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第五・第六・第七の試練、そして……

『第五の試練は、わたくし、座天使ガルガリンが担当いたします。この試練では、挑戦者の皆さまに一人一隊の旅商人を護送していただきます。守ることは、攻めることよりも難しい。”最後の実力試練”に相応しいものになるかと思います』

 十四人の挑戦者たちは、砂漠の中心にいた。その中には、オリフィルもいた。彼を次の試練に参加させるよう、他の挑戦者たちがキュリオテテスに願った効である。ラ・ファリエやソムリェだけでなく、なんとあのミチェルまで、オリフィルを除く十三人全員が頼み込んだという。

 オリフィルは、なかば意識が朦朧とした状態でガルガリンの説明を聞き、しかしどうにか護送任務は完了させた。サラカイの言葉が意識にあったためか、サラカイを守れなかった代わりに他の人を守ろうとしたからか、それは定かではない。

 

『第六の試練を担当する、智天使のヘルワィムだ。この試練まで、今回六人が残った。君たちはこの試練を通過すれば、例外なく”天使”となる。我々は全ての試練が終われば、神のもとへ還る。そして、君たちは神の使者として世界と神のあいだを取り持ち、世界を統治する。その使命をこなすことに不安のある者は、ここで挑戦をやめる道を選んでも構わない。さあ、どうする』

 おずおずと、一本の手が上がった。第四第五の試練で満身創痍になり、もはや立っているのもやっとといった状態の挑戦者だった。

『そうか。ほかにはもういないか?』

 オリフィルが、一歩足を踏み出した。挑戦者たちの視線が、彼に集まる。

「俺も……」

 そう言いかけて、彼は立ち止まった。

 サラカイが、スフィンクスとの戦いの前に、ああ言っていた。

『お前だけは、偉大な力を掴み取ってくれ』

 だとしたら俺が、引き返すことは許されない。

 俺は、進まなければならない。道を進むことが、どれだけ辛く苦しいことと感じられても。

 そう、彼は思った。

「いえ……俺は、進みます」

 

『君たちに課せられた最後の試練、それは君たちの、運命を試すものだ』

 熾天使セラブが言う。

『いま、最後に到着した一団は、君たちも受けただろう、箱庭の試練の最中だ。君たちは、箱庭国家の国民になる。君たちはただ、命じられるまま動くことしか出来ない。箱庭の中で生き延びた者は、天使を統べる存在、大天使となる』

 次の瞬間、五人の挑戦者たちは、それぞれが別々の箱庭へと飛ばされた。

 オリフィルは、外界に声を聞いた。

「よろしく頼もう。拙者は、東の果て、ワと呼ばれる地から参った、ガフラヒコと申す」

「よろしく。儂は北のスラーヴから参った、ウリェシキと申す」

「アトゥランテスよりもさらに西、アミリジャという大陸から来た、ザシャエリだ。よろしく」

 オリフィルはそうして、箱庭の中で百年間を過ごした。その間、彼はまったく寿命を取ることは無かった。

 幾度も戦争が起こったが、その度に外の挑戦者たちは上手く状況を操り、すぐに平和が取り戻された。

 そうして、オリフィエルは最後の試練を通過した。


 翌日。大天使の就任式が行われた。

「昨日まで最初の試練をやっていた奴らが今日就任式ってんのは、どういうことだ」

 そうがなるソムリェに、能天使エクスシーアが答える。

『この神殿の中は、いくらか時間が歪んでいる。さあて、式が始まるぞ』


 まず、クカビーをはじめとする最後の試練に敗れた「天使」たちの名が読み上げられた。

 続いて、七人の大天使が、序列下から順に名を呼ばれる。

『アミリジャのザシャエリ、権天使アルカイの名のもと、大天使第七席ザカリエルに任ずる』

『ナウールのソムリェ、能天使エクスシーアの名のもと、大天使第六席サマエルに任ずる』

『スラーヴのウリェシキ、力天使デュナミスの名のもと、大天使第五席ウリエルに任ずる』

『ブレムミュアエのオリフィル、主天使キュリオテテスの名のもと、大天使第四席オリフィエルに任ずる』

『ペルサのラ・ファリエ、座天使ガルガリンの名のもと、大天使第三席ラファエルに任ずる』

『ワのガブラヒコ、智天使ヘルワィムの名のもと、大天使第二席ガブリエルに任ずる』

『そして、ノーザンエルフのミチェル、熾天使セラブの名のもと、大天使第一席にして天使の長、ミカエルに任ずる』


 神とのはじめての謁見の朝。オリフィエルは、聖地の神殿で目覚めた。あくびを嚙み殺しながら、体を起こす。

 あの時生えた角は、あの時黒に染まった目は、そのままだった。そして、いつのまにか彼は、翼を手にしていた。他の天使とは違う、漆黒の翼。

 その意味を考えるときいつも、あの二人を思い出す。

 オリフィエルは伸びをすると、寝間着を着替えに立ち上がった。


                      完~しばらくの平穏~


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