第十三話-図書館-
前回、ロクノという現代語でいうところのペンがでました。しかしこれからはロクノと表記せずにペンと書きます。
ㅤよう、みんな。元気にしてるか。
ㅤ鉛筆の一件で学校の売店に白い紙が売られるようになったぞ。てか売店とかあったんだね。今度行ってみるとするか。あ、お金ないんだった。うふふ。
ㅤそれはさておき、今日は日曜日で学校は休み!俺は今学校で最大の施設とも名高い、蔵書数20万冊を誇るレイブン魔法学校図書館に来ております。見てくださいこの本棚の高さ!上のほうとか取れねーじゃん!
ㅤ上の方の本は取れない?そう言いたいのはやまやまなんだけどな。うん、やっぱり魔法ってすごいね。
ㅤほら、見てみろよこれ!魔法の絨毯!これはエリオが前に言ってた魔力がない人でも扱える魔方陣が組み込まれた絨毯だな。この上に乗るだろ?で、この青い部分に手を当てる。すると上にあがるんだ。もう言わなくても想像は付くだろうが、赤い部分を触ると下にさがる。んでこっちの十字架みたいなので平行移動できるってこった。
ㅤ俺はこの超便利な絨毯で図書館を飛び回って何をしているか。ふふふ、俺はもう文字が読めるからな、家に居た頃より沢山の本があるんだからこれを利用しない手は無いだろ?
ㅤでは、何を調べるか。決まってるじゃないか。クレンシュナ先生のバストサイズとかエリオのバストサイズとか…ハッ!……色々大事なこと調べんだよ!
ㅤそれにしてもこの図書館は広いな。なんじゃこの広さは。ハンバーガー何個分だよ。とりあえず自力で探しても数日は見つからんだろうな。
ㅤここは図書館、ということは司書もちゃんと居るってことだ。これに気づくなんて流石は俺。早速司書を探してみるか。探すと言ってもカウンターに居るのは当たり前だろうしカウンターに行くだけだけどね。
「すみません、探したい本があるんですけど。」
「うるせぇ帰りやがれくださいませ。二度と話しかけんじゃねぇぞございます。」
ㅤほぇぇぇーーーっ!?なんでぇぇぇーーーっ!?なんでこんな酷い言い方されるの!?幼い見た目の俺に容赦ねぇな!というか丁寧な語尾つけても全然誤魔化せてないよ??モロ貴方の意図伝わっちゃってるよ?
「聞こえませんでしたか?そこにどのジャンルがどこにあるかの表と地図がありますので一刻も早く立ち去ってください。」
ㅤうぅ…俺が何したってんだよぉ。もしかしてこの人カレラ帝国出身なのかな?そういえば俺黒髪だったな。ザメリが侮辱してくるとはいえあいつの言い方は黒髪を嫌ってる感じじゃないから黒髪が世間的には嫌われてるっての忘れてたな。
ㅤ言い方は酷いが一応は教えてくれたんだ。それだけでよしとしよう。うん、優しいな。The 寛大。
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ㅤうーん、黒髪に関する本って何に分類されるんだろう。歴史、呪いと一番近そうなものを全部探したんだけど全く見当たらないぞ。
ㅤ哲学とかかな?もう3ジャンル目だ。とりあえず今日はこれで最後にしよう。もうちゅかれたよー。
ㅤ俺は本棚を舐め回すように隅から隅まで哲学のジャンルの本棚を全て確認した。黒髪のくの字も無かったが俺は一つ、気になることを発見した。
ㅤやけに、天動説がどうたらーって本が多い。地球様が中心で周りを他のもんがクルクル回ってる、とかいうやつだな。俺の常識で言うと天動説は間違いだ。だが間違いの説の本をここまで大量に、しかも大陸の中でも指折り数えるほどの有名なこのレイブン魔法学校図書館にあるものなのか?
ㅤ少し興味が湧いて「サルでも分かる天動説」という本を手にとって読んでみることにした。ページを捲るにつれて見るからにバカバカしい内容が書かれていた。
ㅤこの本によるとこの世界には終わりがあるってよ。終わりって何だろう?と思ったけどすぐにそれも分かった。全ての物質が活動をやめる、とかなんとか。難しくてあんま分からんかった!まぁ、行ったら死ぬってことだな。
ㅤもしこの世界を中心に他の星がまわってるとしたらこの世界の裏側はどうなってるんだろう。おおお!すげー気になること発見した!
ㅤ…ま、そんなわけないけどな。
ㅤ俺は図書館を後にし、何の成果も無いまま一日を終えた。
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ㅤ次の日、俺は昨日の天動説の話をエリオ達にしてみた。何故かザメリのやろうが話に参加してるが…まぁいいか。また何か言い出したら怒鳴りつけてやる。
「…で、千尋は結局何が言いたいわけ?」
「ガハハハ!俺様も何が言いたいのか分からなかったな!」
「ボ、ボクも……」
「私もよく分からないな。もしかして黒髪には…」
「えっ!?何が言いたいか分からないってどういうこと?天動説なんてありえないし世界の果てなんて無いよね?って話だけど…」
ㅤザメリが何かほざく前に割り込んで俺は尋ねた。
ㅤそれにしてもなんかこの雰囲気は最近もあった気がするぞ。い、いや、ない。天動説は流石無いよな!あり得ないもんな!アハハハハ!なんで焦ってんだよ俺!そんなの当たり前じゃあないか!
「千尋さ…大丈夫なの?天動説は正しいし、それ以外の説は存在すらしてないわよ?」
「え?」
ㅤ出ました。俺の常識が常識じゃないやつ。でもこれだけは間違ってると思う!だってありえないじゃん!はやくコロンブスでもなんでもいいからこの世界が丸いって証明してくれよ!
