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第六話-責任-

転移編でした。テヘロ


ㅤやぁ、みなさん。昨日は死んだかと思ったよ。


ㅤ魔法か何かはよく分からないけどあの光はやばい。なんか人生を強制的に終わらせてしまいそうな程力が感じられた。


ㅤそれはエリオも俺も無事と確認出来た今は問題ではない。問題なのは、なぜ俺があんな魔法を使えたのか。


ㅤ最大の問題は、なぜ日本語で書かれた本がここにあるのか、だ。だが、これはまだ誰にも言わないでおこう。


ㅤ一つ目の問題は考えても答えは分からなかった。が、エルバークさんの言葉で一つの仮説が浮き上がってきた。


「魔力による魔法ではなく、気と呼ばれる力による気法じゃないかな。」


ㅤエルバークさんの説明によると人間の体の中には魔力、気、という二つの力が潜在しており、魔法というのはそのうちの魔力を消費して使えるものだ。


ㅤそして、気を消費して使えるものが気法という。消費するといっても一時的なもので休めばちゃんと回復するらしい。


ㅤ体の中心、つまり深いところにある力が気、その周りに魔力が覆いかぶさるように存在している。


ㅤよって魔力が沢山ある人は魔力を取り出しやすいため魔法を簡単につかうことができる。(もちろん練習は必須である)気は魔力の奥底にあるので魔力があればあるほど使いにくいものとなってしまう。

ㅤ俺はここで気がついた。


ㅤ俺には魔力が無い。全くない。俺の体には気が存在しており、魔力がないおかげで、気を扱いやすいのだ。


ㅤ気……か……


ㅤ日本人が使いそうな言葉だな。


ㅤあの本が日本語で書かれていることに関係がありそうだが、今はそんなことどうでもいい。


ㅤまぁよくわからんことも多いが、

俺は魔法を使えない代わりに気法を使えるってことだ。魔法も気法も大した違いはないそうだ。


ㅤただ、魔力では発動できない呪文がいくつか存在するらしい。


ㅤ恐らく、あの日本語の本もその類のものだろう。


ㅤそんなこんなで俺は魔法ではないが、気法を使えるようになった。



ㅤコツさえ掴めば…なんていって簡単に気法を使いこなせるわけがなかった。トコトンこの異世界は俺に厳しいよな。


ㅤでも体が小さくなった今の状態だと吸収力がすごい。何度かやるだけで大抵のことをマスターできるが、それでも教えて貰ってないことや自分がまだ挑戦してないことはできない。


ㅤ時間は増えたみたいだし、これから頑張っていけばいいんだ。エリオも一緒に小さくなっちまったんだ。エリオと一緒に修行して冒険とか行きたいなぁ。異世界だし冒険とかありそうだよなぁ。



ㅤ俺はそんな遊びみたいなことしか考えていなかった。本当に愚かだと思う。エリオがあまりにもいつも通りすぎて勘違いをしていた。


ㅤここはカレラ帝国なのだ。


ㅤ黒髪は不幸の象徴。


ㅤ人気者のエリオとはいえこの町で暮らすのははっきりいって無理だろう。両親は真剣にエリオの将来をどうするか悩んでいた。それなのに原因である俺はエリオと一緒に〜、とか…


ㅤいや、自戒はいつでもできる。今はエリオや自分をどうするかを考えよう。


ㅤ俺なりに考えながら家をうろついていると話し合うエルバークさんとトリスさんの声が聞こえた。


「グリスウェア大陸のレイブン魔法学校になら俺のツテがある。そこなら二人とも大丈夫かもしれない。」

「でもあの子たち髪の毛が黒いのよ。学校なんて行ったらどんな目に遭うか分からないわ。」

「トリス、安心してくれ。あそこの大陸に住んでいるのはほぼ魔物との混血ばかりだ。髪の色なんて気にするやつは居ないさ。」

「ほんとう?でもグリスウェア大陸ってここからそんなに遠くないじゃない。良くない噂が流れているに違いないわ。」

「グリスウェア大陸の入り口は一つしかない。その入り口までの道は過酷だ。距離はそう無いといっても魔物が常にうろついてる所を通るような強者でそんな噂に耳を傾ける奴なんて居ないのさ。俺がその例の一人だったりするのさ」

