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11,『好きな人』

「待ちなさい!!」


私の声に驚いた男は一瞬こちらを振り返る。

その立ち止まった一瞬で、私は距離を詰めた。

男は元々私達の方へ逃げて来て、そして追い越して行ったので、私との距離は近い。


私は勢いよく男に飛びかかって、そのまま全体重を使い地面に押し倒した。

打ちどころが悪かったのか、男は左肘を抱えて呻いている。


その隙に、手元から離れたキャンディーを取り返し、スカートの裾を払ってから、まだお店の前で呆然としている男の子へ渡しに……行こうとした。


「うぅ、てめぇ、舐めやがって!」


後ろで唸るような声がした。

私が急いで振り返ると、男は左肘を庇いつつ立ち上がり、私の方を目掛けて一直線に向かってくるところだった。


……これだから私はダメなのだ。

考えるよりも先に体が動いてしまう。

本来、街の公安部隊である騎士団に通報するのが最善だったはずなのに……今になってそんな考えが浮かんでも遅い。


せめてキャンディーだけは男の子に返してあげられるように守らないと。


私はキャンディーを握りしめて、衝撃を耐えようと目を瞑った……

が、しかし、いつまでたっても何も起こらない。


「……?」


おそるおそる薄く目を開けてみると、そこには男のこぶしを片手で受け止める、彼の……フレッドの姿があった。

私をかばうようにして、男の方を向いている彼は、そのまま男をねじ伏せたかと思えば、その首元に華麗に手刀を打ち込む。


それをもろに受けた男は意識を失って、再び地面に倒れてしまった。


一瞬の沈黙ののち、この一連の騒ぎを見ていた周囲の人々から拍手が湧きおこる。


「かっこいいー!!」


「嬢ちゃん勇気あるなぁ」


「遂にあいつが捕まった!」


そして、私はハッと手元のキャンディーの存在を思い出す。

急いで男の子の方へ向かい、キャンディーを手渡した。


「どうぞ! 美味しく食べて頂戴ね」


「お姉ちゃんありがとう!」


その子の笑顔を見た時、やり方は間違えてしまったかもしれないけれど、キャンディーを取り返せて良かったと心から思うことが出来た。


「お姉ちゃん、大好き!……あ、そうだ、僕が大きくなったらお姉ちゃんの事守ってあげる!『結婚』するんだ!!」


「……!!」


何とおませな子供だろうか!?

可愛いなぁ、なんて思っていると、背後から声が聞こえてきた。


「残念、お姉ちゃんを守るのは僕の仕事なんだ」


振り返れば、フレッドが私のそばまで来ていた。

誰かが騒ぎが起きた時に通報をしてくれたのか、キャンディーを盗んだ男は公安隊に連れていかれている。


どうやら持っていたバックにも様々なものが詰まっており、余罪がたくさんありそうだ。


「お兄ちゃんは、お姉ちゃんと『デート』してたの?」


「そうだよ」


私が男の行く末を見ている間にも、2人は話を続けている。


「じゃあお兄ちゃんは、お姉ちゃんの『彼氏』なんだ……そっか、それじゃあ僕はお姉ちゃんと『結婚』、出来ないね」


「ちょっと、落ち込んじゃったじゃないの!」


「……う、」


私がフレッドの耳元で文句を言うと、彼は言葉に詰まっている。

ところが、男の子は落ち込んだのは一瞬。

次の瞬間にはまた笑顔に戻っていた。


「それなら、僕もお兄ちゃんみたいに『好きな人』を守れるような人になる! 頑張る!!」


ちょっと私達の関係性を勘違いしているところはあるけど……前向きになってくれて良かった!


「えぇ、僕ならきっとなれるわ! 頑張って頂戴!」


「うん、またね! お姉ちゃん、お兄ちゃん!」


男の子は元気よく町へ駆け出して行った。


「ふぅ、一件落着ね。お弁当、買いに行きましょうか」


「……あ、あぁ」


「どうしたの? ……あ」


もしかして、

考えるより体が先に動いてしまった私に引いている?

令嬢らしくない行動がダメだったのかも?


「ご、ごめんなさい。はしたないわよね、助けるにしても公安隊に通報するとか、新しいキャンディーを買ってあげるとか、もっと方法はあったわよね……結局危ない所をフレッドに助けてもらっちゃったし……」


「ち、違うよ! 僕はただ、あの男の子ませてるなと思っていただけで……勿論危ない目にあって欲しくないけれど、マリーの、他の人のために躊躇うことなく行動に移せるところ、すごく好きだから!」


特に恋愛的な意味もないであろう『好き』という言葉。

でも私は……親やイェレナに散々フレッドとの関係を疑われているせいか、先程の男の子の発言のせいなのか。

よく分からないけれど、その言葉によって鼓動が早くなる。


「大丈夫、無茶をしすぎた時は、僕が守るから。マリーが僕を助けてくれたあの日から、ずっとそう思っていたんだ……」


彼はそこまで言った後、気まずそうに口を閉ざした。


「……ありがとう」


私がお礼を言った後、なんとも言えない無言の時間が続く。


「え、えっと、そうだ! お弁当、買いに行きましょう」


「そ、そうだったね、売り切れる前に早く行こうか」


差し出された彼の手は、いつもより熱い気がした。

面白いと感じて頂けたら、いいね・ブックマーク・評価等よろしくお願いします!


ちなみにフレッドが第一話・第二話の時にカツアゲ相手に対して何も抵抗していなかったのは、「どうしよう……仮にも王子だし、まだ何も暴力行為はされていないし、手を出すのはちょっとなぁ……」といった感じです。

今回は向こうの暴力行為+マリーに対してなので怒っています( ´ ` )

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