表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/59

021 神保町ダンジョン(6)




「探索者を脅かす、悪しきモンスターよ。ダンジョンヒーローが相手だ。覚悟しろッ!」


 ぐるるるるぅ。


 唸り声を上げて、クアッドスケルトンが立ち上がる。

 強めに蹴っ飛ばしたのだが、たいしたダメージは与えてないようだ。


 クアッドスケルトンが持つ四本の剣。

 太い骨を削り出したかのような禍々しい大剣だ。


 あの剣がこの戦いの鍵となる――。


 ちら、と虎夫に視線を向ける。

 命にかかわる怪我だが、探索者はタフだ。

 見たところ5分、10分で死ぬことはあるまい。

 それまでに終わらせれば良い。


 クアッドスケルトンの胸部には赤黒くおぞましい核が埋まっている。

 スケルトンの核が拳大だとすれば、クアッドスケルトンのはバスケットボール大だ。

 これを破壊すれば倒せるのだが――。


 四つの剣に巨大な核――さて、どう戦うか。


 クアッドスケルトンは完全に俺を敵と定めたよう。

 俺に向かってくる。

 まずは様子見。


 クアッドスケルトンは両腕、二本の剣を交差するように振り下ろす。

 狙いは俺の頭部。

 後ろに下がって回避するが、もの凄い風圧だ。


 さすがは深層モンスター。

 俺も一瞬の気も抜けない。


 クアッドスケルトンの連続攻撃。

 四本の剣を絶え間なく振り回す。


 俺への狙いは、全回避。

 ひとつもかすらせない。


 1分。

 2分。


 動きを止めず、荒れ狂う剣撃を躱し続け。

 その瞬間を待つ。


 俺は回避するばかりで、攻め手がない。

 しかも、どの攻撃もギリギリで避けている。

 いつ、攻撃を喰らってもおかしくない状況。


 外から見ている視聴者にはそう見えるだろう。


 3分。

 4分。

 5分。


 だが、俺自身はピンチだと思っていない。

 冷静にその瞬間を待っているだけだ。


 そして――今だッ!!


