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無解決探偵って需要ありますか?  作者: わゆ
【2章】ヒトとケモノと
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ヒトとケモノと 2-3

「話が逸れてしまいましたね、失礼しました」


 煤木さんはスッと何事もなかったように話題を切り替える――まるでなにかを秘めるように。


「本題に戻させて頂きます。我が研究所の理事長である佐々と暇さんのやり取りに関してです」

「続けて下さいっす!」


 匁流君も気付けば何事もなかったご様子――まるでなにかを誤魔化すように。


「相談役を断られたので理事長の個人的な話し相手として暇さんと交流を持たせて頂いたのですが、その内容及び結論についてお二人の率直な意見を聞かせて欲しいと思っております」

 私たちの意見……?仁さんではお気に召さなかったのか?


「理事長は大変満足されていましたが、私個人として同じ探偵事務所に籍を置いている方の意見も知りたかったというのが本音です」

「そうなんすね、良いっすよ!」

「あ、はい……私も問題ありません」

「ありがとうございます」


 少しずつ心拍が上がっていくのを感じる。


「まずは……我が研究所で行われていることからお話した方が良いでしょうね。生物動物学や動物生命学からもう少し踏み込んで科学と融合させた研究をしており、潜在能力の解析や発現、遺伝子情報の保全や解明、新たなバイオテクノロジーの開発や発展などを行っています」

 ……うん、なるほどなにも分からん。


「簡単に言えば、動物を多面的に利用しようってことになりますね」

「わー、凄いザックリ端折ったすねー」

「ふふっ、火芽さんには少し難しかったようですので」

 ウキィィィ!初めて会った艶髪美人にもバカにされたー!


「失礼しました。反応が可愛らしくて」

 キャー!艶髪美人に褒められたー!

「褒めてないっすよ……ヒメちゃん」

「続けますね」

 私を無視して話は続く。


「それ自体は様々な大学や企業や研究所で日々研究されているテーマではあるのですが、理事長と一部の研究者でチームを作り、とある領域に踏み出しました」

「とある領域?禁書目録と呪術のコラボっすか?領域展開――男女平等パンチ!……って、ウケる」

 匁流君、ここでボケないで!訳分かんないことになる!


「それも面白そうですが、動物を利用して人類の可能性を拡張させるということです」

 華麗に躱されてるよ?

「拡張っすか?」


「可能性の拡張――その為の3つのプランが我々にはあります」


「聞きたいっす!」

 私はそうでもない!


「私たち人間も当然ですが動物であり、分類学上だと生物、真核生物、動物界、脊索動物門、哺乳綱、霊長目、ヒト科、ヒト属、ヒト種という分類をされています。学名だとホモ・サピエンスなのでホモ属のホモ・サピエンス種ということですね。より細かくすると亜種や品種も出てくるのですが……いや、今はいいでしょう、続けますね」

「ちょっとタイムっす!ヒメちゃん!さっき話していたゴリラ・ゴリラ・ゴリラってのは、ゴリラ属のゴリラ・ゴリラ種のゴリラ・ゴリラ・ゴリラ亜種って分類っす!」

「色々と無理!さっきの話が伏線みたいになっちゃってるのも意味分かんないし、そもそも生物学?分類学?……良く分かんないけど頭パンクする!」

 え、そんな当たり前に知ってることだっけ?義務教育で履修済み案件?


「おバカなヒメちゃんは無視して続けて下さいっす!」

「分かりました」

 分かるな!


「これはある程度解明出来てしまっているので早々に切り上げたアプローチでもあったのですが、プラン1は"人間と動物の交配"です」

「面白そうっす!」


「生物A、Bの交配成功率は先程の分類の一致度でだいたい決まります。例えば、そうですね……品種だけ違う場合は問題なく交配可能で、例だと犬種の違う犬同士の交配でミックス犬が産まれるとお考え下さい」

「おぉ、分かりやすいっす!」

「次に、亜種から違う場合も問題なく交配可能で、例だと犬と狼の交配です」

「おぉ!」

「続いて、種から違う場合……ここから交配が出来ないとされています。マイヤーの生物学的種概念って聞いたことありませんか?」

「おぉ!あるっす、あるっす!」

 えっ……全くの初めましてですよ?


「ですが、意外と言いますか例外が増えていると言いますか……父ライオンと母トラの交配でライガー、父ロバと母ウマでラバ、父シマウマと母ウマでゼブロイドなど、種間交配に成功した例は色々と報告されています」

「ラバは有名っすよね!」

 ゼブロイド……格好良い……


「次に、属から違う場合……こちらも交配は出来ないとされていましたが、キジとニワトリの属間交配の報告などもあります。ただ現状だと成功率は相当低いです」

「キジとニワトリは面白いっす!」

「次に、科から違う場合……こちらは植物では成功例がありますが生物だとほぼ不可能とされています。例だと犬と猫が分かりやすいと思います」

「確かに!」

 でも、犬と猫のミックスはちょっと見たい……可愛いと可愛いを合体させたら物凄く可愛くなりそうじゃない?


