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第八話-特別クラス-

新しい章となりました。



ㅤおい、みんな聞いてくれ。


ㅤ俺はどうやら天才のようだ。たまたまかもしれないが迫り来る魔物を颯爽と倒し、エリオを守ることに成功し、今はこの特別クラスの生徒として入学することができた。くぅ〜〜! なんてかっこいいんだ!


ㅤしかし俺はこれが自分の力だけでは実現しなかったということは忘れていない。俺もそこまで馬鹿じゃないってことだよ!


ㅤそれにしても特別クラスとは人数が少ないな。俺の居たパーティの他にもう一班しかこのクラスに居ないということは8名しかこのクラスには生徒が居ないということになる。


ㅤ俺は焦った。エリオを守るという役目があるとはいえ、久しぶりの学校での生活を楽しみにしていたのは仕方のないことなのだ。人数が少ないことは色々と困る。今は言えないが色々と困るのだ。

ㅤまた、俺たちは小学生として入学したというがレイブン魔法学校には何歳でも入学できるらしく、実際の年齢はほぼ関係ないと言えるだろう。現にガビンは8歳でサーヤは11歳だそうだ。


 …二人とも年齢に中身と見た目が合ってなさすぎるだろ。


ㅤ本当の意味で中身と見た目が合って居ない俺とエリオはともかくこいつらは少しおかしい。混血というのはそういう影響も出るのだろうか。その辺もこの学校で学べるのかもしれないな。


ㅤ俺は不安と期待を同じくらいに胸を膨らませ、これから6年間よほどのことがない限り変わることがないというクラスを見渡した。


ㅤ見渡すと言っても知らない奴は4人しか居ないけどな…


ㅤ俺が金髪ロング軍人がザメリ班と呼んでいた人達を見ているとその中のリーダー格の人がそれに気づき少し偉そうにこちらへやってきた。


「ミノタウロスを倒したそうだね? おめでとう。私も私の力に相応しい者が班に一人でも居れば同じ結果を出せたと思うがそこは不幸だった、ということで妥協した。私はザメリと言う。初等魔術を全て使いこなし、風の魔術については高等魔術を少し使いこなせる神に導かれた存在だ。しかしクラスが同じになったよしみだ。班の者達には既に伝えているが、私は私に媚び、自分の利益を得ようとする下賤の者は嫌いだ。ぜひ、その心構えだけは忘れないで欲しい。」


ㅤペラペラとイケメンが話しかけてきた。それにしてもこの野郎はナルシストにも程があるぞ! それに今にも「実に面白い」とか言い出しそうなポーズをとっている。き、決めポーズなのか…? 正直似合ってないからやめたほうがいいぞ…


ㅤガリ○オナルシストは月のように輝く金色の髪を揺らし森林を透かしたような翠色の目でこちらの反応を伺っている。顔はかっこいいんだけど中身がこれじゃあ少し勿体無い気がするな。神様は思ったよりおっちょこちょいなのだろう。


「む…どうしたのだ? 何故何も言わない」


ㅤ怪訝な声をあげるザメリを見て思考が飛んでいたことに気がついた俺は慌てて返事を返そうとするとザメリはハッとした表情でこう言った。


「すまない。黒髪が人間の言葉などわかるわけがなかったな。少し力があると思って接した私が間違っていたようだ。しかし案ずることはない。君が言葉を話せないと言っても私は君の能力をみて判断する。そこは安心してくれ。」


ㅤ俺はすぐにエリオの顔を見た。少し顔が引きっているのがわかる。サーヤとガビンも表情に怒りが交じっているのがわかる。少し前に会って一緒に迷宮に入っただけなのに自分のことのように怒ってくれているのが嬉しく、胸の裏をくすぐられるような気持ちがした。


ㅤってかここでも黒髪の影響あるじゃん。エルバークさんどゆことよ。


ㅤ俺は落ち着いてザメリのほうを向いて少しの皮肉を交えて言葉を返す。


「言葉がわからないような相手に何故言葉をかけ続けるのでしょうか? それにもう一人の黒髪の女の子、エリオは先程居たゲートがある場所で話したのを見たと思いますがもうお忘れですか?」