 俺はギリギリで剣を避け、クアッドスケルトンの腕に飛び乗る。

 その手首に向かって――。


「ヒーローパアアアアンチィィィ!!!」


 ヒーローパンチを叩きつけ。

 クアッドスケルトンの手首が砕け、一本の剣が飛んでいく。


 ヤツは臆することなく三本の剣を振り回すが、俺は飛び降りて距離を取る。

 よし、一段階クリア。


 後は、これを三回。


 二本目。


 剣が減ってるのでさっきよりも簡単だ。


 三本目。

 四本目。


 立て続けにクアッドスケルトンの手首を砕く。

 四本の剣は離れた場所に飛んでいった。


 さあ、後がガチンコの殴り合い――につき合う気はない。


 クアッドスケルトンは殺意を振り向きながら、突進してくる。

 スピードと威力はたいしたもの。

 まともに喰らったら、大怪我だ。


 しかし、考えなしの直線攻撃は――容易く躱せる。


 俺は背後に回り、クアッドスケルトンの腰を蹴って駆け上る。


 背中に両足を踏ん張り。

 首に両腕を回して。

 後ろに引き抜く。


「ヒーロークラァァァッチィィィ!!!」


 ――ボギリ。


 首の骨を砕き、外れた頭部を投げ捨てる。

 あばらの隙間から胸に両腕を伸ばし。


「ヒーロープルアァァァァウトォォォ!!!」


 クアッドスケルトンの大きな核を引き抜いた。

 核を失ったクアッドスケルトンはバラバラになって崩れ落ちる。


「ダンジョンにヒーローがいる限り、悪のモンスターが栄えることはない。正義の味方ダンジョンヒーローここにありッ!」


 戦いを終えた俺は変身を解かず、虎夫たちのもとに向かう。

 最初に吹き飛ばされた三人は、腕とあばらの骨折くらい。

 中級ポーションで治せる程度、大した怪我ではない。


 問題は残りの二人だ。

 徹哉は腕を切られ、右腕の肘から先がなく、まだ出血も止まっていない。

 それ以上に酷いのが虎夫だ。

 ヤツは血まみれで横たわり、仲間が必死に治療しているが、このままでは死んでしまう。


「虎夫、大丈夫か? いま、ポーション使うからな」


 仲間が取り出した一本のポーション瓶。

 透き通った水色の上級ポーションだ。


 これなら一命は取り留められるかもしれない。

 だが、虎夫は仲間が差し出したポーションを――。


「ああ、俺はいい。徹哉てつやに使ってやれ」

「だけど!」


 どうやら、ポーションは一本しかないようだ。


「俺はもう間に合わねえよ」

「ごめん……」


 男は泣きながら、徹哉にポーションを飲ませる。

 それを見て、虎夫は弱々しく微笑んだ。

 俺は虎夫のもとに向かう。


「虎夫。よく戦った。立派だったぞ」

「死ぬときくらいはカッコ良く死にたいからな」


 苦しそうに首を向けて、俺に言う。


「どうだ、悪くなかっただろ?」


 俺は頷いて、ポーションを取り出す。


「これを飲め」

「これは……おい、マジか!?」

「モタモタしてたら、手遅れになるぞ」

「あっ、ああ……すまん」


 俺は黄金色のポーションを虎夫に飲ませる。

 見る見るうちに虎夫の傷が癒え、十秒後には完治していた。


「これが最上級ポーションの効果か。すげえな」


 虎夫は元気そうに立ち上がる。

 どんな傷でも、死んでいなければ立ち所に治してしまう。

 それが最上級ポーションだ。


「ありがとう、そして、すまなかった」


 虎夫が深々と頭を下げる。


「ひでおは命の恩人だ。この借りは絶対に返す」

「気にするな。助けを求められたら、誰であっても必ず助ける。それがダンジョンヒーローだ」

「バカにして悪かった。お前は本物の探索者だ」

「分かってくれれば、それでいい」

「なあ、ダンジョンヒーロー。ウチのクランに入らねえか? 『十二騎』って大手クランだ。お前なら、高待遇で歓迎するぞ」

「気持ちは嬉しいが、俺はどこにも属すつもりはない」

「そうか、気が変わったら連絡してくれ」


 『十二騎』のみんなが帰っていったのを確認して、俺は変身を解除する。


「ふうぅ」


 肌に触れる空気が気持ちいい。


「今回の戦い、楽しんでいただけたでしょうか?」


”おおおおお”

”とっても楽しかった”

”すげー、手に汗握った”

”ヒーロー、カッコ良すぎ”


「今日はコメント見られずに申し訳ありませんでした」


”気にすんな”

”戦闘に集中してる感じが良かった”

”ヒーローのガチバトルすごかった”


「なので、今日は帰ってから振り返り配信をしたいと思います」


”やった!”

”絶対見る!”

”バイト休む”

”デートキャンセルした”

”↑リア充爆発しろ”


「皆様、おつき合いありがとうございました。今日の配信はこれでお終いにします。お楽しみいただけましたら、高評価、チャンネル登録お願いします」



《補足説明》

ダンジョンのポーションはダンジョン内で負った怪我にしか効きません。

怪我人や病人をダンジョンに連れてきても、ポーションで治療できません。


シリアスなシーンでコメントオフにしてみましたが、どうでしょうか?

コメントあった方がいいかな?


次回――『振り返り配信(1)』


楽しんでいただけましたら、ブックマーク、★評価お願いしますm(_ _)m

本作品を一人でも多くの方に読んで頂きたいですので、ご協力いただければ幸いですm(_ _)m


   ◇◆◇◆◇◆◇



【宣伝】


ファンタジー×リボ払い!


『貸した魔力は【リボ払い】で強制徴収』


9月12日に飯島しんごう先生によるコミカライズ第1巻

フレックスコミックスより発売!


 リボ払い ダメ 絶対!


公式サイト(試し読みできます)

https://comic-meteor.jp/ribo/


【なろう版】

https://ncode.syosetu.com/n1962hb


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

9月12日、飯島しんごう先生によるコミックス1巻発売!

1巻
― 新着の感想 ―
[一言] ひでお本人が見てないとしてもコメントあった方が面白いと個人的には思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