「そうね、他でもないエルバークが言うんだもの。きっと大丈夫よ。あら、千尋居たのね。…もうっ…そんな顔しないの。貴方が悪いなんて思ってないわ。本当よ?」


ㅤトリスさんエルバークさん…俺はどうすればこの人たちに恩が返しきれるだろうか。支えられてばかりだ。


ㅤ今回のことの発端は俺なのだ。罪償いをしないと気が気でない。これも俺の勝手だな。


「トリスさん…俺がいきなり呪文を唱えたのがいけないんです。どんなものかも知らないのに…それにエリオまで巻き込んでしまって…うっ…ぅっ……ぅぁぁあぁ……」


ㅤくそっ…涙が止まらない。だがまだ流れてはいない、セーフだ。俺は涙を流さない男だってまだ言える。

「千尋、じゃあお願いだ。」


ㅤエルバークさんはいつもの風船のような雰囲気ではなく男として、見た目が三歳児の俺に言葉をかけた。


「もしもエリオが学校でいじめられるようなことがあれば、いや、学校でずっとエリオのそばに居てあげてくれ。あの子は一人っ子だ。千尋を連れて帰ってきたときなんてすごい笑顔だった。そんなエリオをまた一人にしてしまうなんてできない。レイブン魔法学校は6年間ある。6年間エリオを支えてあげてくれ。」


ㅤあぁ…エルバークさん…わかったよ。俺も男だ。それも涙を流さない男だ。


ㅤエリオを守る。こういってみるとかっこいいじゃないか。

ㅤ俺は涙を飲んで重く、深く頷いた。エルバークさん達もそんな俺を見て少し安心したようだ。


ㅤそしてそんな安堵の雰囲気を壊すかのように、俺の腹は突然黒く光った。


ㅤ!!!


ㅤ凄まじい痛みが体に襲いかかる。中から何かに切られているような感覚。剣をもったときの拒絶反応にも似た痛みが俺を襲い続けた。


ㅤぐっ………!!


ㅤ俺は叫ばなかった。こんな痛みなどに負けてられないんだ。俺はこんなところじゃ死なない!


ㅤエリオを守ると約束したんだ!


ㅤ痛みに耐えている時間は何時間にも感じられた。まぁ、実際には2分も経ってなかったようだ。俺があんな痛みに何時間も耐えられるわけがない。


ㅤ黒い光は俺の前に集まり、体から痛みが抜けてきた。そして黒い光と痛みを具現化したようなものが一つになり……


ㅤそれは禍々しかった。

ㅤ黒い刀身。柄の方まで黒く、黒い宝石のようなものが埋め込まれていた。


ㅤ俺の小柄な三歳児の身長に合わせた長さの剣が目の前に浮いていた。


「これは……」


ㅤエルバークさんが怪しげにそれを見つめている。


ㅤ俺はその剣を握った。体に電流は走らない。

「エルバークさん、トリスさん。俺はこの剣に選ばれたみたいです。」


ㅤこの日より、剣を持った俺はエリオを守る騎士となる。


ㅤとはいっても剣術習ってないから雑魚です。雑魚万歳。


ㅤでもいいんだ。剣を持って得られるものは力だけじゃない。

ㅤ責任なんだ。


ㅤエリオを守る。


ㅤ俺にそんな責任を背負う資格があるのか。


ㅤはっきりいうと現時点では資格なんてない。だが俺は力を持ったのだ。


ㅤ気法が使える可能性を。


ㅤ黒く光るこの剣を。


ㅤ俺は強くなる。誰にも屈さないエリオの盾となってやる。

「エリオは俺が守る!」


ㅤ決意をしたら自然に言葉が出ていた。


「私より弱いじゃん!」


ㅤ真っ赤な顔のエリオが俺の後ろにいた。


ㅤへへっ。いいじゃないか、弱くても。俺は弱くても勝つ。負けても勝つ。


ㅤそのためにまず何をすべきか。そんなのは簡単だ。


「エリオ、剣を教えてください。」

「私の指導は厳しいわよ!」


ㅤ即答だった。


ㅤちょっとはタメろよ!いい感じに俺がかっこいい場面だったのに!タメを作ることで俺の台詞が強調されてそれから…

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ㅤ一週間の月日が流れた。月日っていうか7日じゃん。ツッコミは自分でいれてみた。