ㅤOKばっちりだ。丁寧な言葉遣いに皮肉を加えて相手の勘所に触れたに違いない。しかし何も言わなければエリオまで馬鹿にされてしまう。そう思うとこのくらい必要なことに思えた。


ㅤザメリは決めポーズを止め少し驚いた表情になったが、すぐに表情を整え先程とは明らかに違う、優しげな顔になって俺とエリオの方を向いた。


「ああ、怒らせてしまったようで申し訳ない。黒髪は人間ではないと思っていたが言葉を話せる魔物も居るのだし君たちは特別なのだろう。軽く見て扱ってしまったことを申し訳なく思う。」


ㅤん〜〜。こいつ殴っていいかな? さりげなく俺とエリオが人間じゃないって言いやがったよな? かといって謝罪の言葉には誠意がこもってたし俺の皮肉と違って明らかに敵意をもった感じではなかった。


ㅤもしかして…天然で相手を怒らせてしまうタイプだろうか? 現にエリオはこちらを向いて奴を殺せ、と目で言っている。無理だっての。魔法とか超使えるし明らかに優秀そうじゃん。返り討ちにあうのが見えてるっての…


「そ、双方の理解が足りなかったってことで今回は水に流そう。俺は千尋。そしてもう一人の黒髪の女の子はエリオだ。これからよろしくな。」

ㅤうぅ…エリオさんそんな目で睨んじゃダメよ。俺だってまだ死にたくないんだもん。ザメリは強そうだし諦めてくらはい。


「エリオ・ファンネルよ。よろしく。」


ㅤそっけない態度で簡単に自己紹介を終えたエリオはドサッと椅子に座って机に突っ伏してしまった。まるで不良みたい…なんておもってるとガビンとサーヤも自己紹介をし、ザメリ班の三人もザメリを睨みつつ自己紹介をした。


ㅤザメリ…お前苦労する性格してんな…


ㅤきっとこいつらもこの調子で天然ザメリの毒舌に触れたに違いない。本人に悪気が無いのが一番の問題だ。それにザメリ自身が非常に優秀なのも周囲の怒りを増長させているだろう。


ㅤ突っ伏してしまったエリオもこちらに戻ってきて迷宮の話を8人でしていたがザメリ班の三人は俺とエリオを見てブツブツと何かを言っている。


ㅤ…仕方ないよな


ㅤ何があっても俺はエリオの味方だ。この三人が俺やエリオを陥れようとしても俺が守る。そんなことにならなきゃ一番いいんだけどな。


ㅤ俺たちはミノタウロスをどうやって倒したか、などとザメリに根掘り葉堀り聞かれてその度に漏らすザメリの言葉にはやはり、天然の毒が混ざっていた。


ㅤ苦虫を噛み潰したみたいな三人が怒りを溜め込んでいるのが目に見えたがこればかりは仕方がないように思える。ザメリは多分、いや、絶対なおらない。少ない会話ではあったがその全てに毒を無意識に盛っていたのだ。これは血液型みたいなもので一生変わらないだろうな。


ㅤガララッ


ㅤそんな中、金髪ロングの軍人先生が教室に入ってきた。


ㅤなんとなく学校にいた習慣で先生がきたことで俺は席につく、が他の7人はその場で立ったまま先生を見ている。


ㅤお、俺がおかしいのか!?


