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15, マリーの反論

いつの間にこんなに近くまで来ていたのだろう。

彼女達の圧に、私は一歩後ろへ後ずさる。


「貴方がマリーさんよね? 少しお話があるのだけれど……ついて来てもらってよろしくて?」


いいえという返事などさせて貰えなさそうな声に、私はとりあえずこくりと頷いた。


舞踏会に参加している他の人達は、そんな私達を遠巻きに見ている。

心配そうな顔をしてくれている人もいたが、皆私達の周りを避けるようにして眺めていた。


「ついてきて頂戴」


真ん中の令嬢が、睨みつけるような目で私の手首を掴む。

……これは仕方ない。


私は大人しくついて行こうとしたが、反対側の手首を誰かに掴まれた。


「待って下さい。彼女、私とこれから大切な用事があるんです」


私がついて行くのを止めようとしたイェレナの手は、少し震えている。

だがしかし、目の前の令嬢はそんな彼女の存在を無視し、こう言い放った。


「何をモタモタしているの? 早く来なさいよ」


そう言って更に私の手首を強く引っ張ったので、イェレナの手は私から離れてしまった。


そのまま引き摺られるように、ゆっくりと会場の奥の方まで連れていかれる。

私に話しかけた令嬢は勿論、他の取り巻きの令嬢からも殺気立った雰囲気が感じられて、なんだか少し……怖い。


そしてしばらく歩いた後、会場の休憩室の隣の部屋に連れ込まれ、椅子に座るように指示される。

私が座ると、テーブルを挟んで向かい側のソファーや椅子に、ほかの令嬢たちが腰をかけた。


「……私達がわざわざ呼び出した理由、勿論分かっているわよね?」


「えぇ、多分」


イェレナが言うには、恐らく嫉妬の気持ちからなのだろう。

私がフレッドと仲良くしているから。

でもそれなら私を呼び出すのではなくて、彼と仲良くなるための努力をすればいいのに。


「フレドリック様はこの国の第二王子、それに対してあなたはたかが成り上がりの子爵令嬢……身分をわきまえて頂戴」


「そうよそうよ」


「まったくだわ」


「あんなにかっこいいお方、あなたには不釣り合いよ!」


「はやくフレドリック様から離れてくれないかしら?」


話を聞いていれば、誰も彼もフレッドの身分や見た目しか見ていないことがよくわかった。

きっとそんな環境下に置かれたから、彼はあんなにも女性不信になってしまったのだ。

話は聞いていたが、私はようやく彼の話していることの真の意味を理解した。


令嬢達の主張が一旦止んだところで、私は息を深く吸い、一気に言いたかったことを吐き出す。


「皆さんも嫉妬をしているんですよね? それなら私にぶつけるのではなく、彼に振り向いてもらえるように努力をすればいいのに……少なくとも私はこの間、自分の中に『好き』という気持ちが芽生えてからは、私なりの努力をしてきたつもりです。それに、地位と見た目しか見ていない貴方達に彼を渡すつもりはないわ!!」


身分が上の相手に対して言い過ぎたか……とは思ったが、言いたいことが言えてなんだかすっきりした。

目の前の令嬢達は、私の思いがけぬ反論を受けて黙り込んでしまっている。


しばらく私たちは睨みあった後、一番最初に私に話しかけてきた令嬢が、勢いよくソファーから立ち上がった。


「あなたはフレドリック様に構ってもらえるからそんなことが言えるのよ! 偉そうに語っちゃって何様なの!?」


そのまま彼女の手が私の顔に向かって振り払われる……かと思った。

彼女の手が私の頬にぶつかる、そう思われた瞬間、部屋の入口の方から声がした。


「何をしているのかな?」


乱暴な言葉づかいではなかったが、その声には明らかに怒気が含まれている。

令嬢達もそれに気が付いたのか、皆焦った様子でドアの方を見やる。

そこにいたのは……

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