表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/30

第三話-エリオさん怖い-

内容を変更しました。

(8/13)

 私はトリス・ファンネル。カレラ帝国の美人妻といえば私。


ㅤ最近自分の子育てに自信が無くなってきた。


ㅤ私がエリオを産んだ頃はまだエルバークとも結婚したばかり。エルバークは今では聖騎士団団長だけれど当時はまだまだ下っ端。毎日へとへとで帰ってきていたあの頃が懐かしいわね。


ㅤエリオはすくすく育った。綺麗なコバルトブルーの髪、海のような碧眼。若い頃のわたしにそっくりね。きっと美人になるわ、私に似て。そう思っていた。




ㅤ私の予想は大当たりだった。エリオは年を重ねるごとにどんどん綺麗になっていった。町にエリオをお使いに出した次の日には男の子が当たり前のようにやってきた。


ㅤ私が対処に困っているとエリオが二階から降りてきた。そのときにエリオが言った言葉は絶対に忘れられないだろう。こんな子に育ってたなんて…


「私は雑魚には興味ないわ。私より強い人だけ、明日もう一度来なさい。戦ってあげるわ。」



ㅤ私はその日の晩、エルバークを寝室に呼んだ。もちろんエルバークから全て吐き出させるために。色々と。


ㅤ案の定、エルバークはニヨニヨして寝室にやってきた。私もいつもアンナコトをするときの服を着ている。


ㅤが、私はエルバークを蹴り倒した。膝裏に一撃。まさか妻にそんなことをされるとは知らないエルバークは無様に跪いた。


「ト、トリス…!?な、なんで…」

「答えなさい。あなた…エリオといっつも何をしているの?」


ㅤエリオとエルバークは毎週何回か森の中にある広場に二人で行っている。優しい夫だと感心して私はそれを気にしていなかった。


ㅤだけど、だけど。もしかすると私の知らないところでエリオをあんな風に変えるようなことをエルバークはしていたのかもしれない。


「お、俺はただ…エリオに剣と魔法を教えているだけで…」


ㅤあっさりとゲロった。今わかった、原因はエルバークだった。



ㅤエリオはエルバークに影響されてずいぶんと勇ましい子になっていた。


ㅤ…それにしてもおかしい。


ㅤエルバークはなんていうか、ぽや〜っとした感じなのに、なんでそんな人との訓練でこんな風になってしまったんだろう。


ㅤ分からない。




ㅤ今日は空がおかしいとか言い出したと思ったら変な男を馬に乗せて帰ってきた。


ㅤ私は戦慄した。


ㅤその男は黒髪だった。


ㅤそしてほぼ裸だった。


ㅤ黒髪、大昔に平和なこの土地に魔物を発生させたといわれている。


ㅤもし黒髪が現れたら最後。悲劇が繰り返される。そんな噂も聞いたことがある。


ㅤだけど私は慌てなかった。エルバークが人を見た目で判断するな、と厳しく言っているからだ。黒髪がなんだ、そういうのがあるから閉鎖的な国になるんだ、と。


ㅤとにかく、私はエリオにこの半裸の黒髪の男のことを聞かなければならない。見た目で判断したから、ではなく家に入れようとしているからだ。


「エリオ、その子は誰?」

「助けたの!言葉も全く通じないみたい。だから家で保護してあげなきゃ。」

「服は無いの?」

「…うん。」


ㅤ面倒見がいいところは私に似たのかしら。少しは私の子育ても役に立っていたのね。少しは。


ㅤでも、それとこれとは話が違う。経済的には一人の子を養うくらいはいける。でも黒髪の少年を匿っている、などの噂ができてしまったら家族もメイドも皆に迷惑がかかる。


ㅤ私達は黒髪がなんだ、と言われ続けているからまだ大丈夫だけど…世間では私達のような人ばかりではない。


ㅤこの子には悪いけど髪を隠せるように服を渡してどこかに行ってもらおう。


ㅤ多分、そのまま死ぬだろう。私だってこんなことはしたくない。でも可愛いのは我が子なのだ。自分の娘に悪影響が出るようなことを進んでする母親は居ないだろう。


ㅤ私は許可しなかった。


ㅤそのせいでエリオにあんな顔をされるとは思わなかった。


ㅤだけどこれがエリオのためになる。


ㅤ私はそう信じて部屋へと戻った。




ーーーー



〜千尋視点〜


ㅤな、なんかさっき一瞬すっげー目で見られた。


ㅤまるで見てはいけないものをみたような…


ㅤあ、俺が裸だからか。解決した。初対面でほぼ全裸のやつなんて明らかに頭いってるもんな。


ㅤというかここはこの子の家だろうか。超でかい。日本っぽいつくりではないな。レンガ基調の2階建てなんて西洋風だな。おされですなぁ。


ㅤところでこの子は俺を家で保護する気だったっぽいけど、それを拒否されたのかな?

