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落語【声劇台本書き起こし】

落語声劇「大工調べ」

作者: 霧夜シオン
掲載日:2024/12/02


落語声劇「大工調(だいくしら)べ」


台本化:霧夜(きりや)シオン@吟囁亭喃咄(ぎんじょうていなんとつ)


所要時間:約60分


必要演者数:4名

      (0:0:4)

      (4:0:0)【性別準拠人数比率】

      (3:1:0)

      (2:2:0)

      (1:3:0)

      (0:4:0)


※当台本は落語を声劇台本として書き起こしたものです。

よって性別は全て不問とさせていただきます。

(創作落語や合作などの落語声劇台本はその限りではありません。)


※当台本は元となった落語を声劇として成立させるために大筋は元の作品

 に沿っていますが、セリフの追加及び改変が随所にあります。

 それでも良い方は演じてみていただければ幸いです。



●登場人物


政五郎(まさごろう):大工(だいく)の棟梁(とうりょう)。面倒見(めんどうみ)がよく、与太郎(よたろう)が店賃(たなちん)を滞(とどこお)らせていると聞き

    、自腹を切って金を貸す。


与太郎(よたろう):与太郎(よたろう)とは落語の世界では役に立たない愚か者

    の事を指す。この噺(はなし)の与太郎(よたろう)は大工(だいく)の腕は大したものだが、頭の

    回転がちょっと遅く、見当違(けんとうちが)いなことを言う。


源六(げんろく):与太郎(よたろう)の住む長屋(ながや)の大家(おおや)。

   かなりの業突(ごうつ)く張(ば)り。


大岡(おおおか):南町奉行所(みなみまちぶぎょうしょ)のお奉行(ぶぎょう)様。すなわち、大岡裁(おおおかさば)きで有名な、

   大岡越前守忠相(おおおかえちぜんのかみただすけ)である。


語り:雰囲気を大事に。セリフ数は少ない。




●配役例


政五郎:

与太郎:

源六:

大岡・語り:



※枕はどちらかが適宜(てきぎ)兼(か)ねてください。



枕:人間、面と向かって話さないと自分の思っている事、伝えたい事が

  すべては伝わらないそうです。

  面と向かって対話が八割~九割、電話だと六割~八割、手紙…今だと

  メールなどもですな。これだと言いたい事の半分も伝わればいいほう

  だと言われています。

  ところが面と向かって話しても、些細(ささい)な言葉のかけ違いで思わぬ騒動(そうどう)

  に発展することが往(おうおう)々にしてあるもので。


政五郎:おい、与太(よた)、いるかい?

    ?与太(よた)? いるかってんだよ!


与太郎:ああ…棟梁(とうりょう)。


政五郎:ああ棟梁(とうりょう)、じゃねえよ、ぼんやりしてるじゃねえか。

    お袋(ふくろ)さんはどうした?


与太郎:…墓参り。


政五郎:そうか、そりゃ結構(けっこう)なことだ。年寄りは墓参りが何よりだ。

    それに、おめえはお袋(ふくろ)さんの面倒(めんどう)をよく見てえれぇや。


与太郎:それで…棟梁(とうりょう)、今日はどうしたんだい?


政五郎:ああ、長(なげ)ぇこと遊ばしといて悪かったな。

    俺も気にはしてたんだが、いい仕事ができたぜ。

    番町(ばんちょう)のお屋敷の仕事でよ、こいつは一年、長引(ながび)きや一年半は

    続こうってなぁ大仕事だ。もう心配するこたあねえ。

    それでよ、今日のうちに向こうへ道具箱を運んじまおうと思って

    な。そうすりゃあ明日は手ぶらで行けるって寸法(すんぽう)だ。

    だからよ、俺んとこに道具箱持って来といてくれや。


与太郎:…うん。


政五郎:早いとこしなよ。


与太郎:…うん。


政五郎:若(わけ)ぇもんがで車で引っ張ってくからな。


与太郎:…うん。


政五郎:おい、分かってんのか?


与太郎:…うん。


政五郎:いいか?


与太郎:…うん。


政五郎:なんだよおい、うんうんって…。

    せっかくいい話を持って来たってのに、

    張り合いのねぇ野郎だなこいつは。

    しっかりしろぃ!


与太郎:…それがね、棟梁(とうりょう)の前だけどさ、

    あんまりしっかりできねえんだよ。


政五郎:なんでぇ、何かあったのか?


与太郎:…道具箱がねェんだ。


政五郎:よせよおめぇ。

    道具箱がねえって、大工(だいく)が道具箱なくっちゃ話にならねぇ。

    仕事できねぇじゃねえかよ!

    さてはおめぇアレか。

    ちょっと仕事が途切(とぎ)れたってんで、

    とうとう道具箱、食っちめぇやがったな?


与太郎:いや、食いやしないよあんな硬(かて)ぇの。

    だいいち金槌(かなづち)とか歯が立たねぇ。


政五郎:何言ってんだよ、本当にかじったってんじゃねぇよ。

    質(しち)に入れちまったんだろ?


与太郎:質(しち)になんか入れてないよ。

    …持ってかれちゃったんだよ。


政五郎:んだよ、持ってかれちゃったんだよっておめぇ、

    のんびりしてる奴があるかよ。

    おめぇ普段(ふだん)から戸締(とじま)りしてねえって言ってたな?

    だからそういう事になるんだよ!

    で、夜中か?


与太郎:…それがね、夜中じゃねえんだ。


政五郎:じゃあなにか、明け方か?


与太郎:うぅん。


政五郎:日の暮れか?


与太郎:…うぅん。


政五郎:じゃあいつだよ。


与太郎:うぅん。


政五郎:なんだこの野郎、いつだって聞いてんだよ。


与太郎:それがね、あの…昼過ぎ。


政五郎:昼ゥ?

    おめぇ家(うち)にいなかったのか?


与太郎:いたよ?


政五郎:居眠(いねむ)りでもしてやがったんだろ。


与太郎:居眠(いねむ)りなんてしてないよ。

    持ってく奴のツラぁ見てた。


政五郎:見てたぁ?

    持ってかれると思ったら、泥棒(どろぼう)!とかなんとか怒鳴(どな)ったらいいじ

    ゃねえか。


与太郎:怒鳴(どな)ろうかと思ったらね、大きな目玉でぎょろって睨(にら)まれたから、

    やめちゃった。


政五郎:だらしのねえ野郎だなこいつは。

    じゃ、そいつのツラぁ見て覚えてるか?


与太郎:覚えてるよ。

    今朝(けさ)もそのツラに会った。


政五郎:会ったァ!?

    そりゃあうまくやったな!

    取り返したか!?


与太郎:いや、取り返そうかなって思ったら、また大きな目玉で

    ぎょろって睨(にら)まれてね、それで思わず、おはようございますって

    挨拶(あいさつ)しちまった。


政五郎:しょうがねぇなこいつは。

    で、その野郎にどこで会ったんだ?


与太郎:長屋(ながや)の井戸端(いどばた)。


政五郎:ハァ!?

    じゃ何か、そいつァこの近所にいるってぇのか!


与太郎:いるよ。

    家(うち)も知ってんだ。


政五郎:知ってるゥ!?

    じゃ俺が行って取り返してきてやるよ。

    どこだそいつの家(うち)は?