「い、いや…それなら…そうなのかもな。変なこと言い出して悪かったよ。」
ㅤ俺が急に意見を変えたことに少し戸惑ったのか、席に戻ろうとする俺を止めようとする人居なかった。一人を除いては。
「どうした?朝から貴様は元気がない。」
「ひぃっ!そ、そんなことありませんよ。」
「いいから言え。今度は何を考えている。」
ㅤ丁度教室に入ってきたクレンシュナ先生は俺の身長に合わせ、しゃがんで俺をまっすぐ見つめた。て、照れる。
つーかもう言わねーと殺されそう。ここは正直に言うしかないな。
「先生…カクカクシカジカって本当ですか?俺、どうしても信じられなくて…」
「そんなことか。それなら本当だ。私はその世界の果てをこの目で見たことがある。」
「えっ!?」
ㅤま、まじかよ!実際に見た人が現れましたわ!これは信じざるを得ない!でも…実際に見たって…もしかして…
「先生、世界の果てとは実際に見るとどのようなものなんですか?」
ㅤ先生は少し眉を顰め、悲しそうな顔をした。しかし、すぐに元の顔に戻り、俺達に言った。
「あまりいい話ではない。面白がって広めたら殺す。さっき貴様が言っていたように本当に全ての物質が活動しなくなる場所だ。そこで海も、山も大陸も途切れている。そして、私の昔のパーティのメンバーが好奇心に負けて走り込んで、走り込んだままの姿で今もそこに居る。片腕だけを突っ込んでしまい、その片腕を失ったやつもいる。簡単に言えばそこにいけば死ぬ。そういう場所だ。」
ㅤ言葉が出てこなかった。さらっと殺害を宣言されたからじゃあない。
ㅤ先生は過去にパーティで冒険をしていて、そのパーティメンバーで世界の果てを見に行ったときに、仲間が死んだり片腕を失ったりした、ということか。いや、サラッと言える内容じゃないよね?世界の果て怖すぎだろ!
ㅤ俺は何とかこの重い空気を変えようと他の話題を探した。そして図書館に黒髪の本が見当たらなかったことを思い出し、そのことを聞いてみることにした。
「せ、先生!俺は昨日この学校の図書館に行って黒髪の歴史について調べようと思ったのですが、黒髪についての本が全く見当たりませんでした。心当たりのあるジャンルを全部探したんですが黒髪の歴史について書かれた本は一冊もありませんでした。黒髪の歴史の本ってジャンルは何になるんですか?」
「千尋くん。君は何を言ってるんだ?ずっと昔に黒髪の歴史の本は持つことが禁止されただろう?私は当時のことは知らないけど、今は少なくとも図書館のような公共の場所には黒髪の歴史の本は無いはずだよ。」
「ザメリの言う通りだ。だが黒髪の歴史についてなら少しは話せる。一般教養レベルでしか分からないが聞くか?」
「聞きます。先生教えてください。」
ーーーー
ㅤ先生が話してくれたのは本当に一般教養レベルで、俺が小さくなる前にエリオの家で聞いた話とほぼ変わらなかった。
「…と、このくらいしか知らん。これは一般教養で、誰でも知っている話だ。黒髪が勘違いで人間にも魔物にも嫌われてしまったと誰しも習うのだが、やはり黒髪であることは嫌われる原因だ。勘違いだったと教えられても根強くついた習慣はなかなか、いや、全く変わらない。貴様はこれからも虐げられるだろう。」
ㅤやっぱりそうだよな。勘違いだって教えられてるなら大丈夫じゃないのか?なんて思ってたがこの学校でできた友達と言えばガビンとサーヤ……ザメリは…微妙だな、俺はこいつ嫌いだし。そのくらいしか居ない。死ぬまでこのわけのわからん異世界で黒髪だというだけで虐げられてしまうのか。エリオには本当に取り返しのつかないことをしてしまったな…
「だが、気にするな。これは命令だ。千尋、エリオ、貴様らの周りにはこいつらが居る。私も居る。私達は絶対に黒髪だから、などといって差別はしない。そうだろう?」
「ガハハハ!もちろんだ!相棒とエリオはいい奴だからな!」
「も、もちろん!ボクは…逆に居てもらってる立場だけど…」
「私もですか?もちろん私は千尋くんやエリオくんを差別したりしない。まだまだ黒髪について理解が足りず、千尋くんを怒らせてしまうが差別するつもりはない。」
ㅤ黒髪には謝ると怒る習慣があるから怒らせても謝らないように、とこの前学んだし徐々に理解は深まっているはずだ、とザメリは付け加えて席についた。こいつ…いいこと言ったと思ったら最後に余計なこと言いやがって…
「だから私がこの特別クラスの担任になっている。安心しろ、千尋、エリオ。貴様らは決して一人ではない。そろそろホームルームが始まる。席につけ。」
ㅤ一人ではない、か。エリオを絶対に守る、と決めたときから一人になることは覚悟していた。だが、思えば俺は学校に入ってから一瞬も一人じゃなかった。
ㅤガビンやサーヤがずっと一緒に居てくれた。それに先生も…ザメリはいいんだよ!ほっとけ!
ㅤこうもはっきりと言われるとなんだか安心するな。俺はいい友達と担任に恵まれた。エリオが黒髪といって魔物扱いするやつはここには居ないだろう、一人を除いて。
ㅤ先生はかっこいいな…俺も…いつか先生みたいな人になりたい。強くて、まっすぐで、怖いけど優しい。そんな人に。
ㅤ
クレンシュナ先生は元冒険家でした。
因みに世界の果てに行くパーティはかなり強い人達です。
次回はザメリ視点で黒髪の生活です。