ㅤなんか優しい目で見られてる。か、可愛い。そ、そんな目をされると心に来ちゃうからやめてよ。


ㅤと、思ったら今度は腕組みをして何かを考えている。いちいち動作が大きくて可愛いな。さっきから可愛いしか言ってねえな、だって可愛いもん。



ㅤよし、雰囲気を変えて実況してみよう。可愛いとか言ってられんはずだ。たまには違うことしないと偏った人間になっちまうからな。


ㅤおおっとぉ!今度は何かを閃いたようだ!俺の手を掴んでズカズカと何処かへ行く!速い!歩いているだけなのに速い!何てスピードだ!


ㅤ向かう先に見えるのは倉庫!明らかに何年も使われてないようなボロさだ!もしかして、もしかすると……


ㅤ開けたー!倉庫を開けたー!そして俺はそこに…入れられたー!幽閉だぁー!



ㅤ…え?


ㅤって、何でじゃぁ!何のゆえに俺がこんな倉庫にぶち込まれなあかんのや!


ㅤ閉じ込められたらなんとなく外に出たくなる。脱獄犯の気持ちがわかってしまった。


ㅤだせ!だせ!と言わんばかりに扉を叩いてみた。びくともしない。扉はかなり重かった。こんなもんあの子どうやって開けたんだよ。


ㅤすると滑らかに扉が横に開いた。向こうから鍵をかけてたらしい。


ㅤって閉めたら出られないじゃん!殺す気か!


ㅤその子はまた優しい目をして俺に服をくれた。そして何か言っていた。何て言ってるから分からんけど…もしかして匿ってくれてるのかな。


ㅤこうして俺は夢のマイホームを獲得した。


ㅤじゃなくて、異世界に来て一日目。可愛い子に保護された。


ㅤそして異世界で始めて服を着た。




ㅤ女物の。



ーーーー




ㅤ明くる朝。


ㅤ俺は町に連れていかれた。


ㅤ町に来てみると俺は凄まじく視線を感じた。皆俺を見ている。なんだろうね。俺はこのままエリオコースがいいんだけど。


ㅤあ、エリオってのは俺を助けてくれた子だ。なんかエリオって聞こえる言葉を連呼して自分をバンバン叩いてたから自己紹介だろう。


ㅤ俺もチヒロと名乗った。通じたみたい。こんな可愛い子に名前呼ばれるの嬉しいね。つい色んなこと考えちゃうナ。


ㅤそれはさておき、エリオは野菜を買っていた。きっとお使いだろう。それに乗じて俺を連れ出したのだ。


ㅤだが、なんだ。この異様な視線は。俺の顔に何かついてるってのか、ああん。


ㅤあ、ごめんなさい。いや、ほんとすいません。何にも言ってないですハイ。


ㅤ俺が周りの視線を見返すと数人の男の子のグループがやってきた。みんな金髪っぽい髪の毛だ。西洋風だなぁ。


「ngaa'lgs_ts!」

「n_vpea)pwp!!!」


ㅤ突然訳の分からない言葉を言い出したかと思うとそのグループのガキ共が石を投げてきやがった。


ㅤいって!あたりどころ悪かったら死ぬって!おい、やめ…やめろよ!


ㅤ周りの人たちは恐れるような目をしていた。そしてその目は俺の方を向いていた。意味が分からない。


「xvrdgpmggm!!」


ㅤもう一つワケワカラン語が聞こえた。もうこんな言葉ワケワカラン語でいいや。


ㅤその声は俺に近づいてくる。ああ、もう一人加わるのか。やべえな、どうしよ。


ㅤそう思っていたら俺に石を投げていた連中の一人が悲鳴をあげた。股間を押さえている。大体想像はついた、ドンマイ。


ㅤ加害者であり被害者でもある彼を心配していると他のガキ共の悲鳴も聞こえ、石の雨は止んだ。


ㅤそして声の正体はエリオだった。もしかしてこの一瞬で全員を戦闘不能に…?この可愛い女の子が?へ、へぇ。


ㅤエリオは何事もなかったかのように俺の手を掴み、次なる買い物へ向かった。


ㅤなんで…あんなことされたんだろう。まぁいい、今は放っておこう。


ㅤ俺は腑に落ちない点ばかりだったが、とにかく今はエリオとの買い物を楽しむことにした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