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《三笠》の前で、静堂小学校の児童と海軍女学校の生徒たちは、向かい合って横一列に並ぶ。
「──気をつけ、礼! ありがとうございました!」
百合子の号令で、小学生たちは一礼した。
「ありがとうございました!」
それから小学生たちは、それぞれの分隊のお姉さんの下に集まっていき、あらためて直接、お礼を言う。
海軍女学校生徒も、小学生たちの肩を叩いたり、優しく抱きしめたりして、別れを惜しむ。
繭子は、第一分隊のお姉さんたちにもう一度、頭を下げた。
「あの……本当に、ごめんなさい」
そして顔を上げ、
「もし、また機会があったら、お姉さんたちとお会いしたいです」
「そうだね、今度は、ボクたちの学校を案内してあげたいな。ね、麟子?」
にこにこ笑顔で順が言って、麟子も頷き、
「そうですわね。学校見学の機会があれば、是非いらして頂きたいですわ」
「はい、そのときは、またよろしくお願いします」
繭子は元気よく言って、百合子に、
「ね? また一緒に、お姉さんたちに会いに来ようね」
「ええ」
百合子は微笑む。
引率の先生が呼びかけた。
「では静堂小学校は、バスへ移動しまーす!」
「あ……行かなくちゃ」
繭子はお姉さんたちに会釈した。
「それでは、これで失礼します」
「失礼します」
百合子も言って、友子と幸子も憮然とした顔をしながらも軽く頭を下げる。
「……失礼しまーす……」「……しまーす……」
「じゃ、またねー」
順は笑顔で手を振り、小学生たちを見送った。
麟子も手を振りながら、順に小声で釘を刺すように、
「またねーって、そんな締まりのない。もう少し海軍女学校生徒らしく、品格のある挨拶をなさい」
「ばいばーい♪("Bye-Bye!") しーやっ♪("See Ya!")」
「"Au revoir." サヨナラなのです」
千代と陽子が言って、麟子は眉をひそめ、
「貴女たちも、きちんとした見送りは出来ませんの? 第一分隊伍長として恥ずかしいですわ」
「怒らない怒らない、繭子ちゃんも百合子ちゃんも、まだ手を振ってくれてるよ」
順は笑う。
列を作って去っていく小学生たちだが、ときおり名残惜しそうに振り返っては手を振ってくる。
彼らの姿が見えなくなるまで、海軍女学校の生徒たちも笑顔で手を振り返した。
* * *
お姉さんたちの姿が、復元軍艦『清輝』の向こうに隠れて──
繭子は、隣に並んで歩く百合子と手を繋いだ。
すると百合子が、お姉さんたちが見えていた間の笑みを翳らせて、
「……あの、繭子ちゃん。さっきはごめんなさい……」
「どうして百合子ちゃんが謝るの?」
繭子は笑い、ぺろりと舌を出してみせ、
「国家の主兵の話なら、実際、私が言っちゃったことだもの。お姉さんたちが怒らなくて、よかった」
「ええ……」
百合子も微笑む。
「素敵なお姉さんたちだったね」
「うん。あのね、百合子ちゃん。私、将来は陸軍士官もよいけど、海軍軍人も悪くないと思うの」
「そうだね。繭子ちゃんなら、どちらも似合うと思う」
「でも、まだ実業家の道も捨ててはいないのよ。どれがいいかは、これから、じっくりと考えていくわ」
百合子と繋いでいるのと反対の手を、繭子は夏の太陽にかざす。
「その前に、まずは夏休みの計画を立てなきゃ。宿題、少ないといいね!」
少女たちは、そのまま手を繋いでバスに乗り込み、「海軍の街」を後にした──