ㅤ慌てて席を立ち、移動しようとすると先生は俺を左手で制した。


「彼のように席につけ。」


ㅤ見た目に合わない低い声で述べた言葉にはその少ない言葉からは想像もつかないほど威圧感をもっていた。


ㅤ命令に背けば死ぬーー


ㅤ俺たち8人は瞬時にその危険性を理解し必死の思いで席についた。

ㅤ先生は一つ咳払いをして俺たちに向かって言った。


「私はクレンシュナという。貴様らの所属するこの特別クラスの担任になった。私のことはクレンシュナ先生、もしくはボスと呼べ。以上だ。質問はあるか。」


ㅤクレンシュナ先生は誰も顔をあげないのを質問が特にない、と判断しレイブン魔法学校の授業などについて説明をしたあと、寮についての説明をして、俺たちの部屋番号を書いた紙を一人一人に配って教室をでた。


ㅤこえぇ……


ㅤ他の7人も同じ感想をもったようだ。


ㅤクレンシュナ先生によると今日は入学式に入学試験、クラスの顔合わせなどを済ませたのでもう他にすることがないそうなのでそれぞれ寮に行って荷物を整理することになった。


ㅤ寮は二人一組の部屋であるようで俺はガビンと同じ部屋になることができた。エリオはサーヤと同じ部屋になったことを知って俺は少し安堵する。


ㅤザメリ達4人も二人づつ同じ部屋だったので班毎に部屋が割り振られるのだろう。ザメリと同じ部屋になったやつ…可哀想だなぁ。


ㅤ俺はガビンと一緒に部屋に荷物を運ぶことにした。



ーーー



「今日はすごかったなぁ? 千尋よ! お前の剣は打撃用の剣だと思っていたがキチンと刺突もできるだな! ガハハハハ!」

「くっ……俺だってこれから練習すればちゃんと斬れるようになるって! それに剣を使ったのは今日が初めてだからとりあえずは満足してるんだ! ガビンは年にしては体は大きいしすごいパワーだよな。やっぱり遺伝かそういうのが影響してるのか?」

「親父は魔物の癖に弱っちくて力もないな! だが…」


ㅤああ…分かるぞ。言わなくても分かる。どこも同じか。母親の話だろ? 母親って強いよなぁ。エルバークさんもいつもはトリスさんにこき使われてたもんな。


「遺伝云々はいいけどガビンの力は頼りになる。これからもよろしくな、ガビン!」

「ガッハッハ! 俺様も貴様のように機転の効くやつは頼りに出来ると思ってるぞ! これからも頼むぞ、千尋!」


ㅤ現世ではこんな痛いこと絶対に言えなかったなぁ。あぁ…やっと異世界最高って思えたぜ…


ㅤガビンの荷物はかなり少なくすぐに荷物整理が終わって二段ベッドの上を陣取りはしゃいでいた。俺の荷物はやけに多くなんでこんなに多いんだ、と考えていたらとんでもないものを見つけた。


「エリオの……服……と…下着だ!!!」


ㅤまずい、場合によってはクレンシュナ先生よりやばい。ガビンは「ガハハ! どうした相棒よ!」とか言ってるがこれはガビンに見せたらガビンもエリオに殺されてしまいそうだ。


「相棒! 俺の無事を祈っててくれ!」


ㅤエリオの服と下着を持って俺は無我夢中で走り出した。部屋について20分ほど時間が経っているのでエリオももしかしたら服がないことに気がついているかもしれない。


ㅤそんなことに気を完全に取られていた俺は無我夢中で走るあまり越えてはならない、と言われるレッドラインを越えてしまった。


ㅤここから先は女子寮ーー


ㅤクレンシュナ先生は異性の寮に入らないように厳重に注意していた。そんなことは頭から飛んでしまった俺はエリオの部屋へと走った。


ㅤ走っていた体が急にふわりと浮く。まるで飛んでいるかのようだ。もしかして俺は飛べるようになったのか。すごいな俺、一日でどんだけ成長するつもりだよ。


ㅤ自分の成長ぶりの凄さに呆れていると首筋に凄まじい衝撃を浴び、意識がふっとんだ。最後にエリオの姿が見えた気がするが、強制的に意識を飛ばされた俺はその場に倒れた。


ㅤ俺の入学式はまだまだ長くなりそうだ。

読んでいただきありがとうございます。


黒髪は人間ではない、という認識が一般には広がっているようです。


千尋は女子寮に入り捕まってしまいました。

次回は弁明です。


内容を読者様が存分に楽しめるようにあとがきを変更いたしました。(7/27)


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