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第二十一話-遭遇-

またまたまた題名詐欺しました。すみません。

ㅤはい、こんばんわ。


ㅤえーとね、何というか…慣れた。


ㅤ何にって?いや、アレだよ、アレ。つまりはグロ耐性が付いたってことだよ。


ㅤえ?早すぎ?詳しく説明しろ?


ㅤわかったわかった。いいか、聞けよ?


ㅤミノタウロス倒した。ベックが料理した。超旨かった。慣れた。


ㅤはい。…まだ聞き足りねえって感じだな?あのなぁ、ちゃんと聞けよ?人間腹が減って死にそうだったら何でも食えるんだよ。ましてやその食ったもんが本当に旨かったらどうなると思う?


ㅤそう、もう食糧にしか見えなくなった。ミノタウロスは食糧、それも旨い。


ㅤ俺があいつらに襲われたのをきっかけに俺たちは定期的にミノタウロスに襲われてるのよ。まぁ、そのときのエリオが強いこと強いこと。


ㅤ入学試験のときのエリオはどこに行ったのかね。嬉しいような悲しいような。ま、俺のほうが断然弱いだろうけど。


ㅤエリオはベックとの訓練で魔法を剣に乗せる練習をしてたみたい。でも剣と相性が悪いせいで剣が魔法を避けるらしい。これも黒髪の影響だとベックは言っていた。ほんと、すまんね。


ㅤ聖魔法と相性がいいはずのエリオの白剣が黒髪せいで魔法が乗らないのに何でエリオはあの剣持ち続けられるんだろうな。


ㅤなんか、引っかかるけど…剣が情けをかけてくれてるとかそんなんかな。


ㅤ剣に魔法は乗らなかったものの、エリオの魔法は以前より明らかに強くなっていた。


ㅤ正確な魔力のコントロール、素早い反応速度。どれもベックには劣るものの前線で戦えるレベルだろう。


ㅤ俺はというと…ごめん、ミノタウロスの旨さにハマって料理の勉強してたわ。


ㅤそう、ほぼ!進歩しておりません!


ㅤ少しは進歩したよ?前までは気を使って木に1つの穴をあけるので精一杯だったけど、今では2つ同時にできる。


ㅤしかも前は格好付けて手を前にバッと出してやってたけど、手とか出さなくても使えたわ。


ㅤ……これってさ、強いよね?


ㅤ俺もしかしてすごい強くない!?だって気とか使える人あんまり居ないしさ!ましてや体動かさずに発動出来るしさ!


ㅤそういう感じでベックに聞いてみたら「気の流れが見える魔物も人間も居るぜ、俺とかなー」と言っていた。


ㅤまぁ、見えるのと避けられるのは別だけど絶対に当たるって考えるのはやめておこう。常に最悪を想定しないとな。


ㅤよしよし、俺もいい感じに成長してるな。


ㅤ…俺のこういう所がダメなとこだな。満足ダメ、絶対。




ーーーー




ㅤ森に入って5ヶ月が経った。


ㅤ結構森を歩き回って修行してたけど、まだ月光熊の姿すら見てない。本当にそんなもんいるのか?って疑うレベル。


「おいおい、馬鹿言うなよ?森は超広いぜ?まだまだ80%くらいしか歩いてないぜ?」

「それ結構歩いてるじゃない!」


ㅤそうだともエリオ、もっと言ってやれ。


「あー、わかったわかった、悪かったよ。お前さん達が月光熊を見かけないのは俺のせいだ。」

「えっ?先輩、どういうことですか?」

「森をちょっと歩いては、ひーこらひーこら言うような要介護人間を連れて戦える相手じゃねぇってこった。自分の身くらいは自分で守れるようじゃねぇと話にならん。」

「つまり…成長を待っていた、と。」

「さすが千尋。そういう理解だけは速くて助かる。」

「だけは余計で…」

「そうよ、千尋はこういうのだけは速いのよ。」


ㅤしゅん…俺悲しい。


「だけどそろそろ大丈夫な頃合いか?お前さん達もう1週間ほぼずっと歩いてるけど息全然上がってねぇよな。」

「確かに…そうね。足場の悪さにも慣れてどこでも踏み込めるわ。」

「じゃあ、お披露目と行くか?と、その前に忠告だ。」


ㅤベックは人差し指を立て、ウインクをした。かっこいいけど気持ち悪い。話し方の割に時々おネェっぽいの治らねぇかな。


「奴は、目が効く。そして速い。だから見つかったらほぼ逃げられない。」

「倒せばいいのね。」

「そう簡単にはいかねえよ。奴は魔力を食う。主に食ってるのは月から漏れてる魔力だ。この森に月から漏れる魔力がよく溜まる場所がある。そこが奴の穴ぐらだ。」

「魔力を……魔法が効かない、ということですか?」

「特に、聖魔法がな。魔物のくせに聖魔法が効かねえ。エリオの魔法はここでは役に立たねぇ。だが…」


ㅤ少しはエリオはしょんぼりしていた。そりゃ、得意の魔法がダメって言われちゃテンション下がるわな。


「最後まで聞けよ?月光熊は他の魔物を従える。そいつらには有効だ。数が多くてもお前さんのホーリーフラッシュならいちころだろ?」

「そ、そうよ!余裕だわ!」

「ここまでの忠告は全て、奴に見つかったらの話だ。そして最後に最も大切な忠告をする。」

「見つかるな、ですね。」

「そうとも千尋。万が一見つかったらこれを地面にぶち当ててその場から逃げろ。何もないよりはマシだ。」


ㅤベックはそう言って変な玉を渡した。何だこりゃ。煙玉か?モン○ンみたいだな。あれ、そんなもんなかったっけ?


