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7,友達と恋人

「待ちましたか? ……じゃない待ったかしら?」


「全然。どこへ行こうかなって考えていたら、あっという間だったよ……うん、お洒落をしたマリーも可愛い」


「あ、ありがとう……」


この王子、息をするように褒めてくる。

イェレナの話によれば確か女性が苦手だということだったけれど……今のフレッドを見ていると全くそんな感じはしない。


「ところで、どこに行くのかとかは決まっているのかしら?」


正直令嬢としていくべき場所はきっと、宝石店や仕立て屋とかなのだろう。

でも、私はあまり楽しめる気がしないのも確かだ。


「マリーの行きたい場所があればそこを優先するよ……でも、もしなければ行きたい場所があるんだけど、どう? きっとマリーにも楽しんでもらえると思う」


自信ありげに口角をあげる彼は、私をどこへ連れていくつもりなのだろうか?

特に行きたいところもなかった私は、彼の提案にのることにした。


「そこへ行ってみたいわ」


「分かった。絶対に楽しませてみせるから、期待しておいて」


彼はそう言いながら、流れるようなしぐさで私を馬車の中までエスコートする。

対する私は男性と二人で出かけることは勿論初めてだし、こうして私有の馬車に乗ることも初めてなので、かなりぎこちない。


私は疑問に思っていたことを彼に質問した。


「フレッドは、その、ほめ上手だし、エスコートにも慣れているわよね」


「そう思ってもらえたならうれしいよ」


「でも、女性は苦手だって……噂で聞いたのだけれど」


「あぁ、それは前に言った通りだよ。僕の地位や外見だけを見て、グイグイ迫ってくる令嬢が多いから……少しそういった性格の人は苦手になってしまって……王子としてよくないとは思うんだけど、どうにも克服できなくてね」


そういえば、舞踏会の時にも同じことを言っていたっけ?


少しずつ窓の外の景色が動き始める。

流石、王子が使っている馬車、乗り心地が他の馬車と段違いだ。


「それならどうして、こんなに女性の扱いに慣れているの?」


「慣れてはいないんだけど……しいて言うなら習ったから、かな?」


「王子ってそんなことまで習うのね……」


「あと、身近でカトレアに対する兄上の言動を見てきたのもあるかも」


フレッドの言う兄上はディーン王子、そしてカトレア様と言えば聖女様だ。

あの日パレードを見に行った時は、まるで別世界の人かのように思えたが、案外手の届く距離にいるものだ。


「ディーン様は女性の扱いが上手いのね」


「いや、女性というよりはカトレアに対して、なんだけどね。あの二人付き合ってるから」


突然の爆弾発言に、私は思わず彼を二度見する。

そんな話聞いたことがない。


いや正しく言えば、私が知らないのは当然と言えば当然だが、イェレナからも一度も聞いたことがない。


「……ディーン王子とカトレア様が?」


私が聞き返すと、フレッドは言ってはいけないことを言ってしまったことに気がついたのか、まずい、という表情をする。


「そういえばあの2人、まだ公表はしていないんだった……あまりにも僕の前でいちゃいちゃするものだから、うっかり、あぁ、」


あまりにも焦っている彼は、路地裏で初めて会った時の姿と重なって、なんだかとても可愛く見えて……そして何故だか、私の心臓がギュッとなったような気がした。


「い、言わないでね……?」


「勿論言うわけないじゃない」


私がそう言うと、横に座る彼が不意にこちらへ顔を寄せる。

その距離感に驚いていると、私の唇に彼の人差し指が触れた。


「……僕達だけの秘密」


それだけ言って、彼の指は、そして顔は離れていく。


今まで異性の友達なんていなかったから知らなかったけれど、こんなにも距離が近いものなのか?


いや、彼はディーン王子のカトレア様に対する態度を参考にしていると言っていた。

ということは、彼氏彼女のそれを、ただの友達同士の私達にも応用してしまっているということで……


なるほどね、女性慣れしていないが故の距離の近さなのかもしれない。

そして、またしても私の心臓はギュッとなったが、やはり理由はよくわからなかった。


「意識してもらえないか……」


「何を?」


私が聞き返すと、彼は少し言葉に詰まった。


「えぇっと、あ、そうそう、兄上がなかなかカトレアに意識してもらえていなかったことを思い出して。魔王討伐の時も、兄上のアピールに、カトレアは全く気が付かなくてさ。空回りしている兄上、本当に面白かったんだよ」


「この国の第一王子ともあろう人が、好きな人に対しては空回りだなんて……なんだか可愛らしいわ……はっ、もしかしてこれも不敬罪かしら?」


私の言葉を聞いた彼は、一瞬眉をひそめたように見えた。

しかし、私が一度瞬きをした後はもう笑っていたので、恐らく見間違いだろう。


「大丈夫、兄上はそんなことで怒るような人じゃないから安心して」


「良かった……ねぇ、私、もっと魔王討伐の時のお話聞きたいわ」


「そう? うーん、面白かった話といえば……」


私は馬車に揺られながら、フレッドとディーン王子、そしてカトレア様の3人旅の話を聞いた。

外の世界に疎い私にとって、彼の話はとても興味深い。


こうして話を聞いているうちに、馬車はとある静かな通りの前で止まった。

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