再会
空港の到着口から一人の男が出てきた。
男の身なりはゼニアのスーツ、靴はジョンロブ、ブリオーニのネクタイ、腕にはリシャールミルをつけて、ダレスバッグを右手に持ちキャリーを引きながら出てきた。
到着口を出ると立ち止まりバッグを左手に持ち直しスマホを取り出し、辺りを見回している。
寝ていないのか男はの目の下にはクマがあり表情も何処か疲れていた。
スマホをポケットにしまうと、いそいそと歩き出した。
旅客ターミナルのイスに座る女性を見つけると、男は隣に腰を下ろした。
「こうちゃん久しぶり…。」
女性が男に声をかけると男は笑顔で女性に応えた。男の顔を見ると女性は俯いてしまった。
「ありがとう…。ごめんね…。」
女性は力のない声でそう言うと、肩を震わせ泣き始めた。
男はハンカチを取り出し女性に渡すと、女性の肩を抱き寄せた。
「沙織…次会うときは笑顔でって約束したじゃんか。」
男は女性の髪を撫でながらそう言うと立ち上がり、女性の手を引いた。
「こんなところもなんだから、何処か行こうか。」
男がそう言うと、女性は頷き顔を下に向けたまま立ち上がった。
二人はタクシーに乗り込んだ。