おとぼけ
「高等部2年で隣のクラス、、、元々この高校中高一貫で、クラス数も学年ごとに二つしかないからなぁ。これは探す手間が省けるな」
部活、生徒会、学校行事さえも中等部と高等部で協力してやっているこの高校は、中高一貫であるが総合生徒数は少ない。
とりあえず僕は白雪が言っていた保健室へと向かった。教室は放課後で居そうになかったからである。
「ええっと、、、」
夕刻5時を迎えようとしている中、僕は保健室にたどり着いた。構内で迷ったことはあえて語らない。
保険室内は静まり返っていて、救急用の医薬品や応急処置の道具等が置かれており、狭い空間の中に五つのベッドが並べられていた。
しかし、そのどれにも休んでいる人物は居なかった。途方に暮れながらも、明日に回そうと再びドアの方へ足を運ぼうと振り返ったとき―
「いたっ」
自分より低い何かが胸あたりにぶつかり、目の前で尻もちをつく。慌てて見下ろすと、なんと女の子を倒してしまっているではないか。
「ごめん!大丈夫?」
あわてて手を差し伸べると少女はなんの躊躇もなく手を握り起き上がった。
身長は自分の胸くらいしかなく、腕や足は少し細めだった。
「ありがとう。私こそごめんね?ちょっと考え事してて、、、君って、、転校生だよね?この高校初めての男子生徒っていう、、」
「うん。僕は天上瞬、、、君は?」
「私は月見蒼葉。天上君とは隣のクラスだね。隣っていっても二クラスしかないけど、、、」
僕は「そっか」と言いながら蒼葉の容姿をしっかりと頭に叩き込んだ。この高校に来てまずしなきゃいけない事は信頼を得る事。その為には友達を作らなくてはならない。忘れるなど以ての外だ。
「じゃあ私は保健室に用があるからこれで。また明日ね天上君」
手に持っていた通学用カバンを両手で持ちながら、蒼葉は保健室の中へと足を運んでいった。
僕が「うん」とだけ言うと蒼葉は可憐な笑みで返してくれた。
「、、、さて、僕も帰るかな。結局会うことは出来なかったし、、、」
結局保健室に行って会えたのは保健室に通う途中だった女の子。以来の女の子とは、、、、あら?
「まてよ、、、月見、、、月見蒼葉!」
ハッとして振り返り、慌てて保健室に引き返そうとしたところで放送のアナウンスが鳴り響く。
『天上瞬君。至急職員室まで来てください。2年2組天上瞬君、至急職員室まで―』
なんというタイミングの悪さ。僕は保健室の方向と職員室の方向を何回も振り返った後、渋々職員室まで急いで行ったのであった。
「、、、はぁ。また今日も保健室通いかぁ、、、これじゃあ友達なんて1人も出来ないよ、、、」
先程会ったこの高校初めての男子生徒。天上瞬が職員室に呼ばれた頃。少女は可憐さを引き立たせながら1人保健室でため息をこぼしていた。
妹と違い体が弱く、入学してからまともに教室にも通えない。そんな自分を恨みもしたが、した所で何かが良くなるわけでもない。そんなもどかしくも儚い思いは転々と繰り返していくばかり、、、、。
「、、、、お母さん」
ベッドの上でうずくまり、顔を伏せている少女に優しく声をかける者は誰1人として居なかった夕刻5時半、、、。