与太郎:あのね、この路地(ろじ)出て右っ側(かわ)の角(かど)の家(うち)だよ。


政五郎:この路地(ろじ)出て右っ側(かわ)の角(かど)って…いやに近(ちけ)ぇな。

    …っておい、右の角(かど)ってったらおめぇ、大家(おおや)の家(うち)じゃねえかよ!


与太郎:そう。

    そのね、大家(おおや)さんが持ってったんだよ。


政五郎:なんだよおい、じゃあおめぇアレだろ。

    店賃(たなちん)が滞(とどこお)って、そのかたに大家(おおや)が道具箱もってっちまったと、

    こういうわけか?


与太郎:…ははは、当たった。


政五郎:当たった、じゃねえよ。

    そんなもん当たったってしょうがねえよ。

    いったい、いくら溜(た)まってんだよ?


与太郎:…一両二分(いちりょうにぶ)と八百文(はっぴゃくもん)だよ。


政五郎:恐ろしく溜(た)めやがったなこいつは。


与太郎:別にね、骨も折らねえし苦労しねえけど、溜(た)まった。


政五郎:当たり前だよ。

    そういうものはな、ほっときゃいくらだって溜(た)まっちまうんだ。

    まぁそんな事もあるかと思ってよ、

    俺ぁいくらか腹掛(はらが)けのどんぶりの中に放り込んできたんだ。

    とりあえずこれだけあるから、よくわけを話して返してもらって

    こい。

    いいか、門限があるんだからな、間に合わなかったらおめぇ、

    道具箱かついでかなくちゃなんねえぞ。

    早く行ってこい!


与太郎:へい…すいませんね、棟梁(とうりょう)にはいつもお世話(せわ)になっちゃってさ、

    すまねえなと思ってるんですよ。

    お世話になりっぱなしで………? 

    あれ…。

    棟梁(とうりょう)、これぁだめだ、一分金(いちぶきん)が六枚だな。


政五郎:そうだよ、六枚だ。


与太郎:一分(いちぶ)が六枚ってことはなんだな、これァ一両二分(いちりょうにぶ)だね。


政五郎:そうだ。


与太郎:…あ、あのね、あっしの店賃(たなちん)の滞(とどこお)りは、一両二分(いちりょうにぶ)と八百だよ。

    そこへもってきて…うーん……。


政五郎:いつまで見てたって、金は増えねえぞ。


与太郎:いや、別に増やそうとは思わねえけどさ。

    一両二分(いちりょうにぶ)と八百のとこへ一両二分(いちりょうにぶ)ということは、これは……

    まあ、早い話がどういう事かなってーー


政五郎:じれってぇなおい。

    八百文(はっぴゃくもん)足りねえと、こう言いてえのか?


与太郎:あぁそうそう、そうなんだよ。

    棟梁(とうりょう)はすらすらっと勘定(かんじょう)がうまいね。


政五郎:張り倒すぞこの野郎。

    一両二分八百(いちりょうにぶはっぴゃく)んとこへな、八百持ってくんじゃねえんだ。

    親方の一両二分(いちりょうにぶ)のほう持ってくんだぞ?

    八百くらい御(おん)の字(じ)よ。


与太郎:なんだいその御(おん)の字(じ)ってのは。


政五郎:あたぼうだってんだよ。


与太郎:何そのあたぼうってのは。


政五郎:いちいち聞くなよ、おめぇも江戸っ子だろうが!

    あたりめぇだ、べらぼうめを縮(つづ)めてあたぼうってんだよ。

    あたりめぇだべらぼうめ、なんてそのまま言ってみろ。

    長ったらしくて陽気の時分(じぶん)にゃ言葉が腐っちまうし、

    日の短けぇ時分(じぶん)には日が暮れちまうわな。

    だから言葉はトーンと詰(つ)めて話すんだよ。


与太郎:はぁぁ、あたぼうね…うまく詰(つ)まった。


政五郎:またつまらねえことで感心してやんな。

    一両二分八百(いちりょうにぶはっぴゃく)のかたに持ってかれてる道具箱だが、

    一両二分(いちりょうにぶ)持ってって取り戻して来いってんだよ。

    渡すも渡さねえもあるものかィ。

    大工(だいく)にとって道具箱は商売道具、武士にとっての刀じゃねえか。

    そいつを店賃(たなちん)のかたに取るってぇのは呆(あき)れた話だ。

    言いづくにすりゃタダでも取れるが、相手が町役(ちょうやく)で大家(おおや)じゃ

    しょうがねえ。

    下手(へた)な事をして後で犬(いん)の糞(くそ)で敵(かたき)を取られるってぇ事もある。

    長い物には巻かれろってこともあるんだ。

    だから一両二分(いちりょうにぶ)持ってって、詫(わ)びの一言でも言って

    返してもらえ。よく下手(したて)に出るんだぞ。

    早く行って来いッ!


与太郎:わ、わかったよ…。


    棟梁(とうりょう)はああ言うけどさぁ、いざとなったらおっかなくって

    しょうがねえよ。

    本当にこの大家(おおや)がまたおっかねぇ人なんだ。

    でもいい事聞いちゃったよ。そりゃあそうだ、あたぼうだよ。

    今度から足りなくなったら、みぃんなあたぼうにしちゃおう。


    【より間抜けな声で】

    おぉーい、おぉ~やぁ~!

    おぉ~やァ~!!


源六:誰だァ裏で間抜(まぬ)けな声出しやがんのは?

   裏のバカか?

   なんか用か?こっちへ入れ。

   …ぬうっと入って来やがった。


与太郎:…へへ…よう、道具箱くれ。


源六:この野郎…くれっつってそこに突っ立ってる奴があるか。

   奥の三畳(さんじょう)の部屋に入ってんだ、おめぇも知ってんだろうが。

   てめぇで持ってけ持ってけーーって待て待て。

   ただで持ってきゃいいってんじゃねえぞ。

   その前にな、決めとくもん決めとこうじゃねえか。

   店賃(たなちん)は持ってきたんだろうな?


与太郎:あぁ、あらぁ。


源六:あらぁったって、おめえが持ってたってしょうがねえだろ。

   こっちへ出せ。


与太郎:ほれ、受け取れぇ。


源六:っとっとっ、この野郎、銭(ぜに)ぃ放りやがったな。

   こういうものを粗末(そまつ)にする奴に出世(しゅっせ)したためしはねぇんだ。

   いつまで経(た)ったってそんな事してーーあれ、おい婆さん、婆さん、

   銭(ぜに)そっちへ飛ばねえか?

   飛ばねえ?ほんとにか?

   おいおいちょっと待て与太(よた)、これァ一両二分(いちりょうにぶ)しかねえんじゃねえの

   か?


与太郎:うん、そうだよ。


源六:いや、そうだよじゃねえ。

   これ一両二分(いちりょうにぶ)だろ。


与太郎:そうだよ。

    いつまで見てたって増えないよ。


源六:なんだよその増えねえってのは。

   八百文(はっぴゃくもん)足(た)りねえじゃねえか。


与太郎:え? いいじゃないか。


源六:良かねえよ!

   足りねえところはどうすんだ!?


与太郎:八百ぐらいは御(おん)の字(じ)だよ。


源六:なんだ、その御(おん)の字(じ)ってのは?


与太郎:ぁ~、あたぼう。


源六:なんだそのあたぼうってのは。


与太郎:あ、大家(おおや)さんも知らねえんですか?

