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⑥眼鏡美人

お題は「めがね」

「いらっしゃいませ。ようこそ、H眼鏡店へ」


 耳に心地よい合成声テノールとともに、こじんまりした店の扉が開いた。


「ご来店、お待ちしておりました」


 最新ファッションで身を包んだお得意様を、彼は満面の笑みで出迎えた。


 今日の彼女も美しい。


 ブリッジのあたる鼻の位置も青みを帯びた瞳を映すレンズの角度も完璧だ。

 細い金のフレームの眼鏡は、その知的な美貌を完璧に際立たせている。


「注文してた眼鏡もの、できてるかしら?」


「もちろんご用意できております。おかけになってお待ちください」


 店内管理用AIが彼の言葉に応じ、床からテーブルセットを出現させる。


 当然のように腰を下ろして、彼女は一言呟いた。


「ホットコーヒーを」


 奥から小柄な人型ロボットが湯気の立ち昇るカップの載ったトレイを手に現れた。


 ふんわりと広がる芳香。

 合成品ではない、本物の豆の優しい香りだ。

 ちなみに添えられたミルクと砂糖もまがい物ではなく本物だ。


「やっぱり、天然ものが一番ね」


 真っ赤な唇が満足そうに弧を描いた。



 臓器がクローン培養や機械工学等の発展によって置き換え可能になった現在。

 先進国では、ほとんどの病気は完治可能。平均寿命も飛躍的に伸びた。

 遠視や近視等で悩むこともなくなり、視力矯正のための眼鏡やコンタクトは姿を消すと思われたのだが。


 予想に反して、眼鏡は、むしろ、必須のファッションアイテムと化した。

 『一体化型眼鏡』の発明で市場しじょうは一変したのだ。


 その草分け的職人の彼が扱うのは、オーダーメイドの一級品のみ。

 どんな女性をも、希望通りの、眼鏡が似合う容貌にできる品だ。



 琥珀色の大きな縁取り(フレーム)の、丸い瞳をあどけなく見せるようにデザインされた注文品。

 目の前の品を眺めて、彼女は満足げに頷いた。


「では、最終調整を。まずはお使いの眼鏡ものを外しますね」


 彼は眼鏡の柄(フレイム)を掴むとそっと前方に引き抜いた。

 ()()()()()()()()()()()()


 それから、新作メガネを取り上げると、新たな目と鼻をあるべき位置に注意深く差し込んだ。




これもSFのつもりです。眼鏡って顔の一部っていいますけど、本当にいちぶだったらってことで(笑)

少しでも楽しんでいただければ幸いです。で、リアクション、いただければ、嬉しいです。

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