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第九話-裁判-

すみません、題名変えることにしました。弁明ではなく裁判です。


 おい…みんな……聞いてくれ………俺は無実だ。これだけは信じてくれ。


 俺は気がついたら両手両足を椅子に縛り付けられ、目の前にはまるで裁判所みたいな光景が広がっていた。ふと周りをみるとエリオとガビンが弁護側にいた。うん、弁護側だよな。頼むぞ、ほんと。


ㅤ裁判長らしき人は小柄で、すこし癖のついた濃いめの金髪を持ち、大人しい印象ながらも鷹のような鋭い琥珀色の目付きでこちらを睨み、俺の罪を言い放った。


「レイブン魔法学校特別クラス一年生、千尋。其方はホームルームで越えてはならないレッドラインの話を聞いた直後にも関わらず女子寮に走りこみ、あまつさえ親族の女子の服及び下着を盗みだした。違うか。」


ㅤはい、違います。全く違います。確かに俺がしたことは状況を見るからにこの人の言う通りに見えるのだろう。しかし物事の表面しか見ないその浅薄な調査は頂けない。もっと目撃情報や証言を集める気はなかったのか。


ㅤ俺は言いたい文句を頭の中で整理して小柄な裁判官にたてついた。


「違いま…」

「発言は挙手をし、許可をとってから行うこと。」


ㅤ俺は手をあげようと思った。それはもう凄まじい速さで。しかし、俺の手が上がることはなかった。両手両足を椅子に縛り付けられていたからだ。


「しかし、手をあげようにも…」

「発言は挙手をし、許可をとってから行うこと。」


ㅤにぃ、と裁判長の口元が緩んだ気がした。こ、こいつ……無理矢理にでも罰を与えたい変態か?くそっ!これじゃどうしようもないじゃないか!


ㅤ俺はエリオとガビンの方へ目線を流した。頼むぞ、お前ら。二人は少し頷き、裁判長の方をみた。よし、これで二人がなんとかしてくれるはずだ。ふっ、裁判長め俺をナメてると恥かくぜ。俺には友情という絆があんだよ。

へっ!


「違わないようですね、沈黙を肯定とみなし裁判を続けます。では被害者の証言を聞きたいと思います。服及び下着を盗まれたエリオ・ファンネルさん、前へどうぞ。」


ㅤえ?俺は耳を疑った。エリオはてっきり弁護に回ってくれているものと思っていた。エリオは俺の方を向き、悪戯を企むような目を細めてフッと微笑んだ。


ㅤ可愛い…今は見た目が3歳くらいに見えるエリオからはその見た目にそぐわない妙な色気がでていた。元から金色の瞳と艶のある黒色に変わってしまった髪から覗く首筋が綺麗すぎる。元々日本にいた俺は黒髪が馴染み深いのでなおさら美しく感じた。


ㅤ俺はエリオに見とれているとエリオは裁判長に凛とした声で俺の弁護をした。


「特別クラス一年生、エリオ・ファンネルです。神に誓い、嘘のない証言を行います。率直に申しますが千尋が私の服や下着を持っていることについては千尋は何の罪もありません。」

「自分の服と下着を盗んでいる相手に何の罪も無いと申すか。其方が見た目によらず痴女であるかどうかは別としてその理由を述べよ。」

「おい!お前いまなんて言った!!エリオは痴女なんかじゃないぞ!!!今すぐ取り消せ!!でないと…」

「千尋、いいの。今は静かにしていて。」


ㅤエリオはそういうと裁判長の方を向き、俺の弁護を続けた。


「両親が私たちの旅支度をするにあたって私の負担をすこしでも減らすように配慮してくれたのでしょう。元から私の元には服と下着がありませんでした。彼もそのことを知らなかったのかもしれません。ですので服と下着を彼が持っていることに関しては彼は無関係です。」

「ほぅ、そうか。本人が無関係と言うならば罪には問うまい。だが、レッドラインを越えたことは厳重に裁かねばならんぞ?このことについてはどう考えている。」

「はい、レッドラインを越えてならないことについては確かにクレンシュナ先生より厳しく注意を受けました。ですのでこれに関しては千尋は校則を破ったとし、然るべき罪を受けるのがよいと思います。」


ㅤOooooh!!!!エリオさぁぁん!確かに正論過ぎて全く言い返せないけど少しは庇ってくれよぉ!