    それね、詳(くわ)しく言うとね、

    あたりめえだべらぼうめ。


源六:この野郎、足りなく持ってきて威張(いば)ってる奴があるか!

   なに言ってやがんだ!


与太郎:だけど言いづくならね、タダでも取れるんだよ。

    

源六:なっ…なんだとォ!?

   言いづくならタダでも取れるなんて言い草(ぐさ)があるか!!


与太郎:だけど相手が町役(ちょうやく)でもって、大家(おおや)でもって

    そんで長(なげ)ぇもんだから…あの…犬(いん)の糞(くそ)だよ。


源六:なに言ってやがんでェこの野郎ォ!

   そうか、どうもおかしいと思ったが、今日はおめえの了見(りょうけん)で来たん

   じゃねえな?

   誰かおめえの尻押(しりお)しをした奴がいるんだろ。

   そいつを連れてこい!お前に差(さ)し金(がね)した奴をここへ出せ!


与太郎:ダメだよ。

    差(さ)し金(がね)は道具箱に入ってるから。


源六:っな、なに言いやがんだ!

   もう帰れッ!!


与太郎:じゃあ帰るから道具箱こっちくれ。


源六:ダメだ! あと八百持ってこい!


与太郎:じゃあ今の金こっちへ返して。


源六:こいつは店賃(たなちん)の内金(うちきん)にしてもらっておく。


与太郎:ずるいぞそれは。

    金も取っちゃってそれで道具箱も返してくれねえってのは。

    そういうのはずるいぞ。


源六:何をぐずぐず言ってんだこのバカ!

   帰れったら帰れッ!!


与太郎:…。

    また追い出されちゃったよ…。


    【二拍】


    棟梁(とうりょう)~。


政五郎:?おいどうしたお前、手ぶらじゃねえか。

    道具箱はどうした?


与太郎:道具箱はね、向こう。


政五郎:銭(ぜに)はどうした?


与太郎:銭(ぜに)も向こう。


政五郎:じゃ何か、道具箱くれねえで銭(ぜに)だけ取り上げやがったのか!?


与太郎:それにダメだよ棟梁(とうりょう)。

    このごろはほら、あの、あたぼうってのは流行(はや)らないよ。


政五郎:なんだ、流行(はや)らねえってのは?


与太郎:向こうでもってさ、八百文(はっぴゃくもん)足(た)りねえって言うから、

    八百ぐらい御(おん)の字(じ)だって、そう言ったんだ。 

    そしたら御(おん)の字(じ)って何だって言うから、あたぼうだって言ったら

    、あたぼうって何だってまた聞くから、よく分かるようにさ、

    あたりめえだべらぼうめって。


政五郎:おい…おめぇそれ、大家(おおや)にそのまんま申し上げたのか?


与太郎:申し上げた。


政五郎:申し上げた、じゃねえよ!

    それはおめぇと俺との楽屋話(がくやばなし)だろうが。

    大家(おおや)、怒っただろ。


与太郎:怒った。

    真っ赤になって目ぇむいて怒っちゃった。

    あと八百持ってこい!持ってこねえうちゃ、道具箱渡さねえぞ!

    帰れェーっ!てさ。


政五郎:だから言っただろうが。

    よく訳(わけ)を話してもらってこいって。

    明日は門限(もんげん)があんだぞ、門限(もんげん)が。

    どうするんだよ、おめぇだけ道具箱かついで、

    後からのこのこのこのこ入ってくって事になったらよ。

    格好(かっこう)がつかねえじゃねえか!


    …まぁしょうがねえ、おめぇ一人で行かせた俺も悪かったよ。

    あと付いてきな。取り返してやるから。


与太郎:あっあっ、棟梁(とうりょう)、表(おもて)からじゃなくてーー


政五郎:分かってるよ。引っ張るんじゃねえ。

    こういう時は裏から入るもんだ。

    ごめんくださいやし。

    ごめんくださいやし!


源六:はい、誰だいーーってなんだい、棟梁(とうりょう)じゃないか。

   おい婆さん、棟梁(とうりょう)が見えたよ!ちょっと座布団(ざぶとん)持って来な!

   棟梁(とうりょう)、そんな汚い裏から入らないでさ、いつものように表(おもて)から入っとくれ

   よ。

   ってちょっとちょっと、そんな隅(すみ)っこで小さくなられてたんじゃ

   困るよ。

   婆さんと今も棟梁(とうりょう)の噂(うわさ)をしてたんだ。

   お前さんのおとっつぁんは立派な棟梁(とうりょう)だった。

   そしたらお前さんはこれまた親勝(おやまさ)りだ。

   町内の華だ、いや大したもんだ…って

   そんなとこでもってかしこまられちゃ困るじゃないか。

   こっちへもっと…って、どなたかお連れさんがいなさるのかい?

   もし、お連れさんの方、こんな汚い裏ですがね、

   どうぞこちらへお入りーー。


与太郎:へへ…どうも…。


源六:ぁっ…バカ野郎だ。

   そうかい、尻押(しりお)ししたのは棟梁(とうりょう)なんだね。

   お前さんそのバカ連れて詫(わ)びに来なすったのかい。

   いや、今もね、わずかの銭(ぜに)が足りねえからって腹を立てたわけじゃ

   ねえが、あんまり言いぐさがひでえから追い返したまでの話なんだ

   よ。


政五郎:どうも、相(あい)すいやせん。

    何しろこの野郎は少々人間がおめでたく出来上がっておりやして

    、こんなバカな野郎ですがね、これで仕事をやらせますってぇと

    一人前以上の仕事をいたしやす。

    それにこいつは親孝行者でね、普段から目ぇ掛けてやっておりや

    すが、近頃は長(なげ)ぇこと遊ばせといちまいまして。

    あっしも気にはしてたんですが、今度いい仕事ができましてね。

    番町(ばんちょう)の方のお屋敷でもって、ここ一年か一年半は続くてな大仕事

    でございやす。

    さっそく喜ばしてやろうと思って話をしたところ、

    これこれこういうわけで一両二分八百文(いちりょうにぶはっぴゃくもん)の店賃(たなちん)の滞(とどこお)りがあって、

    そのかたに大家(おおや)さんが道具箱を持ってっちまったと聞きやした。

    いやね、さっき散々っぱら小言(こごと)を言いやした。

    雨露(あめつゆ)しのぐ店賃(たなちん)を滞(とどこお)らせるようなことするんじゃねえ、って。

    あっしも店賃(たなちん)の額(がく)は承知だったんですが、あいにく一両二分(いちりょうにぶ)しか

    持ち合わせてなかったもんですから、野郎にそれ持たして、

    大家(おおや)さんによく訳(わけ)を話して返してもらってくるようにと、

    そう言ったんです。

    この野郎がどんな事くっちゃべったかは分かりやせんが、

    どうかひとつ、勘弁(かんべん)してやってもらいてえんで。


源六:…それで、仕事はいつから始まるんだい?