「ちょっとした例を挟みつつ理解度を上げてもらった所で、人間に当て嵌めてみましょう」

「なんか授業っぽいっす!」

 うっ……頭が……イタイイタイ……


「当たり前ですが人間同士は交配可能です。分類だと亜種まで同じなので」

「っすね!」

「次に、人間と違う種だとどうでしょう?例は人間とネアンデルタール人ですね、こちらも交配可能とされています。過去のDNA調査でホモ・サピエンスとネアンデルタール人が交配していたというデータも報告されています」

「おぉ、なんか神秘っすね」

「次は、人間と違う属の場合……例だと人間とチンパンジーです。こちらは未だに成功例はありませんが分類学上だと可能性があります。ヒューマンジーの誕生は気になりませんか?」

「なるっす!」

 ……なんか嫌だな。


「ただ、違う霊長類同士の属間交配は成功例が挙がっています」

「マジっすか!」

「チンパンジーもそうですが、ボノボやゴリラなどの類人猿は高度な進化を遂げた動物であり、人間とDNA類似率が近い関係にあるのもご存知ですよね?」

「もちろんっす!」

 類人猿ってそういう意味だったのか……


「あくまで一例ですが、猫で類似率90%と発表されたり、家畜の牛だと約80%、昆虫だと約60%、バナナも約60%のそれぞれ類似率の報告があったりします」

「数字だけ見ると、全体的に近い印象っすね」

 昆虫と約60%同じDNAなんだ……やっぱり虫なのか、私!?


「話を戻します。続いて人間と違う科の場合……ほぼ不可能とされています。例だと、人間と非類人猿です」

「ほう」

「これ以上は限りなく不可能とだけお伝えしておきます。鳥人間や魚人はフィクションという訳です」

「おぉ、なんかショックっす……」

 何故にショック?


「結論としては簡単ですが、分類学的に見た人間と動物の交配ですが、異種間での交配が上手くいかないのは生殖的隔離が原因とされています。また、先程軽く触れたDNA類似率ですが、人間とチンパンジーだと約98%なので数字だけ取り上げると交配出来そうに思えるのですが、ほんの2%違うだけで成功例が未だに挙がってこない程に下がります」

「人間とバナナだと約60%って話なんで、数字だけ見るとワンチャンって思っちゃうっすもんね」

 ……それだと虫ともワンチャンになっちゃうよ!絶対にヤダ!!


「数字のマジックとも言えるかもしれませんね。後、勘違いされがちですが、染色体の数はそこまで関係ありません。必ずしも同数でなくても交配に成功している例は多いです」

「ほう!ほう!」

「ただ、現在でも異種間交配が上手く出来ない理由は完全には分かっていません。ゲノムインプリンティングがなにかしら関与しているんじゃないかとも言われていますが、我が研究所でも現在調べています。今後の研究結果に期待しましょう」

「そうっすね!」

 頭パンクしそう……


「それで、なんでプラン1が人間と動物の交配だったんすか?それが人間の拡張に繋がるんすか?」

「もちろんです。人間と動物の交配で生まれた新しい生命体であれば、現人類より数段に身体能力や処理能力の覚醒や向上がなされて、今以上に長寿を目指せたり種の繁栄に繋がると考えたからです」

「へぇ……」

「猿の惑星に登場する猿人の誕生などが分かりやすいですね」

「侵略されちゃうっすね」

「より強靭でより明晰な新たな人類の誕生――これは人類の進化という名の拡張だと思いませんか?」

「まぁ、そうっすね」


「ですが、現在は凍結されたプランになります」

「なんで止めたんすか?」


「交配に関してだけ言うと研究する価値があるのですが、それ以上に繁殖させることがより厳しいと判断されたからです」

「繁殖っすか」

「そうです。仮に新人類を誕生させられても染色体数の問題で繁殖出来ない可能性が非常に高い。一個体のみ存在出来ても人類全体の拡張には至らない――そう判断され我が研究所では残念ながら凍結という結論になりました」

「そうなんすねー」


「まずはプラン1の内容でしたが、お二人の率直な感想は?」


「現人類を見限った内容に感じたのでなしっすね」

「猿の惑星のDVDをレンタルしようと思いました!」


「そうですか。貴重なご意見ありがとうございます。次にプラン2へ移りたいと思います」

「待ってたっす!」

「それは――」


「あ、あの……!」

「火芽さん、どうされました?」


「あ、あのぅ……大変申し上げ難いのですが、思考回路が短絡されてしまい頭から火花が出そうな勢いなので、甘いモノでも食べながら小休憩しませんか?」

 もう限界だった。内容が難しいよ!授業受けてる嫌なこと思い出しちゃったじゃん……もっと芸能人のゴシップみたいな知能いらない話とかしようよ!


「ヒメちゃんはホント尖った知識っすねー、その流れで短絡って言うなんて」

「ふふっ、もちろんです。私のつまらない話に付き合わせているのですから、ご遠慮なく」


 冷蔵庫に入っていたチョコ菓子をテーブルに広げて少し休憩――未来への投資ではなく今へ糖資をしたい、情けない私なのだった。

次話は31日7:00に投稿予定です。

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