再会
孝治は到着口を出ると立ち止まりバッグを左手に持ち直しスマホを取り出し、辺りを見回し沙織を探す。
旅客ターミナルのイスに座る沙織を見つけると、孝治は隣に腰を下ろした。
「こうちゃん久しぶり…。」
沙織は元気なく孝治に話しかける、孝治は笑顔で沙織に応えた。孝治の顔をみた沙織は俯いてしまった。
「ありがとう…。ごめんね…。」
沙織は力のない声でそう言うと、肩を震わせ泣き始めた。
孝治はハンカチを取り出し沙織に渡して肩を抱き寄せた。
「沙織…次会うときは笑顔でって約束したじゃんか。」
孝治は沙織の髪を撫でながらそう言うと沙織は頷いた。
落ち着いたのを確認すると孝治は立ち上がり、沙織の手を引いた。
「こんなところもなんだから、何処か行こうか。」
孝治がそう言うと、沙織は小さく頷き顔を下に向けたまま立ち上がった。
二人はタクシーに乗り込み、二人が出会った場所に向かった。
二人はは途中でタクシーを降り、レンタカーを借りた。
「ごめんね。仕事忙しいんだよね…。」
沙織は小さな声で前を見ながら言った。
「全然大丈夫だって俺なんていなくても会社は回るから、むしろちょっと休みが欲しかったしね。そこに沙織が会いたいって言ってくれたから、これは行かなきゃと思ってさ。」
孝治は昔と変わらない、いや変わったとすれば身なりと顔の小じわが少し増えたくらいだろうか。
沙織は2年前より美しく、大人になっていた。
「あたしね、結婚する事になったんだ。でもちょっと揉めてさ…。」
沙織は少し元気を取り戻したが声が小さくなっていった。
「よかったじゃん!結婚なんてさ、ってか俺と会ってる場合じゃないでしょ。揉めてる事を相談したい的な感じ?」
孝治は表情を変えずに昔のような口調で沙織に接する。
沙織は大きなため息を付き黙った。
「どうしたんだよ。前に言っただろ、なんかあったら相談して来いって、辛いなら言って来いって。」
孝治は沙織をチラッと見た。
「あたしが今付き合ってる人って、孝治に相談してた人なんだけど、その時に彼女いたの知ってるでしょ?」
沙織は淡々と語り始めた。
「それで別れてくれたんだけど、もうすぐ結婚って時になって、その元カノとまだメールしてるって知ってさ。もうどうしたらいいか分かんない。」
沙織は昔のように怒っていた。
そんな沙織を見ると孝治は何故か笑顔が溢れてしまった。
「なんで笑ってるの?そんな事で呼んだのかって事?」
沙織の怒りの矛先は孝治に向いた。
「ごめんごめん。沙織が昔と変わってないなー。って思ってさ。」
孝治は動じる事なく、車を走らせるとスーパーの駐車場に車を停めた。
「ちょっと待ってて」
そう言うと孝治はキャリーを持ってスーパーに入っていった。