政五郎:それが、明日から始まるんで。

    今日のうちに向こうへ道具箱を運んじまおう。

    そうすりゃ明日、野郎は手ぶらで行けるって寸法(すんぽう)で、

    野郎に職人の貫録(かんろく)を付けさしてやりてえ、とこう思いやして。

    そんなわけで、こうしてお願い申してるんで。

    門限に間に合わねえと野郎だけ一人で明日、のこのこ道具箱を

    担(かつ)いでいくような、間抜(まぬ)けな仕儀(しぎ)になりやすんで。


源六:ふうむ…。


政五郎:あとは…たかが八百文でございやすから、

    何かのついででもありましたらお宅に届けさせるようにいたしま

    すんで。

    大家(おおや)さん、何とかひとつ、よろしくお願い申しやす。


源六:……あぁそう、へえへえへえ、分かりましたよ。

   だけど何だね棟梁(とうりょう)、お前さんも時々おかしなこと言うんだね。

   なんだい、たかが八百てな。

   そりゃお前さんにとっちゃ八百の銭(ぜに)も”たかが”かもしれないけど

   ね、あたしにとっちゃ大金だよ。

   地べた掘ったって八百文(はっぴゃくもん)が出てくるわけじゃねえんだ。

   ま、それはそれでいいさ。

   なんだいその、”ついででもありましたら”ってのは。

   あたしはね、世の中でその”でも”ってのが一番嫌(いちばんきれ)ぇなんだよ。

   じゃあ何かい、その”ついででも”の”でも”が無いと、八百の銭(ぜに)

   はそれっきりかい?


政五郎:いや、そういうわけじゃねえ。

    あっしは職人でもって口のきき方はぞんざいだが、

    気にさわったら勘弁(かんべん)してくんねえ。

    じゃ、こうしやしょう。

    後(あと)の八百はね、すぐうちの奴(やっこ)にお宅へ放り込ませやしょう。


源六:…よしてくれ、俺んとこは賽銭箱(さいせんばこ)じゃないよ。

   むやみに銭(ぜに)なんか放り込まれてみろ。

   当たりどころが悪けりゃ、怪我(けが)しちまうよ。


政五郎:いや、本当におっぽり込もうって話じゃねえんだ。

    大家(おおや)さんだって道具箱持ってたってしょうがねえでしょう。

    あっしの方じゃそれが入用(いりよう)なんだ。

    道具箱さえありゃ、八百ぐらいの銭(ぜに)ァ銭(ぜに)と思っちゃいねえんです

    からね。

    八百のことでこうしてあっしが来て頭下げて頼んでるんだ。

    野郎に道具箱を渡してやってくれたっていいじゃございやせんか

    。


源六:…なんだいおい、”八百ぐらい”?

   ”あっしが来て頭下げて頼んでるんだから、野郎に道具箱渡して

   やってくれたっていいじゃございやせんか?”


   …おいお前、誰に口きいてるんだ?

   あたしは町役人(ちょうやくにん)だよ。

   おめえはたかが大工(だいく)じゃねえか! 雪隠大工(せっちんだいく)のくせしやがって、

   町役(ちょうやく)の前で大工(だいく)が頭下げてどうなるってんだ?

   あたしの目が眩(くら)むってぇのか?潰(つぶ)れるってぇのか?

   お前の身体から箔(はく)が落ちるとでも言うのか?

   でかい面(つら)ァするなぃ!

   あと八百文(はっぴゃくもん)持ってこねえなら、道具箱は渡さねえ!

   びた一文(いちもん)欠けたってダメだ!


政五郎:~~なんだなおい、そんな因業(いんごう)なこと言わねえで…。


源六:おぅあたしは因業(いんごう)だよ!

   知ってるだろ、因業大家(いんごうおおや)ってなぁあたしのことだよ!


政五郎:そんな大きな声出さなくたって…


源六:大きな声?地声(じごえ)だよこれは!

   あといくらでも大きな声が出るよ!


政五郎:いや、それじゃ大家(おおや)さん、話しになりやせんよ。


源六:ああ話なんかしたくないね!

   気分が悪いんだ。顔を見るのが嫌なんだよ。

   帰ってくれ!!


政五郎:…じゃあ何ですか。

    あっしがこれほど筋道(すじみち)立てて話してお願いしても、

    野郎に道具箱は渡してやっちゃもらえねえと、

    こうおっしゃるんでござんすか。


源六:あぁおっしゃるとまで分かってたら、念を突くには及ばないね。

   渡せませんよ。ああ渡せないね。

   渡せねえって言(い)やぁどうするんだ?


政五郎:…どうするもこうするもねぇや。

    いらねぇって言(い)や、それでいいんでぇ。

    道具なんざ集めりゃ何とでもなるんだ。


    【一呼吸置いて】


    【足で床を踏み鳴らすようなSEあれば】


    何を吐(ぬ)かしやがんでぇこの丸太(まるた)ん棒(ぼう)めッ!!!


源六:いっ、いきなりなんだい、人の家でケツまくって座り込んで…!

   っておばあさん、一人で逃げるんじゃないよ!

   逃げる時はあたしも一緒に逃げるんだ。


   な、なんだい棟梁(とうりょう)、人をつかまえて丸太(まるた)ん棒(ぼう)ってのは。


政五郎:そうだろうが!

    てめえなんざ目も鼻も口も血も涙もねえ、のっぺらぼうな

    人間の皮かぶった畜生野郎(ちくしょうやろう)だから丸太(まるた)ん棒(ぼう)ってんだ!

    この惚助(ほうすけ)、藤十郎(とうじゅうろう)、珍毛唐(ちんけぇとう)、芋(いも)っ掘(ぽ)り、蕪(かぶ)っかじりめィ!

    てめえに頭ァ下げるようなお兄(あに)ぃさんとお兄(あに)ぃさんの出来(でき)が、

    少ゥしばかり違うんでぇ!

    デカい面(つら)ァするなだァ!?そりゃこっちのセリフでぇ!

    なに吐(ぬ)かしゃがる!御託(ごたく)がすぎらぁ!

    誰のおかげで大家(おおや)だの町役(ちょうやく)だの言われるようになったと思って

    やがる、このたろの頭、あんにゃもんにゃめ!

    いいか、今からてめぇの氏素性(うじすじょう)すっぱ抜いて、

    ずらーーっと並べ立てて聞かしてやるから、

    びっくりして座り小便して馬鹿になったり、

    赤くなったり青くなったりすんなよ!


源六:ぁ、あたしは七面鳥(しちめんちょう)じゃないよ!


政五郎:ぃやかましィ!!

    どこの馬の骨だか牛の骨だかわからねえ野郎が

    この町内に流れ込んで来やがった。

    その時のてめえのザマぁなんでぇ!

    寒空(さむぞら)に向かいやがって洗いざらしの浴衣(ゆかた)一枚でもって

    ガタガタガタガタ震えてやがって、

    「どうぞみなさんよろしくお願いします」って

    みんなの前でペコペコペコペコ頭ァ下げた事、忘れやしめぇ!

    幸(さいわ)いこの町内の人はみんなお慈悲深(じひぶけ)えや、

    可哀想(かわいそう)だから何とかしてやりましょうってんで、てめえはここの

    定番(じょうばん)になったんだ!

    二、三文(さんもん)の使い銭(ぜに)をもらいやがって、てめぇなんざ使い奴(やっこ)じゃね

    えか!

    あっちのご用聞(ようき)き、こっちの使い走りしてまごまごまごまご

    しやがって、

    冷や飯(めし)の残りを一口もらって細く短けぇ命をつないだこと、

    忘れやしめぇ!

