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③初恋

お題は「はなさないで」

 久々に行った高校の同窓会。


「今、課長だって?」


「社長令嬢に告られたって?」


「出世街道まっしぐらだな」


「まあな」


 嫉妬やっかみに満ちた元級友たちの言葉を平然と受け流す。


 何とでも言え。

 全て実力で勝ち取ったものだ。


「珍しい人、連れてきた」


 振り向くと、悪友が得意げな笑みを浮かべていた。


「久しぶり」


 一瞬、時が止まった。


 そこに彼女が立っていた。

 忘れもしない、初恋の人が。


 変わっていない、と思った。

 ぱっちりとした瞳も愛らしい唇も。


 華奢な体躯は、小柄ながらも均整の取れた女性のものに変わっていたが。


 厳しい校則で有名な進学校。

 当時は、交際どころか、男女が手を繋ぐことさえ難しかった。


 彼氏としてできることと言えば、登下校を共にすることくらい。

 無口な彼に、彼女は熱い視線で応えてくれた。


 彼女の転校で突然終わった甘い関係。


 担任は、家の都合だと、一切何も教えてくれなかった。


 彼の唯一の青春の思い出。



 皆、気を利かせてくれたのか。

 いつの間にか二人きりになっていた。


「言いたいことがあるの」


 彼女が言った。

 赤く潤んだ瞳、甘えるような鼻声で。


「二度とはなさないで、私のこと。社長令嬢かのじょなんて、もう、かまわないで」


 ハンカチで顔を覆って走り去る後ろ姿を、彼は呆然と見つめた。



 再び見出した時、彼女はいかにも軟弱そうな男に肩を抱かれていた。


 あの頃、彼女に付きまとっていた男の一人だ。


 助けなければ。

 今度こそ彼女を手に入れるのだ。


 男の手を振り払い、彼は彼女をぐっと抱き寄せた。

 彼女が大きく目を見開く。


 次の瞬間、悲鳴がホールに響き渡った。



「やり過ぎだぞ。投げ飛ばすなんて」


「言いましたよ、私。二度と()()()()()、私のこと、彼女、なんて。もう、かまわないでって。なのに、あのストーカー野郎!初恋の彼とうまくいくところだったのに」


 花粉症のせいで涙と鼻水で濡れたハンカチを握りしめ、彼女は叫んだ。


「訴えられなくて幸いだったな」


 始末書を書く若い同僚に、老刑事は笑って言った。



現代ドラマ(?)は本当に初描きかも。

お題がひらがなだったので、こんなのもいいかなって思いつきでやってみました。

勘違いって、ありますよね?

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