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⑤芸術家<アーティスト>

お題は「色」

「お招きありがとう。実に素晴らしい。作為的に作り上げられた芸術品にはあり得ない美しさだ」


「そう言ってもらえると嬉しいね」


 友の飾らぬ称賛に、芸術家アーティストは礼を言った。


「君の展示室に来る度に、無作為が生みだす美について考えさせられるよ」


「まあ、それなりに手間暇てまひまがかかってるから」


 彼らの前に広がるのは、いくつもの珠玉に彩られた漆黒の空間。


 黄、赤、緑、薄青、茶、白など、散りばめられた玉の色は様々だ。光源となる球体を中心にしてゆっくりと回転しながら動いている。


 時の経過とともに生じる化学反応で醸し出された色は、彼の同胞の手によるような完璧さはないが、同胞には作り出せない趣を持っている。


 試行錯誤の末、彼がようやく育て上げた芸術品。

 実際、ここまでの作品にするには、苦労と忍耐の連続だった。


 まずは、玉の中心になる丸い核の部分の作成。

 変質しにくい物質を多少の衝撃にも耐えられるようにしっかりと圧力をかけて固めなくてはなくてはならない。だが、硬くしすぎるとヒビが入ってしまう。


 それから、その上に薄く層状にした物質を幾重にも重ねていく。

 何をどれくらい混ぜ込むかで後に現れる色がすっかり変わってしまうので要注意だ。


 それぞれの玉をどこに、どの角度で配置するかも重要だ。


 全てはきわめて繊細で注意深い作業の産物なのだ。


「これ、変じゃないか?」


 友人が怪訝そうにある一点を見つめていた。


 偶然生成された微生物の影響で彩りが変わるお気に入りの珠玉。

 最近、その白い斑が入った美しい青色に陰りが見えてきたのだ。


「微生物の中に毒を出す奴がいるようなんだ」


 創造主アーティストはため息を吐いた。


「全体が傷まない程度に、散水したり、削ったりしてみたが効果がない。君ならどうにかできないかと思ってね」


「サンプルを取って、駆除剤ができるか試してみよう」



 青く美しい星『地球』。

 そこではすべての環境問題が無くなりつつあった。

 人間だけが溶ける謎の現象が大々的に始まったので。 



またもやSFです。というか、ブラックユーモアかも。

少しでも楽しんでいただければ幸いです。で、やっぱり、リアクションいただければ、嬉しいです。

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