    「おう源六(げんろく)さん、この手紙もってあっち行ってくれ」

    「へい」

    「この手紙もって向こう行ってくれ」

    「いや、向こうへは行かれません」

    「どうしてだい?」

    「向こうの方から風が吹いてきます。お腹が空(す)いてますんで、

    風に向かって歩けません」

    風の随(まにま)にふわふわしてやがってこの風吹(かぜふ)きガラスめ!


源六:この野郎、黙って聞いてりゃぁべらべらべらべら喋(しゃべ)りやがって。

   なんだい棟梁(とうりょう)、言うがおかしいや。

   細く短く?言葉くらい覚えとけ。

   それを言うなら太く短くだろうが。


政五郎:なにをなにをなにをォ?

    太く短くだァ?そんなもん世間にいくらでもあらァ!

    てめえなんぞ細く短くで違(ちげ)ぇねぇだろうが!

    ろくに食うものも食わねえで、爪に火を点(とも)すようにして

    銭(ぜに)貯(た)めやがって、そいつを高(たけ)ぇ利息で貧乏人に貸し付けて、

    てめぇにゃ何人泣かされたか分からねぇんだ!

    そんな恨(うら)みを買った銭(ぜに)でもって家主(いえぬし)の株(かぶ)買いやがって、

    それで大家(おおや)でござい、町役(ちょうやく)でござい?

    なに言ってやんでェ!

    町役(ちょうやく)が聞いて呆(あき)れらぁ!大悪(おおあく)だよてめぇなんざ!

    てめえの運が向いたのは、ここの六兵衛(ろくべえ)が死んだからじゃね

    えか!六兵衛(ろくべえ)の事を忘れたらてめえなんざ罰(ばち)が当たるぞ!

    「おう源六(げんろく)さん、腹が減ったらこの芋(いも)を持って行きなよ」

    「寒かったらこの半纏(はんてん)を着たらどうだ」

    って、何くれとなくてめぇの面倒(めんどう)を見てくれた。

    その恩をあだで返(けぇ)しやがって!

    おう婆(ばあ)さん、隠れてることはねえ、こっち出てきな!

    みんな知ってんだ。

    もとは六兵衛(ろくべえ)のかかあじゃねえか。

    その時分(じぶん)にゃあぶくぶく太って黒油(くろあぶら)なんぞつけて、

    おつに気取(きど)りやがって嫌らしい婆(ばばあ)だ。

    六兵衛(ろくべえ)がぽっくり逝(い)っちまって一人で寂(さみ)しがって、

    人手(ひとで)の足(た)りねぇところにつけ込みやがって、

    おかみさん水汲(みずく)みましょ、芋洗(いもあら)いましょ、薪割(まきわ)りましょ、

    ってんでずるずるべったりこの家(うち)に入(へぇ)り込みやがってよ!

    芋(いも)だってそうだ!

    六兵衛(ろくべえ)の売ってた芋(いも)ってな、川越(かわごえ)の本場の芋(いも)だ。

    厚(あつ)っぺらに切って焚(た)き付けを惜(お)しまねえからうめぇ。

    八(や)つ時(どき)になってみろ、子供は正直だ。

    町内(ちょうない)越(こ)えてほうぼうから買いに来て黒山(くろやま)の人だかりだ!

    てめえの代になってからそんな事が一度でもあったか!

    気のきいた芋(いも)売った事があったか!えぇ!?

    場違(ばちが)いな芋(いも)買ってきやがって焚(た)き付けを惜(お)しむから、

    生焼(なまや)けのガリガリの芋(いも)じゃねえか!

    それ食って腹ァ下して死んじまった奴(やつ)が何人いるか分かんねぇん

    だこの人殺し!

    与太(よた)ッ!

    おう与太(よた)ッ、こっち来いッ!


与太郎:ぁっ…その、…もう、帰ろうか。


政五郎:ッこの野郎、俺がここで何してるのか分からねぇのか!?


与太郎:な、なんか、ケンカらしいな…。


政五郎:らしいなじゃねぇこんちきしょう!

    もうケンカになっちまってんだよ!

    こっち来いってんだ!


与太郎:い、いや、行きますよ…。

    …なんでしょう。


政五郎:なんでしょうじゃねえ!

    なんか言ってやれッ!


与太郎:ぇ、あ、ぃや、その……こんにちわ。


政五郎:挨拶(あいさつ)してどうすんだよ!

    毒づいてやれッ、毒づいて!


与太郎:いや、その、だって、さ……。


政五郎:~~この野郎、ほんとうにじれってぇな!

    腹ぁ立たねぇのか!?


与太郎:い、いや、立ててもいいけど…


政五郎:義理で腹立てるんじゃねえ!

    早くなんか言ってやれッ!


与太郎:ちょ、ちょっ待っ、わ、わ、わかったよ…じゃあ言うよ……。

    や…や…やい!

    ぉ、お、大家(おおや)さん!


政五郎:”さん”なんぞいらねえッ!


与太郎:ぁっじゃっ、あのっ…さ、さんなんぞいらねぇや!

    大家(おおや)ァ!!

    おおやァ!

    おやぁ?

    …おやおや。


政五郎:んなっ何を言ってんだおめぇは!

    はっきりしやがれッ!


与太郎:っ、ぁあ、だんだんハッキリするぞこのやろう!驚くな?ぁ?

    いまからおめえの氏素性(うじすじょう)をすっぱ抜いてやるから、

    それ聞いてびっくりして、赤くなったり青くなったりすんなよ!

    おれは七面鳥(しちめんちょう)じゃねえや。


政五郎:バカ、そうじゃねえ。

    そりゃ向こうが言うセリフだ!


与太郎:ぁぁそうだ。

    おめえが言うんだ、忘れるな!


源六:おめぇが忘れるな!


与太郎:うっ、ご、ごめんなさい。


政五郎:謝(あやま)ってどうすんだ!

    もっとどんどんいけ!


政五郎:ぉっ、ぉぅどんどんいくぞ!

    っな、なんだおめえなんざっ、っお大家(おおや)だってっ威張(いば)って、

    っぉ大家(おおや)のくせになんだっ、ずっ図々しいぞ店賃(たなちん)なんか取りやが

    って!


源六:そりゃ当たり前だろうが!


与太郎:っそ、そりゃぁあたりめぇだ。

    俺が悪かった。


政五郎:だから謝(あやま)ってどうすんだよ!


与太郎:っで、な、なんじゃねぇか。

    おめえなんか、この町内に流れやがっただろ、大水(おおみず)。


源六:はァ?変な事言うない!


与太郎:で、寒空(さむぞら)に向かいやがって、洗いざらしのどてらーー


政五郎:浴衣(ゆかた)だ!


与太郎:ぁそうだ。浴衣(ゆかた)一枚でガタガタ嬉(うれ)しがりやがって!


政五郎:寒がったんだ!


与太郎:ぁぁそうだ寒がったんだ、こんちきしょう。

    で、二文三文(にもんさんもん)の銭(ぜに)もらいやがってあっちこっち行って、

    てめえなんざ、つか、つか…使い奴(やっこ)さんどちらへ行く?


源六:な、何言ってんだ…。


与太郎:であの、風の随(まにま)にふわふわしやがってこの、風吹(かざふ)きトンビ!


政五郎:カラスだよ!


与太郎:っトンビの方が大きいや!

    でな、てめえの運が向いたのはなんだ。

    ろ、ろ、ろ、六兵衛(ろくべえ)じいさんが死んだからだぞ、ほんとにな!

