真剣な眼差しで2人へ向き直った。

「その子を、、、どうしたい?」

僕が優しく問いかけると、紫音は目に浮かべていた涙を袖で拭い、強い眼差し、決意した眼差しでこう言った。

「私は翠葉ちゃんを助けたい!」

、、、こうしてまた僕の仕事は始まった。今度は僕だけじゃない。皆に頑張ってもらう番だ。


「今日も来てくれたんだ。ありがとう翠葉」

「いいよ。私は来たくて来てるんだし」

夕暮れ時、オレンジ色に染まる空は静かに病室を孤独に照らしていた。

「ごめんね。こんな忙しい時に、、お姉ちゃんもっと頑張らないといけないのに」

ベッドに腰掛けている蒼葉が申し訳なさそうな顔をする。妹の翠葉は優しく微笑んでまた1つ嘘をついた。

「大丈夫。私は大丈夫だから。お姉ちゃんはゆっくり体を休めて」

翠葉の一言に、蒼葉はまた安心する。何度目になるこの体験。蒼葉自身翠葉の事が物凄く大切で心配なはずなのに、、、何故か頼ってしまう。駄目な姉だとつくづく思った。

「、、、うん。無理しないでね」

そしてまた蒼葉は翠葉に頼ってしまう。妹の翠葉はその可憐な笑みでまたこう答えるのだった。

「うん。私に任せておいて」

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