蒼葉
部活動初の依頼を受けて2日目。初日は何も出来ない所か仕事のことさえ忘れている様である。今日こそはと気を引き締め、迎えるは昼休み。ほかの女子生徒は購買に行く者もいれば弁当を広げる人もいる。ただ僕は保健室を目指すのだった。
「、、、誰かいますかぁ?」
それは昨日と同じ様に静まり返った保健室。ノックをしても何も反応がないこの場所にはまだ慣れず、恐る恐る小声で現状確認をした。
「、、、ふぅ。相変わらず誰もいないな」
「そうでもないよ?」
ビクッと体を震わせながら振り向くと、綺麗な青髪の女の子が1人笑顔で立っていた。
「月見、、、さん?」
「珍しいね。二度もこんな所で会うなんて」
蒼葉は笑みを浮かべながら保健室に入室すると、真っ先にベッドに向かい腰掛けた。
「今日はどうしたの?昨日もここに来てた見たいだけど」
僕は心を落ち着かせてから、以来の話を口にした。
「僕が部活をやっている事は知ってる?」
「支援部、、だよね?確か昨日発表されたばっかの」
部活の事を知っているなら話は早い。引き続き話を続ける。
「そう。それで僕はある人の依頼で、月見さんと仲良くなりたいっていう依頼を受けたんだ」
僕がそう言うと蒼葉は疑問を浮かべた顔をしていた。顔を傾げ指を口元に当てる。
「私と?それって誰かな、、、?」
「月見さんと同じクラスの小鳥沢白雪さんって人なんだけど、、、」
蒼葉は白雪を知っていたようだ。まぁ同じクラスなので名前くらいは覚えているとは思ってはいた。
「白雪さんが、、、私保健室にいる事が多いからかな。友達少ないんだよなぁ、、、白雪さんが良いなら私もお話してみたいなぁ」
「なら今日の放課後空いてるかな?その時に小鳥沢さん連れてくるからさ」
僕がそう言うと蒼葉は笑みを浮かべる。僕ぎ要件を済まして立ち去ろうとすると、何故か後ろから手を握られ引き止められてしまう。
「、、、どうかした?」
見ると蒼葉の顔は少し赤くなっている様だった。何がなんだか分からない僕には首を傾げることしか出来ない。
「そ、その、、、お友達に、、、」
「ん?」
小声でか細い声は、かろうじて聞き取れる程だった。蒼葉の顔はほのかに赤く染まり、白い肌と組み合わせて色っぽく感じてしまう。そんな事を僕が考えているとも知らずに、蒼葉は僕の手を握ったまま再度気恥ずかしそうに口を開いた。
「私とお友達に、、、なってくれないかな?」
目に微量ながらも涙を浮かべているところ、めちゃくちゃ恥ずかしいのだと受け取れる。「(やばい、、、この表情は、、、)」
本人は気づいていないだろうが、今の蒼葉は一般男子が見たらやばいくらいの天使さを誇った表情をとっている。僕は思わず目線をそらしてしまった。その仕草を見て蒼葉は少し表情を曇らせた。
「だめかな?」
「いやいや!そんな事ないよ!こんな僕で良かったら友達になって欲しいって僕から頼みたいくらいだよ!」
「、、、そっか。よろしくね瞬君」
一変した満面の笑み。僕にはとても耐え抜くことは出来ない光景だった。
「と、言うわけで、放課後に会って話してくれるかな?」
「そ、それはまた急だね。私そんなにガツガツ行けないよ」
蒼葉と話した後、隣のクラスの白雪を呼んだ。相変わらず女子生徒からの注目が痛い。
支援部の部室を開けて、昨日と同じ感覚で話を進める。本人はそれ程嫌じゃないようで、表情が緩んでいる様だった。
「まぁ月見さんも仲良くなりたそうだったからそんなに難しい話じゃないと思うよ」
僕がそう言うと白雪は顎に指を添えていたが、安心したのか勇気を出したのか「よし」と声を出すと席を立った。
「ありがとうございます!えーっと天上君で良いのかな?」
「瞬。僕の事はそう呼んでよ。珍しい名前だからそうそう被らないしね」
「分かった!じゃあ私は行くね。瞬君ありがとう!少し見直しちゃったよ!」
そう言い残して走り去って行った。僕はただ1人ぽつんと立ち尽くしていた。
「見直しちゃった、、、か」
思わぬ一言にニヤケがおさまらない。予想以上に嬉しかったのだ。人に頼られることやそれによって喜ばれること。僕にとってはこれ以上にない【報酬】だと実感した一時であった。
「ニヤニヤして近づき難いです。変態さんです」
ニヤニヤしていた顔を即座に戻し、声がした方へ顔を向けると、ゆかりが部室の扉の向こうから顔を少しだけ覗かせていた。恥ずかしいのかなかなか姿を現そうとはしない。
「い、いつから見てたの?」
恐る恐る問いかけると、ゆかりはゆっくりと小さな容姿をすべて露わにする。この小さな中学二年生が生徒会で働いていると考えると凄いものである。
「部活が発足して初の依頼人の人からのお礼の言葉を聞くところからです」
なるほど。めちゃくちゃ恥ずかしい所を見られていたわけだ。
「そ、そうですかはい、、、それでご要件は?」
「いえ、特に用がある訳では無いですよ。気になったから見に来ただけです。本当です」
「気にしてくれてたんだ。ありがとう」
ゆかりの元へ歩み寄り、頭を撫でると、ゆかりは驚いたように後ろへ飛び跳ねた。
「な、何するですか!?それに、べ、別に気にしてなんかないです!」
僕は「分かった分かった」と軽く流して部室に鍵をかけた。
「さて、鍵も閉めたし僕は教室に戻るね」
「そうですか。なら私も戻るです」
「ゆかりちゃん、、だよね?部活はしてないの?」
「はい。私は不器用なので部活は初めからするつもりは無かったですよ」
「そっか、、、俺もそんな感じだな」
僕がそう言うとゆかりは疑問を生じたように首を傾げた。
「転校生の先輩はそこまで不器用じゃ無いと思うですよ?」
「ん?どうして?」
この高校に入るまで自分に合った部活をやろうと色々と転々としてきた。しかしどれも自分に合うものはなく、結果的に帰宅部になってしまった。ゆかりはそんな俺を知らないのであるが、なぜそう言えるのだろうか?
「転校生の先輩は人と話す時凄く楽しそうな顔をしてるですよ。知らない人ばっかりなのに凄く楽しそうです」
「んーそれって人間関係的に器用ってことかな?」
「その不器用器用の話をしてたんじゃないですか?」
あ、、、なるほどね。それもそうだ。つい最近会った人のことを知れるなんて心でも読めない限り不可能である。自分の甘さを知った。
「でもゆかりちゃんも可愛いんだし話しかければ皆仲良くしてくれると思うんだよね」
「なっ、、」
突然ゆかりの顔がボフッと真っ赤に染まる。僕はそんなゆかりをニコニコしながら見ていた。
「わ、わわ私は、、、可愛くなんて、、、」
「そうかなぁ?ちっちゃくて可愛いと思うけどなぁ」
そこまで言ったところでチャイムが鳴り響いた。昼休み終了のチャイムだった。
「それじゃあ僕は行くね。また困ったら頼むよ」
そう言って足早に去っていった僕に気がつくこともなく、ゆかりは顔を真っ赤にしながら俯いていた。
「私が、、、可愛い、、、ですか」