    六兵衛(ろくべえ)さんが死んだって、てめえなんか香典(こうでん)もやるめえ!


政五郎:ぉおうめぇこと言うな!


与太郎:俺もやってねえ!


政五郎:それは余計だ!


与太郎:っそれで、あの、なんじゃねえか。

    そこにいるおばあさんは、もとは六兵衛(ろくべえ)おじいさんのおばあさん

    だろ。

    んで、おじ、おじいさんがいて、おばあさんがいたんだ。

    おじいさんが山へ柴刈(しばか)りにーー


政五郎:なんで昔語(むかしがた)りになってんだ!


与太郎:っであ、あの、おじいさんが死んじゃっておばあさん一人になっ

    たら、そこんとこにスッと行きやがって、

    おばあさんや、芋(いも)を割りましょ、

    薪(まき)を洗いましょーー


政五郎:バカ、あべこべだろうが!


与太郎:っぁ、あ、あべこべにしやがって一緒になって、

    二人でもって爪の先っちょに火を付けやがって、

    よくおめえは火傷(やけど)をしねえなこの野郎!

    で、一生懸命(いっしょうけんめい)お金を貯(た)めちゃって今じゃこんな立派な大家(おおや)さんに

    なっちゃって、

    どうもおめでとう!


政五郎:何を言いやがんだ!

    褒(ほ)めてどうすんだよ!


    いいか大家(おおや)ァ!

    弱ぇこちとらにゃ、強えお奉行様(ぶぎょうさま)が付いてるんだ!

    お白州(しらす)でもって吠(ほ)え面(づら)かかしてやるからな!

    おう与太(よた)、かっこむぞ!かっこむんだ!


与太郎:ぇえ? あの、茶漬(ちゃづ)けかい?


政五郎:茶漬(ちゃづ)けじゃねえ!

    奉行所(ぶぎょうしょ)に訴え出るんだ!


語り:交渉決裂と相成(あいな)りまして、政五郎(まさごろう)と源六(げんろく)は物別(ものわか)れ。

   怒り収まらぬ政五郎(まさごろう)、すぐさま南町奉行所(みなみまちぶぎょうしょ)へ訴え出ました。

   この時代、奉行所(ぶぎょうしょ)というものはこういう些細(ささい)な揉(も)め事(ごと)というものは

   取り上げなかったそうです。

   だけども何度も何度も熱心に訴え出たもんですから、

   お役人も根負(こんま)けしてこの願書(がんしょ)を見ると、

   「この度(たび)与太郎儀(よたろうぎ)、家主源六(やぬしげんろく)に二十日余(はつかあま)り道具箱を止(と)め置かれ、

   老母一人(ろうぼひとり)養(やしな)い難(がた)し。」

   とある。

   これは穏やかならんというのですぐに源六(げんろく)の元へ差し紙(がみ)が付き、

   双方(そうほう)奉行所(ぶぎょうしょ)へ呼び出しと相成(あいな)りました。

   お白州(しらす)へ入ると一段高い所には南町奉行(みなみまちぶぎょう)・大岡越前守忠相(おおおかえちぜんのかみただすけ)、

   左右には目安方(めやすかた)の公用人(こうようにん)、縁(えん)の下には同心(どうしん)が十手(じって)を持って控(ひか)えております。


政五郎:【つぶやく】

    けっ、今にそのもったいぶったツラぁ青くしてやる…!


源六:【つぶやく】

   ふん…。


大岡:神田三河町(かんだみかわちょう)家主源六(いえぬしげんろく)、並びに同店子(どうたなこ)大工職(だいくしょく)与太郎(よたろう)、

   差添え人、神田竪大工町(かんだたてだいくちょう)、喜平治(きへいじ)店借(たなが)り、大工職(だいくしょく)政五郎(まさごろう)。

   詰(つ)め合いの者一同、揃(そろ)いおるか?


源六:一同、揃(そろ)いおりましてございます。


大岡:うむ。

   与太郎(よたろう)、おもてを上げい。

   …おもてを上げい。


政五郎:【小声で】

    おい、何してんだよ。

    早くおもてを上げろ!


与太郎:【小声】

    ん、ぅん? おもて?

    ぃやあ、おもてはちょっと上げられねえ。

    土台がしっかりしてねえから。


政五郎:【小声で】

    なに言ってやがんだ、バカ!

    顔を上げるんだよ、顔を!


与太郎:【小声で】

    ぁっ、か、顔かい。

    そらぁ上がるよ、うん。


大岡:そのほう、何歳に相(あい)なる?


与太郎:ぇっ、えっ…なんだい…?


政五郎:【小声で】

    分からねえなおめぇは。

    お奉行(ぶぎょう)様はおめえの年をお聞きになられてるんだよ!

    早く言え!


与太郎:【小声で】

    ぇっ、と、年って、誰の?


政五郎:【小声で】

    だからおめぇだよ!


与太郎:【小声で】

    あぁ、うん、あるよ。


政五郎:【小声で】

    あたりめぇだよ、早く言え!


与太郎:【小声で】

    う、うん…ぁ、あれ?

    いくつだっけ?


政五郎:【小声で】

    分からねえのかよ!しょうがねぇな。

    たしかおめぇは今年で二十六じゃねえか?


与太郎:【小声で】

    ぁ、う、うん、そうかもしれねえ。


政五郎【小声で】

   そうかもしれねえって何だよ!

   早く言え!


与太郎:っあ、ぇ、ぇえと、に、二十六でございます。


大岡:おぉ左様(さよう)か。

   願書(がんしょ)のおもむきによると、これなる与太郎(よたろう)が家主源六(いえぬしげんろく)に、

   道具箱を二十日余(はつかあま)り留(と)め置かれ、それが為に老母一人(ろうぼいちにん)養(やしな)い難(がた)し、

   と言う事になっておるが、それに相違(そうい)ないか?


政五郎:相違(そうい)、ございません。


大岡:うむ、左様(さよう)か。

   家主源六(いえぬしげんろく)、おもてを上げい。


源六:ははーっ。


大岡:なにゆえあってそのほうは、これなる与太郎(よたろう)の道具箱を二十日余(はつかあま)り

   留(と)め置いた?

   仔細(しさい)、ありていに申し述べよ。


源六:恐れながらお奉行様(ぶぎょうさま)に申し上げます。

   実はこれなる与太郎(よたろう)が、あまりに店賃(たなちん)を溜(た)めますのでたびたび催促(さいそく)

   に参りましたところ、一向(いっこう)に払う様子(ようす)はございません。

   そこで道具箱を預かるが良いかと聞きましたところ、

   他に考えがないからそうしてくれと当人が申します。

   少しは気にもなりましたが他の店子(たなこ)の手前(てまえ)もありまして、

   与太郎(よたろう)だけを大目(おおめ)に見るというわけには参りません。

   それでわたくしが道具箱を預かっておりましたところ、

   過日(かじつ)、一両二分(いちりょうにぶ)を持って道具箱を返してくれとわたくしの所に参りました。

   しかしながら店賃(たなちん)の滞(とどこお)りは一両二分八百(いちりょうにぶはっぴゃく)、八百文も足りないところ

   からどうしたのだと聞きましたところ、やれ「言いづくにすれば

   タダでも取れる。」だの、「あたりめぇだべらぼうめ」だのと、

   あまりに悪口雑言(あっこうぞうごん)を申します。

   その為わたくしもつい、カーーッとなりまして、

   今日、かようにお奉行(ぶぎょう)様の手を煩(わずら)わせるというようなことになった

   次第(しだい)でございました。


大岡:左様(さよう)か。

   …だが源六(げんろく)、それは何か思い違い間違(まちが)いというものではないか?