「いいか、逃げるときは直線でも曲がってもダメだ。」


ㅤどうしろってんだよ。地面を掘れってか?


「魔法でも剣でも使って地面を掘って逃げろ。この辺は張り巡らされた根のおかげで洞窟が沢山ある。運がよけりゃそれに繋がって逃げられるかもしれん。」


ㅤわぉ、まさかの正解。


「そんなことしなくても木に登ればいいじゃない。」

「木ごと吹っ飛ばされてホトケだぜ?」


ㅤこのくそでかい木を吹っ飛ばすとか…その熊もしかして戦車じゃねぇだろうな。魔力を食うとかいいながらガソリン食ってるだけ、とか…ないよな?


ㅤフ、フラグとかそういうんじゃないからねっ!




ーーーー




ㅤどうも千尋です。ただいま月光熊を前方に捉えております。


ㅤえー、フラグなんてありませんでした。へし折れてました。


ㅤ湖の水を飲んでいる月光熊は明らかにおかしい。デカすぎる。木の幹の二倍くらいある。


ㅤ木の幹ってのが俺の両手のはばくらいはだぜ?それの二倍だよ?トゥー千尋だよ?


ㅤ(アレだ、絶対に動くなよ。見つかったらおしまいだからな。)


ㅤ(分かってるわよ。今回は見るだけ、でしょ?)


ㅤ(ああ、実際にみてないといざってときにすくんじまったら意味がねえからな。)


ㅤあのエリオがぼそぼそ話すってのもなんか可愛いな。げへへ!


ㅤ水を飲んでいる月光熊に足音が一つ近づいてきた。俺たちとは反対側からだ。月光熊の正面の方向からそいつはやってきている。


ㅤミノタウロス。それなりに多い。10匹くらいの群れだろうか。


「グルゥゥォ。グルゥグルォォォ。」


ㅤ……ん?もしかして…何か話してんの?す、すげー!ぷち感動!


「ガァァアァァアアアッ!」



ㅤそれは一瞬だった。

ㅤ月光熊は見えないほどの速度で、話しかけていた〈かも〉しれないミノタウロスの頭をぶっ飛ばした。


ㅤ残されたミノタウロスは声をあげることもなく、その場に倒れこんだ。


ㅤあいつらに表情ってあるんだな…明らかに怯えてる感じ。


ㅤ月光熊は倒れこんだミノタウロスを数匹踏み潰し湖に投げ捨てた。魚に餌やりでもしたのかな?ミノタウロスの肉は焼いたほうが旨いって教えてやりたいな。


ㅤ(さて、そろそろ帰るぞ。)


ㅤベックがそろ〜っと振り返り、押し殺した声を漏らす。


ㅤ(そうですね、ミノタウロスの肉は惜しいけど帰りましょう。)


ㅤ(お前さん…完全にハマったな…)


ㅤだって旨いんだもん。


「キャッ!」


ㅤあらやだ、女の子らしい声だこと。


ㅤエリオが腐った地面を踏み抜いてしまい、びっくりして声をあげた。


ㅤあれ?詰んだ?見つかってジエンド?


ㅤエリオは咄嗟にしゃがみこんで草で身を隠す。ベックは木の幹に隠れた。


ㅤ俺は…うん、大丈夫。俺もベックと一緒に隠れてるもん。


ㅤだが、まずいな…さっきの声は聞かれたはず…俺たちの臭いとかもわかるんじゃないだろうか。


ㅤ(先輩、大丈夫なんですか?)


ㅤ俺はベックの顔色を見た。俺は冷静を振舞おうと頑張って青ざめそうなのを我慢してるってのに、こいつは笑ってやがる。それも声を出して。


「最後に忠告だ。いや、これは忠告ではないな。奴は目はいいが、鼻は効かず、耳も悪い。」


ㅤ(つまり…見つからければ喋っててもバレない、と?)


「あー、もう普通に話していいぞ。さっき言うの忘れてただけだからよ。」

「さっきの私の声も大丈夫ってこと?」

「ああ、だがまだ動くなよ?見つかったら本当にやばいからな。」


ㅤこ、この野郎。先に言えよ。ぼそぼそ話すからすっごい緊張してたのに…緊張返せ!


「わかったわ!次は気をつけるね!」


ㅤそう言ってエリオは腕をくんで立ち上がった。自信に満ちた表情だ。うん、実にいい。エリオは切り替えがはやくていいな。


ㅤでもな、エリオ……


ㅤ青ざめたのは俺とベック。


「ガァァアァッ!!!」


ㅤ響いたのは月光熊の声。エリオが見つかったのだ。



ㅤその日の月は完全に満ちていた。


ㅤ一番月の魔力の影響が大きくなる日、満月。なんでこんな日にベックの野郎は月光熊を見に行くなんて言い出したんだ。


ㅤあ、俺たちが言ったからか。


ㅤ凄まじい速度で走り寄る月光熊。なんかもう戦車より怖い。フラグ以上だわ。


ㅤ煙玉っぽいものを地面に投げつけ、俺はエリオを引き寄せた。


ㅤそしてベックが地面に気法をぶっ放す。


ㅤ地面に大きな穴が空き、俺たちは落ちていった。


二人ともだんだん強くなってきました。


次回は成果です。

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