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横須賀海軍女学校  作者: 白紙撤回
第二話  《三笠》
26/27

2 - 13

 

 

 

     *     *     *

 

 

 

《三笠》の前で、静堂小学校の児童と海軍女学校の生徒たちは、向かい合って横一列に並ぶ。

 

「──気をつけ、礼! ありがとうございました!」

 

 百合子の号令で、小学生たちは一礼した。

 

「ありがとうございました!」

 

 それから小学生たちは、それぞれの分隊のお姉さんの下に集まっていき、あらためて直接、お礼を言う。

 海軍女学校生徒も、小学生たちの肩を叩いたり、優しく抱きしめたりして、別れを惜しむ。

 繭子は、第一分隊のお姉さんたちにもう一度、頭を下げた。

 

「あの……本当に、ごめんなさい」

 

 そして顔を上げ、

 

「もし、また機会があったら、お姉さんたちとお会いしたいです」

「そうだね、今度は、ボクたちの学校を案内してあげたいな。ね、麟子?」

 

 にこにこ笑顔で順が言って、麟子も頷き、

 

「そうですわね。学校見学の機会があれば、是非いらして頂きたいですわ」

「はい、そのときは、またよろしくお願いします」

 

 繭子は元気よく言って、百合子に、

 

「ね? また一緒に、お姉さんたちに会いに来ようね」

「ええ」

 

 百合子は微笑む。

 引率の先生が呼びかけた。

 

「では静堂小学校は、バスへ移動しまーす!」

「あ……行かなくちゃ」

 

 繭子はお姉さんたちに会釈した。

 

「それでは、これで失礼します」

「失礼します」

 

 百合子も言って、友子と幸子も憮然とした顔をしながらも軽く頭を下げる。

 

「……失礼しまーす……」「……しまーす……」

「じゃ、またねー」

 

 順は笑顔で手を振り、小学生たちを見送った。

 麟子も手を振りながら、順に小声で釘を刺すように、

 

「またねーって、そんな締まりのない。もう少し海軍女学校生徒らしく、品格のある挨拶をなさい」

「ばいばーい♪("Bye-Bye!") しーやっ♪("See Ya!")」

「"Au revoir." サヨナラなのです」

 

 千代と陽子が言って、麟子は眉をひそめ、

 

「貴女たちも、きちんとした見送りは出来ませんの? 第一分隊伍長として恥ずかしいですわ」

「怒らない怒らない、繭子ちゃんも百合子ちゃんも、まだ手を振ってくれてるよ」

 

 順は笑う。

 列を作って去っていく小学生たちだが、ときおり名残惜しそうに振り返っては手を振ってくる。

 彼らの姿が見えなくなるまで、海軍女学校の生徒たちも笑顔で手を振り返した。

 

 

 

     *     *     *

 

 

 

 お姉さんたちの姿が、復元軍艦『清輝』の向こうに隠れて──

 繭子は、隣に並んで歩く百合子と手を繋いだ。

 すると百合子が、お姉さんたちが見えていた間の笑みをかげらせて、

 

「……あの、繭子ちゃん。さっきはごめんなさい……」

「どうして百合子ちゃんが謝るの?」

 

 繭子は笑い、ぺろりと舌を出してみせ、

 

「国家の主兵の話なら、実際、私が言っちゃったことだもの。お姉さんたちが怒らなくて、よかった」

「ええ……」

 

 百合子も微笑む。

 

「素敵なお姉さんたちだったね」

「うん。あのね、百合子ちゃん。私、将来は陸軍士官もよいけど、海軍軍人も悪くないと思うの」

「そうだね。繭子ちゃんなら、どちらも似合うと思う」

「でも、まだ実業家の道も捨ててはいないのよ。どれがいいかは、これから、じっくりと考えていくわ」

 

 百合子と繋いでいるのと反対の手を、繭子は夏の太陽にかざす。

 

「その前に、まずは夏休みの計画を立てなきゃ。宿題、少ないといいね!」


 少女たちは、そのまま手を繋いでバスに乗り込み、「海軍の街」を後にした──


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