   町役人(ちょうやくにん)に向かってそのような悪口(あっこう)、いかに愚(おろ)かな者と言えども言う

   わけはないと思うがのう、どうじゃ?


源六:いえ、確かに申しました。


大岡:いやいやそのようなことはあるまい。

   それは何かの聞き間違いであろう。

   のう与太郎(よたろう)。

   そのような事は申しておらぬな?


与太郎:!っえ、ぃえ、言ってやったんです。


大岡:おぅこれこれ、落ち着けよ、よいか?

   よもや、そのような事は申しておらぬな?


与太郎:ぃっ、ぃえ、そう言ってやったんです。

    だってっ、言ったんだから…。

    ぁ、あたぼうだって言うとあたぼうって何だって言うから、

    あたりめぇだべらぼうめを詰(つ)めたんだって、

    そうやって教えてやったんで…。


大岡:【床を叩くようなSEがあれば】

   これッ!

   かりそめにも町役人(まちやくにん)に向かい、そのような悪口(あっこう)を申す奴があるか!

   ましてや店賃(たなちん)を滞(とどこお)らせ、しかも足(た)らずに持って参ってそのような

   ふるまい、ならんぞ!

   また、老母一人(ろうぼいちにん)養(やしな)えぬ身でありながら一両二分(いちりょうにぶ)の金子(きんす)、

   いずこにて工面(くめん)いたした?

   ありていに申せ。


政五郎:【少し丁寧に言い慣れてない】

    恐れながら、お奉行(ぶぎょう)様、政五郎(まさごろう)代わって申し上げます。

    それは、手前(てまえ)が、この野郎に、貸し、与えたもんにございやし

    て。


大岡:おぉ政五郎(まさごろう)、そのほうが貸し与えたのか。

   うむ、それは良い事をしたな。奇特(きとく)な事である。

   しかしながらのう政五郎(まさごろう)、なぜその時、あと八百文(はっぴゃくもん)貸してやらな

   んだ?

   一両二分八百文(いちりょうにぶはっぴゃくもん)整(ととの)っておれば、事は穏便(おんびん)に済み、

   かようにお上(かみ)の手を煩(わずら)わす事もなかったはずではないか?

   のう、仏作(ほとけつく)って魂(たましい)入れずとはこの事ぞ。

   どうじゃ、今ここで与太郎(よたろう)に八百文(はっぴゃくもん)、

   貸してつかわすわけには参らぬか?


政五郎:へい、承知いたしやした。


大岡:おお、そうか。

   ではな、すぐに貸してやるがよい。

   与太郎(よたろう)、そのほう政五郎(まさごろう)より八百文(はっぴゃくもん)借り受け、

   ただちに源六(げんろく)に返済(へんさい)いたすのだ。


与太郎:へ、へい…。


大岡:源六(げんろう)、与太郎(よたろう)より金子(きんす)を受け取り帰宅しのち、

   すぐに道具箱を与太郎(よたろう)に引き渡せ、よいな?


源六:【満足そう】

   ははぁ~~っ。


大岡:店賃(たなちん)の滞(とどこお)り、日延(ひの)べ猶予(ゆうよ)相成(あいな)らぬ!

   一同の者、立ちませぃッ!


   【二拍】


源六:ははは…勝つのが当たり前だ。

   だいたいね、店子(たなこ)が家主(いえぬし)を訴えるなんてのが間違(まちが)いなんだ。

   あたしなんざね、毎朝神棚(まいあさかみだな)に手を合わして商売繁盛(しょうばいはんじょう)なんて願った事

   はないんだ。

   騒動繁盛(そうどうはんじょう)、揉(も)め事(ごと)だったら人の揉(も)め事(ごと)でも何でもあたしは引き受け

   ようって男だ。

   こちとら公事慣(くじな)れしてんだよ。

   それを相手取(あいてど)って訴(うった)え出るなんて、当人の馬鹿(ばか)さ加減(かげん)が知れるって

   もんだ。

   その尻押(しりお)しをする奴も大馬鹿野郎(おおばかやろう)だよ!

   おいッ、与太郎(よたろう)ッ!

   こっち来いッ!


与太郎:ぅっぇっ、な、なんだい?


源六:なんだじゃねえ!

   いま聞いてたろ。あと八百文(はっぴゃくもん)、さっさと出せ。


与太郎:ね、ねえよ。


源六:ねえなら尻押(しりお)しんとこ行って借りてこい。


与太郎:ぁっ、そうか。


    尻押(しりお)しー!


政五郎:ぃやかましィ!こんちきしょう!

    てめぇのような間抜(まぬ)けな奴はねえや!ええ?

    お奉行(ぶぎょう)様がせっかく、そのような事は申しておらぬなって

    謎(なぞ)をかけてくれてんのに言いました言いましたって、バカが…!

    赤(あか)っ恥(ぱじ)かきに来たようなもんじゃねえか!

    ったくしょうがねえな……、ほれ、八百文(はっぴゃくもん)!

    早く持ってって、渡して来い!


与太郎:ぅわ、わかったよ…。


政五郎:ぁ~口惜(くや)しいったらありゃしねぇ!!


与太郎:はっ、はっ……、

    持ってきた!


源六:こっちへよこせ!…よし。

   墨付(すみつ)きの書面(しょめん)が出るまで付き合え!

   ほれ、呼び出しだ!


   【二拍】


大岡:さて、いかが相成(あいな)った?

   源六(げんろく)、八百文(はっぴゃくもん)の金子(きんす)、しかと受け取ったか?


源六:はい、確かに受け取りましてございます。


大岡:うむ、くどいようではあるが、

   帰宅ののち、速(すみ)やかに与太郎(よたろう)に道具箱を引き渡すべきこと、

   よいか。

   これで不足のあろうはずはないな?


源六:はい、それはもう…不足のあろうはずはございませぬ。


大岡:そうじゃ、ところで源六(げんろく)。


源六:?はい。


大岡:そのほうに、ちと訊(たず)ねたき儀(ぎ)がある。


源六:な、何でございましょう?


大岡:与太郎(よたろう)の道具箱だが、店賃(たなちん)のかたに預かったのであるな?


源六:はい。


大岡:うむ。

   一両二分八百文(いちりょうにぶはっぴゃくもん)のかたに道具箱を預かった、

   確かに相違(そうい)ないな?


源六:左様(さよう)でございます。


大岡:してみると、質物(しちもつ)と同じであるな。

   そのほう、質株(しちかぶ)は所持(しょじ)いたしておるか?


源六:…いや、それは…あの…どうも、恐れ入りましてございます。


大岡:それではわからぬ。

   質株(しちかぶ)は所持(しょじ)いたしておるのか?


源六:ぅ…あ…。


政五郎:【つぶやく】

    ぉ…?

    こいつァ風向(かざむ)きが変わってきやがったぞ…?


大岡:質株(しちかぶ)なくして人のものを、こたびの場合は店賃(たなちん)のかたとして

   道具箱を預かるはご法度(はっと)じゃ。

   町役(ちょうやく)を務(つと)めるそのほうが、よもやそれを知らぬはずはあるまい。


源六:ぅ…うぅ…。


与太郎:【つぶやく】

    ? ぐ、具合(ぐあい)でも、悪いのか…?