ㅤ今まで黙って頷いていたガビンが4つの手をあげた。


「あげる手は一つで構いません。特別クラス一年生、ガビンよ。発言を許可します。」


ㅤガビンはその場に立ちあがり、俺をみて力強く頷くと裁判長に向き直し、姿勢を正した。こうしてみるとガビンは貫禄というか威厳というか、そういうオーラが漂ってるな。すげぇ。


「特別クラス一年生、ガビンです。神に誓い、嘘のない証言を行います。彼はこの騒動を起こす前に私に『無事でいられるように祈ってくれ』と頼みました。この言動は今の状況から察するに、自分は兄妹のために校則を破ってしまうことになるが、それがバレてしまえば同室の私にも罪が与えられるので、私を巻き込まないために自分の無事を祈ってくれ、ということだったと思われます。彼の周りに対する配慮も判決を下すための考慮に入れて頂けると幸いです。」

「よろしい、ガビンは席につきなさい。千尋よ発言を許可する。今の話は本当か。本当か嘘かはすぐにわかる。嘘を言えばさらなる罪を着ることになるということを忘れずにこの質問にこたえよ。」

「本当です。私は確かにガビンに対してその言動を行いました。」


ㅤくっくっくっ。ガビンよよくやってくれたぞ。さすが我が相棒。これで俺が受ける罪も少しは軽いものになるだろうな。それにしても同室のガビンも巻き込んでしまうのか…これからは行動する前にしっかりと考えて行動しよう。ガビンに迷惑かけたくないしな。


「嘘ではないようだ。では他に証言は無いようなので判決を言い渡す。」


ㅤゴクリ。俺は唾を飲み込んだ。弁護があったとはいえ、判決を下されるというのはかなり緊張する。ガビンも俺と同じ目に合うのでかなり緊張しているようだ。


「特別クラス一年生、千尋よ。其方はガビンと共に本日のみ、拘束室で睡眠をとることを罰とする。拘束室には拘束室の掟があるのでそれらに従うこと。ではこれにて閉廷とする。」


ㅤ俺とガビンはお互いの顔を見合った。これは…俺たちの勝ち…なのか?一日拘束室とかいう所で寝ろって言われただけだし、全然厳しい罰じゃないよな?ガビンとエリオにはお礼を明日にでも言っておこう。


ㅤ閉廷と同時に俺とガビンは拘束室へと連行された。そこで俺たちは現実を知ることになった。判決を言い渡されたときに知らぬ間に居た傍聴者(生徒や先生)がどよめいていた理由が分かった気がする。ここは最悪だ。拘束室に居た人に掟を説明されるにつれて俺たちはどんどん青ざめていった。


ㅤ日の光が全く入らない部屋で服を剥がれ、両手を上からぶら下がっている鎖に繋がれ、その鎖を巻き上げられ体が浮く。両手には自分の体重の負荷がかかり、メキメキと悲鳴をあげているのがわかる。


ㅤ両手の激痛に加え、服を剥がれるという羞恥プレイに俺たちは即効で心を折られた。あの裁判長め…全然弁護を考慮してねぇじゃねぇか…


ㅤ俺とガビンは次の日の朝、掟に従って拘束室で大量にしごかれた後、ようやく解放された。


「ああ…日の光だ。我らは解放されたぞ。」

「ガハハ…相棒よ…これからはお互い、こんな目に二度と遭わないように気をつけようではないか……」

「そうだな……俺ももうこんなところは御免だ…ガビン迷惑をかけてしまって本当にもうしわけない…」


ㅤ俺たちは互いに支え合いながら寮の部屋へと戻り、倒れるように眠りについた。昨晩は絶え間無い両手の痛みによって全く眠れなかったうえに全裸であることの羞恥に耐えさせられのだ。はっきりいってここで寝てしまうのは必然だろう。


ㅤ俺たちはその日の授業を全てすっぽかしたという報告をされ、またも裁判によって判決を受けた。


ㅤくそっ!あのチビ裁判長をナメていた…あいつはやばい。とりあえず大人しく学校生活をしばらく送ることにしよう。


ㅤやっと授業にまともに出られるようになったのは俺がレッドラインを越えて1週間が過ぎた日のことだった。その日にはザメリの天然の毒舌に心をぐちゃぐちゃにされ、ガビンと共にザメリを陥れようと作戦を練った。


ㅤまあ…悉く俺たちの仕掛けた罠を回避するザメリを見て無理だと判断した俺たちはザメリに対する報復を諦めたのだが。


ㅤ裁判長の制裁やザメリに対する報復で完全にエリオに礼を言うを忘れていた俺は寮に戻るエリオを追いかけ礼を言った。


ㅤ礼を言った位置がちょうどレッドラインを1歩越えた位置であったことは笑えない話であったが。


「うわぁああぁぁあぁぁ!」


ㅤこれによって俺は学校の女子達に懲りない変態という認識を持たれ、一年生を終えることになった。


ㅤほんとどこの世界も人生って大変だよね!ㅤ



千尋は気をつけようとは思っているんですが何かに一生懸命になると周りが見えません。


そんな不器用な千尋をエリオやガビン、サーヤももちろん、みんなが支えてくれています。


千尋は現実でも異世界でも変態なのはかわらないようですね。


次回はサーヤ視点で調理実習をします。

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