ㅤ俺は毎日限界まで筋トレをし、その休憩時には剣を振った。寝床についたら気法を操る練習だ。


ㅤ1週間でできることが増えた。


ㅤ火は起こせるし、風も水も作り出せる。


ㅤエリオ達は魔力による詠唱でこれらの魔法を行っており、俺は詠唱しても魔法は使えなかった。


ㅤしかし詠唱せずに気を練る感覚を掴み、その練られた気が体の中で動かせる感覚を掴んだ。


ㅤ気を手に集めて放ったパンチは木を1本なぎ倒した。


「うおおおおおおおおお!」


ㅤその日は興奮して眠れなかったなぁ。


ㅤそしてエリオにも学校についての話がされた。本人は黒髪を全く気にしておらずむしろ気に入っているような一面も見受けられる。もちろん似合っている。


ㅤそんなエリオを見ていたら俺まで大丈夫な気がしてくる。


ㅤだが、大丈夫ではない。ガキどもに投げられた石は痛かったし、魔物に追い詰められた路地の壁は高かった。黒髪ってだけで生まれる障害がデカすぎるのだ。


ㅤエリオは強い。だが、精神は普通の15歳だ。


ㅤ俺たちが行くのは小学校みたいたところ。子供は思ったことをすぐに口に出す。そして数も多い。人の精神を壊してしまうのは数なのだ。


ㅤだが、そんなことはさせない。


ㅤ相手は見た目通りの子供。俺たちは見た目子供の中身は子供ではない。


ㅤ大人として、そんな子供は教育してあげなきゃな。


ㅤもちろんエリオを守るために。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ㅤ今日、俺とエリオは学校へ行く。


ㅤ寮がついており、俺たちはそこで新たな生活をすることになるそうだ。もちろん男子寮と女子寮は場所が違う。


ㅤチッ


ㅤ今の舌打ちはエリオの近くに居られないことに対する舌打ちだ。


ㅤほ、本当だよ?

ㅤグリスウェア大陸の入り口までは1週間程かかるという。しかし魔物が襲ってくる危険性が常にあり、そんな緊迫のせいで道中は1ヶ月にも感じられた。エルバークさんが派遣してくれた親衛隊が送ってくれなかったら死んでたな。


ㅤ結局、どこまでも支えられてばっかりだなぁ。


ㅤだけどこれからはそれだけじゃない。


ㅤ俺たちが通うレイブン魔法学校についた。


ㅤこれからは俺がエリオを守る番だ。この学校で沢山学び、鍛えて力をつけよう。胸を張ってエルバークさんとトリスさんに再会するために。


ㅤエルバークさんのツテで入学できたとはいえ、入学式はきちんと出ないといけないらしい。


ㅤ俺は久しぶりの雰囲気に浸っていたがエリオは学校に行ったことがなく、初めてのことに目を輝かせていた。目の輝きは校長の話が長引くにつれて段々と色褪せていったが。


ㅤ「ーーーーーをもって、入学の祝辞とさせて頂きます。」


ㅤ校長の話が終わってクラスへ移動かな? そういえばクラス割ってまだ見てないな。


ㅤどこかに提示されているんだろうか。


ㅤてか、もちろんエリオと同じクラスだよな?エルバークさんはその辺はしっかりしてくれてるはずだよな?


ㅤそんな心配をよそにいつの間にか校長が祝辞をした場所に軍人みたいな服装の金髪ロングの女の人が立っていた。


ㅤ誰だろう…大きいな、ぐへへ。いたっ。


ㅤエリオは最近こういうときによく殴ってくる。俺だって年頃だもの許してょ。


「貴様ら聞け。」


ㅤ見た目に釣り合わない低め声の言葉が入学式会場に響いた。


「貴様らにはクラス分けのために迷宮に潜ってもらう。4人で一つのパーティを組め。自分が座っている席の並びが4人になっているはずだ。初対面だろうが関係ない。では右の列の先頭のパーティからこちらについてこい。」


ㅤあれ?おかしいな?俺たちが入学したのは軍隊じゃなくて魔法学校のはず……


「何ぼーっとしてるの!置いて行かれちゃうわよ!」


ㅤエリオは迷宮と聞いてはしゃいでいた。周りの子供と中身もあんまり変わらないな。


「まっ、そういうところも可愛いんだけどな。」

ㅤわけがわからないといった表情のエリオを引き連れて前方の人達について行く。


ㅤそもそもこんな大人数が一気に入れる迷宮なんてあるのか?凄まじい広さなんだなぁ。


ㅤそんな事を考えていると目の前にゲートがあった。


ㅤエリオとあとの二人も驚いた表情だ。なんだこれは?という顔をしている。この世界には無いような機械っぽいゲートだった。


ㅤゲートが開き、中へ進むよう指示される。

ㅤこうして俺達の入学試験(クラス分け)は始まった。


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