大岡:重(かさ)ねて訊(たず)ねるぞ、源六(げんろく)。

   質株(しちかぶ)は、持っておるのか?


源六:ッ………お…恐れながら……質株(しちかぶ)は…

   持って…おりませぬ……っ!


大岡:何ッ!?

   質株(しちかぶ)を持っておらぬと申すか!

   【床を叩くSEあれば】

   不埒者(ふらちもの)め!

   質株(しちかぶ)なくして、なぜそのような事をいたした!

   お上(かみ)の定めた法度(はっと)に背(そむ)くは不届(ふとど)き至極(しごく)!

   本来ならばきつく咎(とが)めを申しつけるところながら、

   こたびは願い人(にん)が店子(たなこ)であるゆえ、過料(かりょう)にて差(さ)し許す!

   よいかッ!!


源六:はっ…ははぁーーーっ…!


与太郎:【つぶやく】

    ぇっ、ぇっ…?


政五郎:【つぶやく】

    ぃよっしゃァ!

    見ろィ、あの源六(げんろく)のツラぁ!

    ザマ見やがれってんだ!


大岡:さて与太郎(よたろう)、大工(だいく)の手間(てま)だが…日にどのくらいであるか?


与太郎:ぅえっ? えっ、えぇと…っ


政五郎:【つぶやく】

    ようし、ここはひとつ…吹(ふ)っ掛(か)けてやれ!

    いいいい、俺が答える!


    恐れながらお奉行(ぶぎょう)様!

    政五郎(まさごろう)代わって申し上げます!


大岡:おお政五郎(まさごろう)、申してみよ。

   どのくらいであるか?


政五郎:へい!

    ここのところ、大工(だいく)の手間(てま)もだいぶ上がっておりやして。

    またこの野郎は大工仕事(だいくしごと)となりゃ、一人前以上の腕を持ってるも

    んで稼(かせ)ぐんでございやす!

    早出(はやで)居残(いのこ)りと色々ありやして…。


大岡:ああ政五郎(まさごろう)、細かいところはよい。

   おおまかで構(かま)わぬぞ。


政五郎:へい、一日当たり…銀十匁(ぎんじゅうもんめ)てぇところでございやす!


大岡:ほう、銀十匁(ぎんじゅうもんめ)であるか。

   それを二十日(はつか)ぶんとすると、銀二百匁(ぎんにひゃくもんめ)であるな。

   金(きん)に直すと、三両三分三朱(さんりょうさんぶさんしゅ)か。

   相(あい)わかった!

   これ源六(げんろく)!


源六:は、はい…。


大岡:そのほう、与太郎(よたろう)に、ただちに銀二百匁(ぎんにひゃくもんめ)を渡すのだ。

   よいか!


源六:は…ははぁ~~…。


大岡:このこと、日延(ひの)べ猶予(ゆうよ)は相成(あいな)らぬ!

   一同の者、立ちませぃッ!!


   【二拍】


政五郎:へへへ勝ったぜ!どうだい!

    あたりめぇだよ、冗談じゃねえぜ!

    やっぱりお天道様(てんとさま)はお見通(みとお)しだ、ザマぁ見ろィ!

    おう与太(よた)! 早く源六(げんろく)んとこ行って銀二百匁(ぎんにひゃくもんめ)、もらってこい!


与太郎:へへへ、わかった!


    【二拍】


    へへ、げ、源六(げんろく)、源六(げんろく)。


源六:…来やがったよ。

   なんだ!?


与太郎:に、二百匁(にひゃくもんめ)、よこせえ。


源六:ッ何を言いやがんだちきしょうめ!


与太郎:っひのべ、ゆうよ、あいならぬぅ。


源六:~~口惜(くや)しいよ、まったく!

   そら!手ェ出せ!

   ッ!

   持ってけ!


与太郎:っへへ、ありがとさん~。


    【二拍】


    棟梁(とうりょう)、もらって来た!


政五郎:ようし、こっち貸せ。

    俺が預かっとくからな。

    おっ、呼び出しだ。


    【二拍】


大岡:さて政五郎(まさごろう)、いかが相成(あいな)った?


政五郎:へい。

    この通り、銀二百匁(ぎんにひゃくもんめ)しっかと預かりやした。


大岡:おぉそのほうが預かったか。

   うむ、結構(けっこう)である。

   源六(げんろく)よ。


源六:は、はい…。


大岡:いかに愚(おろ)かな者と言えども、縁(えん)あってそのほうの店子(たなこ)になった者で

   あるぞ。

   これからは労(いた)わってつかわせ。

   良いな。


源六:は、ははーっ。


大岡:これ与太郎(よたろう)。


与太郎:?っへ、へい。


大岡:そのほうもじゃ。

   町役人(ちょうやくにん)にむかって悪口雑言(あっこうぞうごん)など申してはならんぞ。

   これからは職(しょく)に精(せい)を出し、親に孝行(こうこう)をつくせよ。

   この越前(えちぜん)、しかと申しつけるぞ。

   分かったな?


与太郎:へ、へえ、分かりやした。


大岡:うむ!

   これで調べは相(あい)すんだ。

   一同の者、立ちませィ!


   おおそうだ、政五郎(まさごろう)。

   ちとこれへ。


政五郎:?へい、何でございやしょう?


大岡:…一両二分(いちりょうにぶ)と八百のかたに銀二百匁(ぎんにひゃくもんめ)は、ちと儲(もう)かったであろう。


政五郎:…へいっ。


大岡:さすがは大工(だいく)は棟梁(とうりょう)【細工(さいく)は流流(りゅうりゅう)】。


政五郎:へい、調べ【仕上げ】をごろうじろ。




終劇




参考にした落語口演の噺家演者様等(敬称略)


古今亭志ん朝(三代目)

立川談志(七代目)

柳家小三治(十代目)



※用語解説


お金の説明:一分金は今の価格で二万円ほどで、江戸時代の貨幣は全て

      四進法で計算される。すなわち

      一分金四枚、または二分金二枚で一両

      一両は約八万円

      銀一匁は現代で約千二百五十円

      銀二百匁は二十五万円

      朱→一朱銀なら約五千円弱

      八百文は一万五千円


店賃:家賃の事。


町役:江戸時代に町奉行(まちぶぎょう)の下で、町方(まちかた)の民政を行った下級役人。

   身分は町人。


雪隠大工:下手な大工の事。


因業:頑固で無情なこと。仕打ちのむごいこと。


惚助:馬鹿者の事。


珍毛唐:外国の人を馬鹿にして言う言葉。


藤十郎:※調べたけど出て来ませんでした。


芋っ堀り:田舎者を見下して言う言葉。


蕪っかじり:※調べたけど出て来ませんでした。

      芋っ掘りと似たような意味ではないでしょうか。


差し紙:江戸時代、尋問や命令の伝達の為、役所から日時指定して

    特定の個人を呼び出す召喚状。


過料:行政上の秩序の維持のために、違反者に制裁として金銭的負担を

   課すもの。刑事事件の罰金と異なり、過料に科せられた事実は

   前科にはならないそうである。


あんにゃもんにゃ:意味のない罵倒言葉。なんじゃもんじゃがなまった

         ものだそうである。


質株:質屋株。質営業をする権利。




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